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蛇天愚隷羅⑩



小学5年の頃。俺が人殺し(・・・)と呼ばれ始めた時だ。


俺は思い知った。ピカピカの学校生活なんて幻想は、無惨にゴミ箱の中に捨てられた自分の上履きを見て、同時に消え失せた。


いじめに遭うなんて、テレビの中だけの物なんだと思い上がっていた。昨日まで気さくに話していたクラスメイトが敵になるなんて、考えもしなかった。黒板に大きく『人殺し』と書かれた文字を見て、俺は立ち尽くすしかなかった。


味方してくれたのは家族しかいなかった。しかし家族と一緒に授業を受けるなんてできるわけもなく、学校で俺は1人ぼっちだった。別に友達付き合いが得意な方じゃなかったけど、それまでゴミを投げつけられるなんてことはなかった。


最初はただ恐怖しかなかった。怖くて、怖くて、怖くて、怖くて、怖くて、怖くて、怖くて仕方がなかった。いじめてくる奴らは、まるで自分たちが悪者を退治するヒーローだと信じて疑ってなかった。


手を下さない奴らは、無邪気にその光景を楽しんでいた。暇つぶし程度にしか考えてなかったんだろう。より一層に恐怖が増した。人間の悪意が、無関心が、傍観心が、俺の心を破壊した。


こんな地獄が1週間も続けば、不登校になる奴もいるだろう。それは逃げじゃない。仕方のないことだ。でも俺は違った。


引き篭もった所で何も変わらない。俺を嘲笑う屑どもは、俺をどこまで嘲笑い続ける。時間が問題を解決してくれるなんて話はクソだ。


心を覆った恐怖が、いつしか憎しみに変わっていった。俺のことを何も知らないくせに泥を塗る奴らに、それをゲームのイベントかのように楽しんでいる奴らに、ドス黒い憎悪が湧いた。それは間違いなく殺意に近い憎悪だった。


俺に手を差し伸べてくれるヒーローはもういない(・・・・・)。だから、自分でなんとかするしかなかった。


靴を隠す屑、悪口を言う屑、ゴミを入れる屑、落書きをする屑、水をかけてくる屑、ランドセルを捨てる屑。多くの屑を殴り倒した。役立たずの教師も例外じゃなかった。自分の身体能力の良さに感謝した。床に倒れる屑を見ていると、ほんの、ほんの少しだけ、心の闇が晴れた。


そんな時に嵐山凌牙に出会った。クラスメイトに嵐山犬歯(あらしやまけんじ)という奴がいた。無論、俺をいじめていた集団の1人だ。俺にちょっかいをかける度、こいつの顔に痣をつけてやった。無我夢中に俺をいじめていた奴が泣きべそをかいている姿は痛快だった。


しかしこいつは他の屑とは少し違った。俺に腕っぷしでは勝てないと悟ると、逃げるでも挑んでくるわけでもなく、兄を連れてきた。それこそが、嵐山凌牙である。


「俺の弟が世話になったな」


漫画で聞いたことのあるセリフだった。そして俺は袋叩きにされた。当時凌牙は高校3年だった。体格からして常人よりも肉体的に強いのは明白で、俺もそれなりに強かったが、まだまだチビだった俺は赤子同然の扱いを受けていた。


俺が殴られる度に弟の犬歯は嗤った。その度に俺もムカついて、その腐りきった顔面をしばいてやりたかったが、兄は俺の腕を離さなかった。


結局卒業するまでそんなことばかりが続いて、俺は地元を離れた。二度と会うことはない。そう……思っていたのに。


「そんなダサい仮面つけなくてもこっちは正体見抜いてんだ。さっさと顔見せろよ」

「……」


高架下、太陽が届かない日陰で奴は待っていた。2年ぽっちで外見というものはそう変わらない。暗黒時代、俺に1番肉体的痛みを与え続けた張本人がいる。もう既に正体は割れている。なら、隠す必要は確かに無さそうだ。仮面を外し放り捨てた。


「おお、おっかねえ顔。マジで人殺しの目だぜ」

「あいつ……っ!」

「桜楽」


嵐山に迫ろうとする桜楽を抑える。気持ちは嬉しいが、桜楽がやっては意味がない。


「俺に任せてくれ」


桜楽は数秒黙った後「……わかった」と小さく呟いた。


「仮面を外さないでくれ。あんな奴に桜楽の美人顔を見られたくない」


冗談半分で言って、俺は嵐山と対峙する。


「久しぶりだな。元気してたか?」

「昔よりは100倍元気だよ」

「また会えて嬉しいぜ」

「俺は二度と会いたくなかった」

「ははっ! 昔より強気になってんなあ。びーびー泣きながら突っ込んできたあの頃が懐かしいぜ」


駄目だ……相対するだけで体が震えてしまう。人殺しと呼ばれた過去が、恐怖を憎悪に変えた過去が、俺を散々虐め尽くした過去が、その全てが嵐山凌牙(かこ)と触れるだけで蘇ってくる。桜楽にかっこつけておいて、それはただのやせ我慢だった。


「それにしてもびっくりしたぜ。昔いじめてた奴が俺の根城に攻め込んできてんだから。人生何が起こるかわからねえな」

「俺は別に驚いてないぞ。ゴミ溜めと化したチームのトップなんて、あんたにお似合いじゃねえか。で、なんで俺だってわかった?」

「街でお前をたまたま見かけたんだ。これは本当だ。ちょっとつけてみたら、お前が変な仮面付け始めて、マンションに入る所を見た。もうわかるだろ?」

「……あの時か」


壊滅した派閥『独』と『尊』の首魁である山上蓮司と島崎寛二のいるマンションに襲撃した時、姿を見られていたのか。我ながら迂闊だったと後悔する。


「実を言うと、俺もあいつらやっちまおうと思ってたんだよ。抗争おっ始めるって耳にして、ついでにってさ。あいつらうちじゃ腰抜けのカスで有名だからな。居場所はわかってたんだが……まさか先客がいたとは。『唯』に肩入れしてるってマジだったんだな。なんでだ?」

「……昔と同じだよ。お前らが遊び半分でゴミを投げつけるから、こっちから報復しに来たんだよ。他人のことを何一つ考えないあんたにはわからないだろ」


思えば、今の蛇天愚隷羅シャングリラは昔の奴らと一緒だった。迷惑を被っている善人のことなんて1秒だって考えない。俺を害虫扱いして駆除しようと偽善を振りかざしてたように、トップに立ちたいからって何をしてもよくて、自己満足に浸るだけ。


どうしようもない理不尽が俺は許せなかった。桜楽と一緒にやろうと決めた時に、無意識に姿を重ねていたんだろう。それを伝えた所で、この男が改心するわけでもないが。


「知ったこっちゃねえな。俺が知らない赤の他人がどうなろうと俺には関係ない。弱い奴が俺は昔から嫌いなんだよ。抵抗もできない腑抜け野郎が悪いんだ」

「だから嵐山犬歯(おとうと)を見捨てたのか?」


余裕の表情が僅かに崩れた。


「なんだと……?」

「俺は蛇天愚隷羅シャングリラを潰すために動いてるんだ。そのために、それぞれの派閥の大将の情報を手に入れるのは変なことじゃないだろ? 聞いたよ。少年院に入ったって。同級生と一悶着あって放火したとかなんとか、ネットで調べたらそんな事件があったよ。で、実際どうなんだ?」

「いじめてた奴に興味があるのか?」

「あるさ。自分を痛ぶって面白おかしく笑ってた奴が、今じゃ犯罪者と似た境遇に陥ってる。つまり底辺に落ちた。散々イキっていじめ散らかしてた奴がそんな不憫な状況になっているって知ったら、思うことは1つだ。ざまあねえな!」


こいつには散々コケにされて来たから、表情やちょっとの仕草でその時の気分くらいなら見抜けるようになっていた。こいつは今怒りが湧いている。いいぞ、狙い通りだ。


俺だってただ決別するためだけに来たわけじゃない。事前調べは粗方済ませた。どうせ今日以降、二度と会うことはない。だったら全部ぶつけてやる。吐き出してやる。つくづく俺は、画面に憧れたヒーローにはなれないみたいだ。


「テメェ……」

「俺には言う権利がある。俺の言葉は、何も知らないくせに罵詈雑言を吐き散らかすネット誹謗中傷者たちとはわけが違う。被害者だ。あんな小根の曲がった奴には丁度いい報いだ。そしてあんたも同様だ。あんたのことだって耳に入ってる。大学から停学喰らったらしいじゃないか。無関係な人に傷害を繰り返したって? 弟の影響で立場を悪くしたんなら同情するけど、論外だな。最早笑いすら起きねえよ。自業自得だ」

「それ以上喋ったら殺すぞ」

「なんでだよ、喜ばしいことだろ? 似たもの兄弟でよお!」

「殺す!」


怒りの沸点が限界を迎えた。昔は恐れ慄いていた巨躯がどんどん迫って来る。より成長した自慢の剛腕を見せつけ、大砲のように突き出して来た。正直言えば避けられる。でも受けた。


頬が鈍い音を鳴らし、血と唾液が口から漏れ、桜楽の悲鳴が聞こえた。


「春喜!」

「俺をあんな愚弟と一緒にすんじゃ……は?」


前は一発殴られただけで涙が出た。無様に地面に倒れこむ俺を踏みつけ、隣で犬歯が気色悪い笑みを作る。屈辱だった。やり返せない自分に腹が立った。でも、成長したのはこいつだけじゃない。


「痛くも痒くもねえ」


口元を袖で拭い、呆けている凌牙の鳩尾に一発お見舞いした。


「おえぇ……っ!」


凌牙はたまらず吐き出した。人を威圧で萎縮させる巨体が縮こまり、俺に見下されるように膝を付いた。


「げほっ……えほっ……」

「ありえないって顔してるな」

「お前……」

「もうチビじゃねえんだよ」


眼下にいる凌牙を見ると、こんなもんかと少し呆れた。今まで恐怖を植え付けてきた対象だったのに、なんだか拍子抜けだった。同時にこんな奴に虐げられてたかと思うと、自分に対する憎悪が込み上げてきた。


「こんなのが『我』のトップか。まああの腰抜けの兄だもんな。仕方ないか」

「同じにすんじゃねえって言ってんだよ!」


立ち上がりだけは早かった。もう拳を喰らう必要はなかった。なんだか喋りたそうだったから、のらりくらりと力だけの拳を躱し続けた。


「あんな間抜け、俺の弟なんかじゃねえ!」

「酷い奴だな。あんたは屑だが弟思いだと思ってたんだが」

「俺は飽き飽きだった! テメェを痛ぶるのは楽しかったが、いちいち泣きついてくるあの馬鹿にはうんざりしてた。中坊になった途端にやらかしやがって、あんな雑魚俺の弟じゃねえ。役立たずのカスだ!」

「あんたも同等のカスだよ」

「黙れ!」


凌牙が腕を引いた瞬間、すかさず上段回し蹴りを頭部に撃ち込む。手応えはかなりあった。


「ぐあ……っ!」

蛇天愚隷羅シャングリラに入ったのも流れ着いたって所だろ。腕っぷしがあれば頂点に立てる。しかも今の腐った蛇天愚隷羅はあんたにとっては都合が良さそうだもんな」

「はあ……そうだぜ。俺は山上や島崎みたいなカス共とは違う。実力で地位を掴んだんだ! 逆らう奴は全員ねじ伏せてきた! お前だって例外じゃねえぞ。俺のバックにいる闇の連中くらい耳に入ってるよなあ? その気になればお前程度簡単に──」

「それはあんたの力あってこその話だろ?」


凌牙は怒りを露わにしていたが、その感情がこの刹那に少し薄まり、焦燥が顔に出始めた。これも狙い通り。


『我』の情報を仕入れる過程で、後ろ暗い連中がいることは把握していた。でも別に怯えることはなかった。こいつを倒せれば、全ては丸く収まる。


「確かにあんたのバックには強力な奴らがいる。あんたが自分の実力で手に入れた武力。それは誇っていい。でもそれは諸刃の剣だ。あんたがここで俺に無様に敗北したら、その連中はどうすると思う? 親しい友人だったら笑い合って終わるさ。でも連中は友達じゃない、あんたを使い勝手のいい駒として利用してるだけだ。負けたら今まで築いてきた信用を失う。もうわかってるだろ!」


俺に膝を付かされた時点で悟ったはずだ。このままじゃまずい、と。


大将が討たれれば、そこから全てが崩壊する。不良は単純明快でやり易い。信用を構築するのには多大な時間を要するが、失った信用を取り戻すことは至難の業だと、どこかで聞いたことがある。それは俺がよーくわかってる。それをこいつにも味合わせてやると、もし時が来ればと考えていた。


「俺のことを今も馬鹿にしてるだろ? 散々鼻っ柱をへし折ってきた奴が懲りずにまた殴られて来たって。絶対の自信を持つ奴はプライドも高い。あんたはその典型。憂さ晴らし程度にしか思ってなかったんだろうけど、それが大きな過ちだ! ここであんたは全部失う! 自分の慢心が自分を殺すんだ!」

「黙れええええええええええええええええ!!」


発狂は図星の証拠だった。剛腕を払いさらに攻撃を仕掛けようと動くが、少し誤算が生じた。拳ではなく、大柄の図体を生かした力任せの突進に切り替えてきた。判断が遅れ、硬い地面に無理矢理押し倒されてしまった。


「がぁ」

「調子こいてんじゃねえよ、人殺し!」


左手で首を絞めつけられ、空いた右手をフルパワーで俺の顔面に振り下ろす。しまったな。一瞬の油断で見下される立場が変わってしまった。


「春喜!」

「手ぇ出すな!」


桜楽に返答を送ると同時に拳の雨が頬を殴った。巨体が重くて抜け出せない。怒りで歪んだ表情が霞む視界に確認できた。


「何が、報復だ! 正義のヒーロー気取りかよ! 人殺した奴が、良い奴ぶって生きてんじゃねえよ!」


殴打の音が鳴るたびに、さらに膨れ上がった憎悪がさらに膨らむ。


「……せえ」

「カスなのはお前だろ! 被害者ぶった殺人鬼が! そんなんでよく今まで生きてられたな! 俺だったらとっくに死んでるぜ!」


血の味がする。憎悪が溜まる。


「るせえ……」

「お前じゃ俺には勝てねえ! お前は大人しく、地べた這いつくばって俺にいじめられてればいいんだよ! 昔みてえになあ!?」


憎しみが濃くなる。もう限界だ。


「るせえよ……」

「それが嫌なら、さっさと死んで、お前が殺した友達の所に行けよ人殺し!」


破裂した。



「うるせえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」



絞められた首を認識から除外し、全ての意識を右手だけに割いて振り抜いた。今まで最大の殺意は、こいつの左腕のどこかしらの骨を砕いた。


「うぁ、あああああ! いでええええええええ!」

「うるさい……うるさい!」


巨軀の拘束から抜け出し、憎悪を孕んだ剛脚で歪んだ顔面を踏み潰した。もう終わらない、止まらない。倒れ伏した図体を無理矢理持ち上げ、吹き出す憎悪を握拳に込めて何度も振り抜く。


「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!! 知りもしない奴が好き勝手言うんじゃねえ! 人殺しだ!? そんなの俺が1番、よく、わかってんだよおおおお!!」


拳が赤黒く染まる度、涙がボロボロ流れ出てきた。頬を伝う熱涙は、桜楽の前で流した涙と同じ温かさだった。ようやく憎しみが心の水槽に戻った時には、凌牙の意識が朦朧としていた。


「ぶっ……ぁぁ……」

「はあ……はあ……わかってんだよ。俺が……俺が……冬真を死なせた。俺は俺を一生恨む。でも……でもなあ……それを理由にして俺の人生を踏み躙る権利は、お前ら他人にはねえんだよ!」


桜楽が隣にいることなんて忘れてしまっていた。駄々っ子のように叫び散らかし、抑えきれない憎悪で我を失う。


みっともない。穢らわしい。どうしてこんなことになってしまったのか。こんなはずじゃなかったのに。前に進んだはずが、意図せず障害が己の前に降り立った。また情けない涙を流す羽目になった。だから自制が緩くなる。


「どうして……どうして──」


今まで完成されなかった言葉が、形を成してしまう。



「お前みたいな奴が生きてて……冬真が死ななくちゃならないんだ」



ずっと考えてしまう。意味がないとわかっていても、思考が脳から消えることはない。こんな風に考える自分をきっと最低と言うんだろう。桜楽にも言ったことがない言葉が次々出てくる。


「お前ら……全員殺したいよ。冬真を免罪符に掲げて俺を虐げてきた奴ら全員、今からでもぶっ殺してやりたい! それほど俺は加賀者(おまえら)が憎い!」


後100発くらい本気で殴れば、こいつを殴殺できる。確信があった。憎悪に身を任せればできてしまう。やろうと思えばすぐにだってできる。でも、


「でも俺はやらない。殺したいほど憎いけど、やらない! 俺はもう人生を棒に振ったりはしない! 俺は前に進むって決めたんだ! そう親友(・・)と約束したから!」


友達を失った。絶望の味を知って、未来に希望が持てなくなって、下を向くことしかできなかった。地元を離れていじめは無くなったが、どうせ楽しいことなんて何一つ起きないと思ってた。ぼんやりと、いつか遠くない未来で孤独に死んでいくことだけを想像していた。


けど、暗闇に引きこもっていた俺の前に、桜楽が現れた。最初は鬱陶しくて変な奴としか思わなかったけど、彼女の温もりに触れる度会話が弾んで、学校に行くのが楽しみになった。


俺のために泣いてくれたことが、心底嬉しかった。1人で涙を流すよりも、誰かの前で涙を流す方が、ずっと心が軽くなった。そのおかげで、俺は前を向けるようになった。


「俺は……お前なんかに邪魔されない! 邪魔されてたまるか!」


俺の全てをこいつに叩きこむため、凌牙の顔を自身の額に触れそうな距離まで持ってきた。俺の形相は、今のこいつに負けないくらい不細工になっているんだろうな。


「ぉ……まえ……」

「二度と俺の前に現れるな! お前はこれから、俺に無様に負けたことを一生の悔いとして生きていけばいい! それか救いようのない屑のまま腐っていけ! ちゃんと聞いてるか!? その能無しの頭の中の記憶に焼き付けろ! 俺は、お前に、勝ったんだ!」



苛烈な言葉の圧にやられたのか。意識が曖昧だった凌牙は白目をむいて昏倒した。




ほんの少しだけ、過去の苦みが薄れた。





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