それぞれの戦い 13
「ぐっ…!」
「聖女のくせに卑怯な…!」
たまらず膝をつくドールたち。
しかし、威力が低すぎたのか完全に倒すまでには至らなかった。
やはり遠隔で魔法を発動させると、普段自身の身体から放つときよりも威力が数段落ちる。
魔族特効を持つアタシの魔法で致命傷を与えられないのだからそれがいい証拠だ。
だが、それで十分。
「戦場に卑怯もクソもないのよ!覚えておきなさい!」
そうして弱ったところにトドメを刺せばいいだけなのだから。
形勢逆転し、アタシは間髪入れずに片方…とりあえずアタシから見て右側のドールに狙いを定める。
こういうとき、油断して勝ち誇ったりすれば足元をすくわれるのが常識だ。
さっさと終わらせる…!
アタシは右手に魔力を集めると、トドメの魔法を放つ。
「食らえ…!ホーリー・スフィ__」
ゾクッ!
その瞬間、背筋を嫌な予感が駆け抜けた。
アタシは咄嗟に左に横っ飛びする。
ヒュンッ!
そして、今までアタシがいた場所を高速で何が通る音が聞こえた。
アタシは地面を転がりながら、急いで体勢を立て直すとアタシが今までいた場所を見る。
「……くっ、三人目…!」
そこには、拳を突きだした体勢の三人目のドールが立っていた。
まさかとは思っていたが、あの分身みたいな奴を作れるのは一人だけじゃなかったみたいだ。
「おや、よく躱せましたね。完全に虚を突いたと思ったのですが」
三人目のドールはアタシが拳を避けたことに素直に驚いている様子だ。
「はぁ…はぁ…アンタこそ、アタシに卑怯とかよく言うわね…!まだ増やせるなんて聞いてないわよ!」
「増やせないと言った覚えもありませんがね。それに、あの言葉は単純に貴方を油断させるための罠です。足元に何か仕込んでいるのは見えていましたし」
「…っ!じゃあ、アンタはアタシの罠が分かっててわざと食らったっていうの!?逆にアタシを罠に嵌めるために!?」
「……食らった、というのは少し語弊があります。そもそも私は貴方の魔法になど当たってはいません」
「……は?一体どういう__」
アタシが言い切る前に、アタシがホーリー・アローを当ててボロボロになった二人のドールに変化が現れる。
着ているローブだけでなく、その下にあるはずの肌でさえまるで削られていくかのように消滅している。
そして、その中から現れたのはなんと、人の形を象っただけの無機質な人形だった。
「な、なにそれ……人形…?」
「……そう。これが私の能力、【マリオネット】。予め私の魔力を馴染ませておいた人形に再び魔力を通すことで意のままに操る。見た目も大きさも自由自在。ほら」
そう言って、ドールは二つの無機質な人形に手をかざす。
すると、その大きさがみるみる内に小さくなり、やがて人の手の平で包めるほどの大きさにまで小さくなった。
「逆にこんなことも出来ます」
手の平サイズにまで縮んだ人形は、再び手をかざされると徐々に大きくなっていく。
そして最後には、キングゴブリンのサイズにまで巨大化した。
「このように巨大化させることも出来ます。まあ、大きさは変わっても密度は変わらないので、大きくさせすぎると脆くなってしまいますからあまり使いませんけど」
そう言って、再度手をかざす。
人形は再び縮んでいき、ドールと同じ大きさに戻った。
ついでに、アタシのホーリー・アローによって傷ついていたはずが綺麗さっぱりなくなっている。
どうやら、傷を修復する能力もあるらしい。
「……はん、なるほどね。そうしてアタシと戦っている最中にこっそり人形と入れ替わって、そのまま人形を身代わりに本体はコソコソと隠れていたって訳ね。一体いつ、どうやって入れ替わったの?」
「……それはご自身でお考えください。まあ、貴方ごときに分かるか分かりませんけど」
「……はっ!言うじゃない。いいわ、すぐにその力の正体、見破ってやるから…!」
ドールの挑発に乗る形で再び臨戦態勢に入る。
それに合わせて、ドールも構えた。
二つの人形も再びドールの姿へと変わる。
(……でも、このままじゃ本当にヤバいかも…二人から三人に増えた訳だし、手数の多さもだけどどうやって入れ替わっているのか突き止めないと…!)
ドールに対して強がってみたはいいものの、実際入れ替わりの手段は皆目見当もつかない。
戦闘中、一切目を離さなかったはずだし、人形を出してからはより一層集中していたから余計に見落としたとは考えにくい。
この手品にも似た入れ替わりには何かカラクリがあるはずだ。
まずはそれが何なのか見極めなければ…!
「…はっ!」
そこまで考えたところで、本体……であろうドールが魔力の塊。いわゆる魔力弾を放つ。
アタシはそれを後ろに跳んで避けると、そこに人形からドールの姿になった二人が先ほどと同じように迫ってきた。
(……おそらく魔力弾を放った奴が本体と思うけど…いつどうやって入れ替わっているか分からないから本当にそうなのか確信が持てない…)
なんとか二人の猛攻を防ぎながら、必死に頭の中を回転させる。
「……って分かる訳ないでしょーが!」
「「っ!ふっ!」」
苦し紛れに出したホーリー・アローが地面から飛び出す。
しかし、一度食らった罠は二度目は通じない。
後ろに跳ばれて簡単に避けられてしまう。
パワーもスピードも手数も何もかも足りない上に、敵の技の正体も分からない。
一体どうしたらいいのだろう……




