それぞれの戦い 12
「「……おや、どうしました?鳩が豆鉄砲食らったかのような顔をして」」
さっきのアタシの言葉に対する意趣返しのつもりなのか、小馬鹿にした表情でアタシを嘲笑する二人のドール。
「な、なんでアンタ二人もいんのよ…!」
服の形状から身体つき、声色に表情までどう見ても同じ姿形をしている。
分身したのか、実は双子で今の今まで隠れていたのか。
「「分かりませんか?はじめに言っておきますが、私たちは双子などではありませんよ」」
二人の声が重なり、まるでハウリングしたかのように聞こえる。
「気持ち悪い……その同時にしゃべるの、何とかならないの?気分が悪いんだけど」
「「………………」」
二人のドールは不愉快そうな視線を向けた後、お互いの顔を見合って、その後再びアタシに向かって鋭い視線を向けた。
「よく考えたら」
「わざわざ貴方と会話する理由は」
「ありませんよね」
アタシから向かって左、右、左と、それぞれのドールが交互に話す。
小馬鹿にするような雰囲気から一転、再び緊迫した雰囲気へと変わる。
アタシもその雰囲気の変化を感じ取り、いつでも戦闘出来るように身構えた。
「……で、なんで二人に増えたのか教えてくれる気はないのよね?」
「そんなこと」
「教えるはず」
「「……ありませんよね!」」
声をハウリングさせるのを合図に、二人が同時に突進してくる。
アタシは一気に身体中に魔力を巡らせると、後方に下がりながら二人の攻撃を防いだ。
(くっ…!分かっていたことだけどやっぱりキツイ…!)
二人に増えたことで手数が単純にニ倍になったのだ。
動き自体は単調なままなので何とか防げはしているが、パワーとスピードはどちらもアタシを上回っている。
一瞬でも気を抜けば一気にやられかねない。
当然、この状態では反撃するなんて出来るはずもなく、このままではジリ貧だ。
(このまま続けてたらいずれアタシの体力と魔力が尽きちゃう…!)
そうなれば一巻の終わりだ。
「うぅ……うらぁっ!」
「「っ!」」
アタシは咄嗟に地面に向かって魔力の塊を放つ。
魔力の塊が地面で破裂し、地面をえぐりながら破片を周囲へと激しくまき散らす。
二人のドールは不快そうな表情をしながら破片を弾くと、大きく後ろに跳んで距離を取った。
そして、決死の思いでなんとかドールたちを引き離すことに成功したアタシはと言うと__
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
自身が起こした爆発に巻き込まれ満身創痍のアタシ。
飛び散った破片を防ぐ余裕なんてあるはずもなく、身につけた服や肌を切り裂き、血が腕や足から滴り落ちていた。
「……おやおや」
「自ら自身を傷つけるなんて」
「滑稽ですね」
アタシの現状を馬鹿にするかのようにクスクスと笑うドールたち。
(ふん、自分が傷つくことなんて織り込み済み。アタシを笑うことに夢中で距離を取ったままでいたこと、すぐに後悔させてやるわ…!)
二人が笑っている間に足の裏から地面へと魔力を流す。
魔力は別に手から放つと決まっている訳じゃない。
場合によっては肩、背中、足、それに口からも魔力を放出することは出来る。
呪文を使った魔法なら手からしか出せないが、純粋な魔力そのままなら、身体のあらゆる場所から放出することが可能なのだ。
(アタシの魔力は地面によく馴染む…最近の修行で分かったことだけど、利用するならここしかない…!)
普通なら体外に魔力のまま放出すると、すぐに空気中に霧散してしまう。
しかし、アタシの魔力は何故か物…特に木や地面などの自然に由来した物は親和性が高いのか、魔力が霧散せず浸透するように魔力が広がっていくことが分かったのだ。
魔道具職人たちが喉から手が出るほど欲しい能力を、アタシは魔力の性質として持っている。
こんな性質、本来なら職人でもないアタシに使い道などないが、こと戦闘においてはあることに使える。
そして、今が正にそのチャンス…!
(ゆっくり…焦らないのよ、アタシ……)
バレないように、慎重にゆっくりと。
これはバレたら効果が半減してしまう。
特に、格上の相手に仕掛けるなら不意打ちの一発勝負しかない。
「……さて」
「そろそろトドメと」
「いきましょうか」
「…っ!」
ついに二人のドールが動き出した。
アタシはとにかく近づかせないために、乱雑に魔力の塊を放つ。
「ハハハ!」
「そんなもの」
「当たる訳ありませんよね!」
アタシが放った魔力の塊は簡単に避けられ、すぐに距離を詰められてしまう。
「この程度ですか?」
「だとするなら、興ざめですね」
勝ちを確信しているのか、アタシに失望したかのようなことを言うドールたち。
……しかし、その油断が命取りになる。
「……この程度?誘ったのよ!間抜け!いけ!ホーリー・アロー!」
「「っ!??」」
突如、ドールたちが立っている地面が白く光ったかと思うと、地面の中から光の矢がいくつも飛び出してきた。
これにはドールたちもさすがに予想外だったのか、避ける間もなく足や腕が光の矢に貫かれてしまう。




