緑鬼の王、再び 15
「__あの、よろしいでしょうか?」
「え?あ、受付の……」
「はい。あ、まだ自己紹介してませんでしたね。冒険者組合の受付を担当しております、レセプと申します。以後、お見知りおきを」
深々とお辞儀をする。
「は、はい、よろしくお願いします。私の名前はメアリーです」
私もそれにつられて、同じように名乗りながらお辞儀をしてしまう。
もうバレているとは思うが、自分が貴族であることをひけらかしたい訳でもないため、一応家名は隠すことにした。
「存じていますよ、メアリー様。先ほど、サインされた契約書を確認しましたから」
そう言って、レセプと名乗った女性はニッコリと微笑んだ。
レセプと名乗った女性は、綺麗に短く切り揃えられた黒髪に、同じく黒い瞳が美しいスレンダーな美女だ。
冒険者組合の制服であろう、膝より少し高めの丈のタイトスカートのスーツを身にまとい、正に出来る女の人、という雰囲気を醸し出している。
「えー、レセプ様私たちに何かご用ですか?」
「レセプ、で大丈夫ですよ。我々は冒険者組合の職員なのですから、わざわざ畏まらなくても最低限のマナーを守ってもらえれば大丈夫です」
「わかりました。なら、レセプさん、とお呼びしますね。それでレセプさん。何かご用ですか?」
「いえ、差し出がましいこととは存じますが、そちらのお二方のことでちょっと…」
「二人?」
「あいたたた……」
「うぅ…まだ痛いです……」
レセプさんが手を差し出した方を見てみると、そこにはいまだに私のゲンコツを食らって頭を押さえている二人の姿があった。
もちろん、イーリスとヴィサス様だ。
「あ、申し訳ないです…うるさかったですよね?私が後でキツく言っておきますのでどうかこの場は……」
「いえ、そちらの方は大丈夫です。元々冒険者組合は騒がしいところなので。見ていて愉快な人たちだな、と思ってはいましたが…」
フフッ、と手で口元に少し隠しながら笑うレセプさん。
ほら!貴方たちのせいで笑われてしまったではないですか…!
私はちょっと恥ずかしくなってしまい、少しだけむーっと、頬を膨らませながら二人の方を見た。