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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
10章前編 交易都市ベルシュテット

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意外と高かった

 交易都市ベルシュテット、東地区。


「もしかして、意外と高かった?」


「まあ5人分だし、高くもなると思うが」


 アイトたちは酒場で夕食を済ませ、南地区にある宿に向かって歩いていた。


「でも店員の人、勘定してて驚いてたわよ」


「それに私とシスティアを交互に見てたな」


 システィアの指摘に姉であるスカーレットが同意する。その2人を見たアイトは内心、「でしょうね」と反応していた。


(あれだけ食べれば、さすがに‥‥‥)


 明らかに自分達(アイト、ジェイク、アヤメ)よりも、姉妹2人の食べている量が違ったのを。アイトは話の隙間を見て店員に皿を下げてもらっていたほどだった。ただでさえ個性的な2人が大食い。それも2人の体型からは全く想像もつかないほどの。


(あ〜うん。この姉妹に関してはもう驚かんわ)


 アイトはソードディアス姉妹の恐ろしさを再認識した。彼女たちは全く気付いていないが。



 そして、それから数分歩いていると。


「あ、あのアイトくんってお菓子とか好き?」


 突然、アヤメが控えめな様子で隣のアイトに話しかける。


「え、うん。基本なんでも食べるよ」


「そ、そうっ。じゃあ、これ食べましょ!」


 嬉しそうにアヤメが大きい袋の中から取り出したのは、包装されたクッキー。


「うわ、超美味そう!」


「メルティ商会の期間限定なんだって。せっかくの機会だし買っちゃったんだけど、私だけじゃ食べきれなくて」


「貰っていいの!? ありがとうクジョウさん!」


「ひゃ、ひゃひ♡」


 震えたアヤメの声はお菓子に夢中のアイトに届いていない。


「それじゃあ早速!」


 そう意気込んだアイトの声は、アヤメに届いていなかった。アイトは手に取ったクッキーを1枚食べる。


「〜〜〜うまいっ! さすがメルティ商会!!」


 代表であるアイトが言うと完全に意味合いが変わってくるのだが、今ここにエルジュの構成員はいない。ただの一般人の感想として流れていく。


「よよよよかったっ!! まだ他にもあるんだ!」


「え!? 他にも!?」


「つい買いすぎちゃって。だから食べてくれる?」


「クジョウさんが良いなら! ありがとう!」


「こっちこそありがとうをありがとうっ!?」


 感極まったアヤメが暴走し始めるが、アイトはお菓子の美味しさに意識を持っていかれ、あまり気にしていない。

 頬を真っ赤に染めたアヤメは、大きな袋から包装されたお菓子を取り出したーーーわけではなく、袋ごとアイトに手渡す。


「ーーーん?」


 予想外の行動に、手渡されたアイトは呆然と袋を見る。


「こ、この中に全種類入ってるの! 私だけだと、全然食べきれなくて。アイトくんが食べてくれて良かった。こっちこそ、本当にありがとうっ!!」


 そう言ったアヤメは夢心地になっていた。


 『自分が食べきれない代わりに食べて欲しい』とお願いすることで無料で貰うことに対する申し訳なさを感じないようにする。

 そしてアイトはお菓子が好物と聞き、間違いなく喜んでもらえたと喜んでいた。一見、彼女の作戦は完璧だっただろう。



「へ、へぇ〜。こんなにぃ‥‥‥」


 ‥‥‥そのお菓子が、大きい袋にパンパンに詰まるほどの量じゃなければ。


(全種類買ったの!? こんな貰っていいの!? ていうか、元々この量を食べるつもりだったの!?)


 明らかに、アイトは喜びよりも驚きの方が勝ってしまっている。


(まさかクジョウさんも大食いだった。この世界の女性は大食いが平均なのかこの量、1人で食べるのは‥‥‥お金払わずにこんな貰うのはさすがに‥‥‥)


 アイトは心底驚いていたがアヤメは全く気づいていなかった。それどころか目が合っただけで頬を染め、はにかんでいる。恋する少女は、ある意味盲目。


「クジョウ、将来はお菓子屋さんになるのか?」


 その2人を見て、ジェイクは全く関係ないことを呟いていた。



「姉貴、余ったからこれ食べて」


「ん? ああ、クッキーか」


 そして一方、その3人の少し後ろを歩くソードディアス姉妹は。


「うん、美味い。この控えめな甘さ、癖になる」


「‥‥‥そう。それなら姉貴にあげるわ。私、けっこうお腹いっぱいだし」


「良いのか? じゃあ妹の好意に甘えて」


「言い方っ!! なに勘違いしてんの!」


「いや甘党のお前が全然甘くないお菓子を買うなんて珍しいと感じて。つい疑問が」


「そんなに言うなら返せ!! 私が全部食べるから!!」


「わかった私が悪かった。ありがたくいただくよ」


「‥‥‥ったく、わかればいいのよ。クソ姉貴」


「相変わらず口が悪いな」


 拗ねる妹に対し、やれやれと苦笑いを浮かべるスカーレット。2人はお互い会話をやめ、前の3人に置いていかれないように歩き続ける。


「ん、美味い」


 お菓子を食べて満足気だったスカーレットは、システィアの方を見ていなかった。


「‥‥‥」


 そのため顔を下げている妹の頬が赤いことなんて、微塵も気づいていない。



「これ、どうしよ‥‥‥」


「ふへへっ♡ あへへへへっ♡」


「ん? 向こうで叫び声が聞こえたような気が」


 そして前の3人は、2人を気にする余裕が無かった。


(たまには、こういうのもいいかもな)


 アイトは案外、今回の観光旅を楽しんでいた。今この時、都市内で異変が起きていることに気付かないほどに。

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