第二十四章《タイムカプセル》
2026年9月30日水曜日。
9月の最終日だ。
「ねぇ!タイムカプセル持ってきた?」
「うん。」
「どこに埋めたらいいかな?」
「うーん。」
「あの海は?」
「いいじゃん。」
「じゃあ、決まりだね。」
「うん。」
「今日は歩いて行く?」
「そーしよっか。」
「俺は賛成。」
「じゃあ、行こー!」
「いつもは自転車で行くから二十分くらいだよね?」
「うん、歩いたら何分くらいかな?」
「えーと、一時間くらいじゃね?」
「長っ!でも楽しいからいいや。」
「だねー。」
長いと思っていた一時間は思ったよりも早く終わってしまった。
潮の匂い。
「着いたー!」
「長かったー。でも、思ったよりも短かった。」
「だねー。」
「ねぇ、みんな、何持ってきた?」
「えーっと……。」
「ストップ!」
「えっ?」
「来年、開けよう。」
「で、でも……。」
「わからないよ。」
「だな。」
「奇跡は起こるかも。」
「うん。来年にしよう。」
「どこに埋める?」
「うーん。」
「あっ、あのパラソルの下は?」
「いいじゃん。」
「あー、スコップ忘れてた!」
「私も。」
「俺も。」
「……。」
「手で掘るか。」
「えっ、本当に?」
「スコップないんだから仕方ないでしょ。」
「よーし! 誰が一番深く掘れるか勝負!」
「なんでそうなるの……。」
「面白そう。」
「あおちゃんまで……。」
私はため息をつきながら、砂を掘り始めた。
「うわ、砂って意外と掘りにくい。」
「ほら、ひーちゃんもっと頑張って!」
「頑張ってるよ……。」
「月斗、そこ掘って!」
「はいはい。」
「私のところと繋げよう!」
「トンネル作ってるんじゃないんだから。」
「えー、いいじゃん!」
「茜音らしいね。」
葵が笑う。
「よし、だいぶ掘れた!」
「じゃあ、入れようか。」
「ちょっと待って。」
月斗が立ち上がった。
「目印が必要じゃない?」
「あ。」
「確かに。」
「来年になったら、どこに埋めたかわからなくなりそう。」
「じゃあ、このパラソルを目印にする?」
「でも、来年まであるかな?」
「……それもそうだな。」
「じゃあ、別の目印!」
みんなで周りを見渡す。
「海が見える方向とか?」
「それじゃあ範囲広すぎるよ。」
「じゃあ……。」
私は少し考える。
「あの岩は?」
少し離れたところに、大きな岩があった。
「パラソルから岩まで十歩くらい。」
「いいね。」
「じゃあ、岩から十歩!」
「来年、ちゃんと覚えてるかな?」
「覚えてるよ。」
「私も。」
「俺も。」
「私も……たぶん。」
「あおちゃんだけ自信ないじゃん!」
「だって一年だよ?」
「一年くらい覚えてるって!」
「じゃあ、今ここに記録しておこう。」
月斗がスマホを取り出す。
「写真撮っとけばいいんじゃない?」
「あ、それいい!」
4人で埋める場所の写真を撮った。
「これで大丈夫。」
「じゃあ……入れよう。」
私はタイムカプセルを両手で持った。
中には、今の私たちが残したいものが入っている。
でも、その中身は誰にも見せていない。
「来年まで、開けないんだよね。」
「うん。」
「絶対だよ。」
「わかってるって。」
私はタイムカプセルをそっと穴の中に入れた。
そして、みんなで砂をかぶせていく。
「よいしょ……。」
「もうちょっと。」
「これでいいかな?」
「うん。」
最後に月斗が砂を軽くならした。
「完成。」
「……なんか、あっという間だったね。」
「そうだね。」
私は海を見る。
青い海。
いつも見ていた海。
でも、今日は少しだけ違って見えた。
「ねぇ。」
「ん?」
「来年も、ここに来よう。」
3人が私を見る。
「もちろん。」
茜音が笑った。
「来年も、みんなで来よう。」
「うん。」
葵も頷く。
「俺も。」
月斗も笑った。
「……約束だからね。」
「約束。」
4人で小指を絡める。
海から吹いてきた風が、私たちの髪を揺らした。
「寒くなってきたね。」
「そろそろ帰ろっか。」
「ちょっと待って。」
「どうしたの?茜音?」
そのとき茜音は何かを取り出した。




