明かされた正体
「てなわけで、悪魔と幽霊は俺たちでした」
「イェーイ」
「「「「「「…………」」」」」」
石像のように表情が固まる6人の姿。ちょっと面白いな。
『シャングリラ事変』の全貌を、俺と桜楽で互いに補完しながら伝え終えた。個人の事情とかの細かいことめんどくさいから省いた。今まで正体を隠してきたけど(別に勘繰ってくる奴はいなかったが)、時が経った今隠す必要は無くなった。
改めて話してみると、中々にぶっ飛んだ青春だなと思った。グウェンは放心している様子はなく、「2人ともそんなことしてたの?」と普通に訊いてきた。
「ちょっと喧嘩しただけだよ」
「2人で世界救ってました!」
「大袈裟」
「へーすごいのね。この世界の学生はみんなそんなことしてるの?」
「そんなわけあるか!?」
石化から解かれた大智が口内を爆発させた。他の皆々様はまだ頭が混乱しているようだった。
「はあ!? 2人が悪魔と幽霊!? そんなことあるの──」
「デタラメ言ってんじゃねえよ!」
今度は山内が復活した。困惑が含まれた怒号を視線も気にせず吐いた。
「適当なこと言えば、俺が納得するとでも思ってんのか! 証拠はあんのかよ!」
「んーそれが問題なんだよなあ。証明ができない。仮面は一応まだあるけど、あれは誰でも買えるし。うーん……」
「そらみろ、やっぱりデタラメじゃねえか。俺は騙されねえぞ」
「あれだよ春喜、柳田と連絡取ればいいんだよ」
「あー」
確かにそうだ。『シャングリラ事変』以降連絡を取っていないが、まだ連絡先はあった。
「柳田って、テッペン取ったあの柳田義一か?」
「ああ。中学の時から音沙汰はなくなってるけど、連絡先はある。うまくいけば繋がるかもしれない」
「マ、マジかよ」
「おい、これ本物なんじゃないか?」
「あの実力なら全然あり得るだろ」
「もしかして俺たちとんでもない人に喧嘩売ってたんじゃ……?」
和樹、雄大、庸一、辰馬の4人衆もざわつき始めた。そしてなぜか青ざめ始めた。
「贄羅畏禍亡威が台頭する前は蛇天愚隷羅がいたはずだろ。なのに無くなってる。それを確かめるためには柳田に聞いた方が手っ取り早い。出ないかもしれないけど、今から電話してみる」
俺が柳田の連絡先を見つけようとした時、山内が今日何度目かわからない大音塊を腹から外に吐き出した。
「もうたくさんだ! ペテン師野郎にこれ以上付き合ってられない!」
「ちょ、おい山内!」
山内が席を立ち無理矢理立ち去ろうとする。大智の手は届かなかったが、代わりに俺の手が山内の過ぎ去る右腕をがしりと掴んだ。
「離せ」
「やだね。まだ話は終わってない」
「言ってんだろ。俺は最初から頼んだ覚えはねえって」
「さっきからやけに俺たちのこと突っぱねるよな。手を差し出しても振り払う」
「お前らには関係ねえからだ」
「違う。お前は迷惑をかけたくないからだ」
一見ツンケンしているように見えても、そいつの本心がその通りだとは限らない。人間は自分の感情に正直に生きれない生き物だから。
「は……? なんだそれ?」
「最近、今のお前と似たような状況にいた奴と友達になったんだ。そいつは、自分も生きたいはずなのに、お人好し過ぎて自分を犠牲にして、まだ知り合って間もない他人のことを助けようとした。つまり、周りに迷惑をかけることを嫌っていた」
近くにいるお人好しの銀髪美少女の声が洩れた。
「だから、なんだよ」
「あんたも同じなんだよ。大智とその友達に迷惑かけたくないんだろ? 自分のせいで周りが被害に遭うことに耐えられない。恐れてる。違うか?」
「なっ……て、適当言うな! 何を根拠に」
「根拠はない。俺はエスパーじゃない。でももしそうなら、正直に言った方がいい。1人で抱えてたら解決したい物もできない。恥ずかしいとかの羞恥心もわかる。だがそれは友達からの厚意を無下にしてまで捨てたくないのか? それこそ今雑に手を振り払ったら、二度と顔向けできなくなるかもしれない。それでもいいのか?」
「っ……」
「後付け加えておくなら……山内の周りにいる奴らは、被害を受けるほど柔じゃないと思うけどね」
俺から言えることは以上だった。これでも逃げるようならもう俺は引き留められない。まあ大智の頼みは遂行するつもりだけど。贄羅威禍亡威は俺たちにとって無関係じゃない。黙り込む山内がどう出るかと観察していると、大智が先陣を切った。
「山内……そうだったのか?」
「いや……」
「馬鹿野郎!」
大智が山内を殴った。
「ええ!?」
「おー」
「な、なに?」
いきなり展開に脳の処理が混乱し、大智はそれを待ってはくれなかった。
「いてぇ……何しやがる!」
「うるせえ! んなこと気にしやがって……見損なったぞ! ダチは全部向き合ってこそのダチだろ! たとえ腐れ縁でもよお、なんでも話せよ!」
「大智……」
すごい。話がどんどん進んでいく。大智の凄まじい熱に感化されるように、他の4人衆も声を上げた。
「そうですよ山内さん!」
「俺らのことなんて気にしないでください!」
「俺たち知ってますよ! 山内さんが贄羅威禍亡威に襲われた俺たちを気にかけて、あいつらから距離を取らせてること!」
「俺たち全力で協力します! いや、大智さんの心の友であるなら、むしろ協力させてください!」
「お前ら……」
山内の邪気が薄れていく。彼らから発せられる熱血パワーが山内を照らしまくっている。大智なんて泣きそうになってるぞ。
「展開少年漫画過ぎない?」
「男同士の友情が具現化したみたいだ」
「私がピンチだった時のハルキこんな感じじゃなかった?」
「嘘、ホント?」
ちょっと恥ずかしいんだけど。
俺ら3人と6人の世界の温度差がすごい。大智が伸ばした手に山内がゆっくりと自分の腕を伸ばしている。純粋過ぎて見ていて恥ずかしくなる。このままじゃ雰囲気に吞まれそうなので、話を進めることにした。
「あのー割り込んでごめんだけど、とりあえず電話かける感じでいい?」
「ああ、悪い。お願いしてもいいか? 山内を助けてくれ!」
「わ、わかったわかった」
「お前らも気張っていけよ!」
「「「「はい!!!!」」」」
熱が凄まじい。周りの人の視線を如実に感じる。まあとりあえず良い感じの方向に進んでるからいっか。今度こそスマホを操作し、柳田の連絡先を見つける。
「そう言えば、なんで山内は贄羅威禍亡威に入ったんだ? 自分の意思じゃないんだろ?」
「それ……は……」
「まあ、言いたくないならいいけどさ」
「……プレゼント」
「え?」
山内は気恥ずかしさを紛らわすように髪を掻きむしる。
「か、彼女のプレゼントを買おうとしたんだよ。でも高くて……金が足りない所に贄羅威禍亡威が声をかけてきて、馬鹿正直に信じてそれから……いいさ、笑えよ。渡してからまだ連絡も取ってない。俺だってアホだってわかってんだよ」
「……そうか」
プレゼントね……苦笑してしまう。懐かしい。初めて桜楽にプレゼント、というか、初めて女子にプレゼントをしたあの時が10年前のように思える。山内は喜ばせたかったんだろう。アホみたいに純粋に頬を赤面させている顔を見ればわかる。
俺は共感者として、こいつに協力しよう。
「なら、早く彼女さんに謝らないとな」
柳田の連絡先を見つけ、その欄をタップした。
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しかし、この事件は思わぬ形で収束することになる。
そして、魔王の魔の手が以外な人物に近づきつつあることを、この時の春喜たちはまだ知る由もなかった。




