それぞれの戦い
「__っ!ちょっと!離しなさい…よっ!」
「っ!」
ズザーッ!
急に身体を押され、無理矢理どこかへ連れて行かれそうになったので、アタシの身体を押している手を力一杯叩く。
すると、痛みに力が緩んだのか、アタシを押す圧力が減ったためその隙に逃れることに成功した。
結構なスピードだったのか、少しの間地面の上を滑ってからようやく止まる。
「はぁ…はぁ……っ!なんなのよアンタは!急に押してきて!」
無理矢理連れてこられてアタシ……イーリス・へルディンは目の前の緑色のローブとフードを被った女を睨みつける。
緑色のフードを被っていた奴らは全員で二人いた。
その内の一人で、ローブの上からでも分かる女特有の胸とお尻の膨らみから、アイツが女だということは分かる。
「……アンタ、北の森にいた奴よね?生きてたんだ…」
メアリー様を追いかけて竜の巣を抜けた先の森で出会った謎のフード二人組。
あのときはいろいろあってコケに消し炭にされたと思っていたが、どんな方法を使ったか逃げ延びていたらしい。
「……ええ、おかげさまで。まさか不死鳥があんなところにいるとは…でも、どうやら今はもういないみたいですね?」
女がフードに手をかけ、そのままフードを外す。
ついに顔のモザイクがなくなり、素顔があらわになった。
「……へぇ、そんな顔をしてたんだ」
フードの中から現れたのは、その肉体に似合った妖艶な美女だった。
目尻がたれた大きな赤色の瞳に、ぷっくりと膨らんだ淫靡な唇。
その姿はまるで、サキュバスを思わせるほどの色気をまとっていた。
だが……
「……分かりますよ、貴方が考えてること。その考えは半分正解です」
「……半分?」
アタシの考えが見透かされているのか、そんな事を言う女。
名前は確か、ドール…と呼ばれていたと思う。
確かにアタシは、この女がサキュバスに見えた。
だが、それにしてはサキュバス特有の角や尻尾、翼が何もない。
サキュバスは男から生気を吸い取るためにあらゆるものへと変身する能力があるというが、それで隠しているのだろうか?
そこに、半分正解という発言……いや、まさか!?




