コンカラーという男 22
「独善的な戦争、歴史の改竄、魔族の強制奴隷化……上げたらキリがねぇ。これでもまだ、俺たちに理由がないって思うのか?」
過去の魔族が受けた苦しみ、屈辱。
少しも色褪せることなくこの身に刻み込まれている。
何があろうとも忘れることはない。
「……っ!しかし!そちらにいくら大義名分があろうとも、俺たちも素直にやられる訳にはいかない!」
俺の主張に、金髪のガキは受け入れることは出来ないと反発する。
先ほど俺にあれだけボロボロにやられたのに、まだ希望が残っていると信じているあの目。
俺はニヤリと笑った。
「ああ、そうだよな。そうこなくちゃ……潰しがいがないってもんだよなぁっ!?」
高笑いすると共に魔力を解放する。
ここからは手加減無しだ。
「く…っ!今からが本番だ!気を抜くなよ!」
「ああ、任せてくれレオン」
「必ずや勝利を」
いつの間にか他の二人のガキも金髪のガキの隣に並ぶ。
「…それと言い忘れていたが、レオン殿下だ。間違えるな」
「えー、今更かよ。戦場でそんなこと言いっこなしだぜ?」
「うるさい。そんなこと関係あるか」
「申し訳ありません、レオン殿下。こいつが馬鹿なばっかりに」
「ゴヴェルも大変だな。こんな馬鹿のお目付け役なんて」
「ええ、それはもう。この馬鹿は少し目を離すとすぐ馬鹿みたいなことをしていつも大変なんですよ」
「……なんで急に俺ディスられてんの?」
戦場に似つかわしくない、まるでいつもの日常のような会話を繰り広げるガキ三人。
…なんだ?こいつら急に。
俺のことを挑発しているのか?
「……おい、俺のことを舐めてるのか?」
「おっと、すまない。そういうつもりはなかったんだ。ただ、あの空気を取り戻したかっただけだ……」
俺が指摘すると、金髪のガキはなにやら訳の分からないことを言う。
そして、和やかな雰囲気から一転、三人のガキどもは一気に凛とした雰囲気へと変わった。
「……ヴィサス嬢」
「…っ!は、はい!」
「こんな状況になってすまない。だが、俺たちにはヴィサス嬢、貴方の力が必要だ。どうか俺たちに力を貸してくれないか?」
ガキどもの後ろに守られるようにして控えていた女に、金髪のガキが助けを求める。
それにいろいろと思うところがあったのか、少し逡巡する顔になったあと、すぐに覚悟を決めた表情へ変わった。
「は、はい!もちろんです!」
「ありがとう。それじゃあ行くぞ、お前たち」
金髪のガキの合図に合わせて、三人のガキどもは大きく深呼吸する。
凛とした雰囲気がさらに鋭く研ぎ澄まされていく。
「……シャーユ王国第二王子、レオン・ソル・シャーユ」
「同じく、シャーユ王国エクスプロア公爵家嫡男、シルト・エクスプロア」
「シャーユ王国ミニストゥロ公爵家嫡男、ゴヴェル・ミニストゥロ」
「え…あ、シャーユ王国カサンドラ公爵家の長女、ヴィサス・カサンドラ…!」
それぞれが順番に名乗りを上げる。
最後の女だけは話を合わせていなかったのか、三人が名乗りを上げるのを見て慌てて続く。
「へぇ…面白いじゃねぇか。最期に俺の名前を魂に刻み込ませてから殺すのも悪くねぇ。いいぜ、俺も乗ってやる。俺の名前はコンカラー。魔族の憎悪を体現せし新たな魔王としてこの世を支配する男だ!」
お互いの名乗りが終わり、辺りは静寂に包まれる。
そして__
「「「……行くぞっ!(行きます!)」」」
「来い!格の違いを思い知らせてやる!」
ガキどもが飛び出し、俺はそれを迎え撃った。




