それぞれの戦い 14
「……入れ替わりの方法も分からないし、かといって一体ずつ倒そうにもそれも難しい……なら…!」
アタシはあることを思いつくと、すぐに魔力を研ぎ澄ます。
アタシの周囲を、濃密な魔力が包み込む。
「そうは」
「させま」
「せんよ!」
三人のドールが一斉に迫ってくる。
呪文を唱える時間はない。
ならば、ぶっつけ本番だがアレをやるしかない…!
そうこうしている内に、目の前に迫って来たドールたちが同時に拳を振りかぶる。
「簡易版!【神の閃光】!」
アタシは迷わずあの呪文を叫ぶ。
アタシの周囲を真っ白な光が包み込むと、それが全方位に広がり始める。
「な…っ!」
「これは…っ!」
「まさか…っ!」
三人のドールたちは、いきなり光だしたアタシを見て動きを止めようとするも時すでに遅し。
勢いは止まらず、そのまま光に包み込まれてしまった。
これがアタシの秘策。
【本体を当てることが出来ないなら、三人共まとめてやっちゃおう作戦】だ。
そのためにアタシは聖女の魔法を詠唱破棄で放った。
以前、お母さんが馬車で轢かれたとき、初めて聖女の魔法を発動したときは詠唱することなく魔法を使っていた……らしい。
当時の記憶はあまり覚えていないが、周囲の状況と聞いた話によると間違いない。
とするなら、普通の魔法とは違う聖女の魔法も、正しく制御出来れば呪文は必要ないのでは?
そう思った。
事実、【神の閃光】は問題なく発動した。
これなら、【神の祝福】や【神の光芒】なんかも発動出来そうだ。
まあ、本来なら擬似的に神を召喚し、広範囲を消滅させる魔法だが、詠唱破棄で発動したため擬似的な神は召喚出来ず、光も触れたものを消滅させるほどの威力はないみたいだ。
それに、完全詠唱せず発動する聖女の魔法は制御がとても難しい。
が、そこはアタシのセンスでなんとか出来る。
というか、出来なければおそらくこの先の戦闘にはついていけない。
神の奇跡の一端を扱うことが出来る特別な魔法。
暴発などさせようものなら、きっとアタシは無事では済まないだろう。
アタシは、気を引き締め直した。
_____ィィィィウゥン。
広がっていた真っ白な光は、甲高い音を奏でながらアタシの中に引っ込む。
すると、少し離れたところで全身ボロボロの姿になった三人のドールが忌々しげな目でアタシを睨みつけていた。
「……やってくれましたね…」
「まさか聖女の魔法を詠唱破棄で放つとは…」
「思いもよりませんでした…」
三人がそれぞれ思い思いの言葉を口にする。
というか、こいつらさっきから一つの文を全員で分け合うようにして話している。
そんな話し方でよくこんがらがったりしないものだ。
やはり、人形はあくまでも人形で、本体が話す内容やタイミングまで完全に制御しているのだろうか?
だとするなら、わざわざご苦労さまとしか言えない。
「…簡易版とはいえ効くでしょ?どう?格下と見下してた奴にいいようにやられる気分は?」
ボロボロのドールたちを盛大に皮肉ってやる。
すると、ますますドールたちの視線が鋭くなる。
「お?怒ったか?いいぞ、かかってこい!」
軽く挑発する。
これで怒りに任せて雑な攻撃をしてくるなら、また聖女の魔法で返り討ちにする。
逆に警戒して近づいてこないならそれはそれでいい。
何故なら、アタシだって満身創痍だから…!
休めるなら少しでも休みたいのである。
ただ、遠距離から全員で魔法を撃たれるのだけは勘弁願いたい。
そうなるとさすがに防ぎきれない。
手数で完全に押し切られるだろう。
そのための挑発。
自信満々な姿を見せることで他に何か切り札があるのかと思ってくれれば御の字だ。
上手く騙されてくれればいいが……
「……何を企んでいるか知りませんが、無駄ですよ」
そう言って、三人のドールは全員人形の姿に戻った。
「……は?」
訳が分からない。
本体は?
全員偽物?
一体いつの間に?
いくつもの疑問が頭を駆け巡る。
そんな疑問が解消されるよりも先に、三体の人形たちはみるみる内に傷が修復されていく。
傷が全て治るとすぐに元のドールの姿に戻っていく。
そして、ドールたちはこれ見よがしにせせら笑うと、未だに混乱するアタシを尻目にこう言い放った。
「「「……おや?どうしました?」」」
「………くっ!」
やられた…!
人形は二体だけではなかったのだ!
ここまできたら、もう人形が今見ている三体だけだとは限らない。
いつ四、五体目が出てきてもおかしくなくなった。
しかも、またもや入れ替わりの瞬間を見逃している。
これでは、たとえ本体を見つけ出せたとしてもすぐに入れ替わられて攻撃を当てることなど出来ない。
……万事休すか?
「…?おや、もう諦めてしまいましたか?」
「ここからが本番だというのに」
「聖女のくせに情けないですね」
アタシの様子を見て、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながらそんな事を言う三人のドール。
(こいつら…好き勝手いいやがって…!)
別に諦めた訳じゃない。
だが、八方塞がりになっていることも事実。
なんの手立ても無いまま続ければ、やられてしまうことは明白。
だが、その肝心の手立てが何も思いつかない。
「期待外れでしたね」
「創造の聖女と持て囃されていたようですが、それっぽいことは何もしてきませんし」
「貴方、本当に創造の聖女なんですか?」
「う、うるさい!本当に聖女だもん!」
ついには聖女であることすら疑ってくるドールたちに、アタシは思わず言い返してしまう。
聖女にしか使えない【神の閃光】とか使えるんだから聖女に決まってるだろ!
(……ん?いや、待てよ。創造…?)
そのとき、ドールたちが言っていたある単語が引っ掛かる。
そう、アタシは創造の聖女だ。
何故、聖女の前に創造がつくのかというと、それはアタシ含めて聖女が全員で三人いて、それぞれの特徴に合わせて二つ名がつけられているからである。
そして、アタシの場合は想像したものを魔力で作り出すことが出来る。
だから、【創造の聖女】。
…………閃いたかもしれない。




