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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
9章 交流戦代表選抜試験

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幕間 学園のクリスマス

 終業式が終わり、翌日の夕方。冬休み1日目。この日は、多くの人にとって特別な日でもあった。


「メリークリスマス〜!!」


 そう、12月24日。クリスマス・イブなのである。


(この世界にもクリスマスとかあるんだよなぁ‥‥‥その由来は聖天教会が役割を果たしてる感じだけど)


 この世界でのクリスマスの由来は、聖天使エルフィリアの誕生を祝うことから始まったとされている。


(もし他の世界があれば、またそこでも別の誕生を祝ってクリスマスが存在するんだろうか‥‥‥)


 そう考えながらアイトは、学園の食堂に飾られた大きなクリスマスツリーを眺めていた。グロッサ王立学園は、クリスマス会を12月24日に開催する。


(まあそもそも月日の数え方も前世と同じだし。おかげで転生しても戸惑う事はなかったけど‥‥‥)


 アイトは別の事に戸惑っていた。それは、クリスマス会の規模の大きさである。


「本日はクリスマス会に参加いただき、ありがとうございます。この時を、みなさん目一杯楽しましょう」


 ルーク・グロッサの言葉に、皆が一斉に掛け声を出す。クリスマス会が本格的に始まったのだ。

 アイトは目を輝かせて、用意されていた豪華な料理に心躍る。


(それじゃあさっそく美味しそうな料理からーーー)


「‥‥‥楽しいわね」


 すると近くから聞こえた声に、アイトは反応して視線を向ける。そこにはユニカ・ラペンシアがいた。お互いに気付くと、どちらからともなく会話を始める。


「ローグくんもそう思わない?」


「‥‥‥ああ、しみじみ思うよ」


「こんなに楽しいこと、今まで体験したことがなかった。この楽しさを享受できるのは、あなたが助けてくれたから」


「ラペンシア‥‥‥?」


 アイトが尋ねると、ユニカは少し戸惑った様子で目を合わせる。


「ありがとう、ローグくん。あなたのおかげで、今とっても楽しい」


 ユニカが満面の笑みで感謝を告げると、少し恥ずかしくなったのか踵を返して歩き出す。


「‥‥‥メリークリスマス」


 そして、小声でそう呟いて他の友人の元へ向かっていった。


「‥‥‥はは、あいつもテンション上がってるんだな」


 アイトは嬉しくなっていた。ユニカに感謝を告げられた事もあるが、何より彼女自身が楽しそうな事。


(レスタとしての行動が、誰かを笑顔にできることもあるんだな)


 アイトはそれを実感し、嬉しくなっているのだ。ほんの少し、自分のことを許せそうな気がしていた。


「あ! いたっ!! アイトぉ〜!!! 代表入りおめでとぉぉ!!!」


「ぅべっ!?」


 すると背後から姉のマリア・ディスローグが現れ、思い切り抱き着かれる。アイトは鈍い声を出しながらも全力で抱擁から離れた。


「さすがに今はこういうのやめない!?」


「もう、相変わらず素直じゃないんだから」


 そう呟くマリアは長い黒髪を真っ直ぐに降ろしている。彼女は普段ポニテであるためアイトの目には少し新鮮に見えた。


「そういえば姉さん、代表入りおめでとう」


「え? あぁ‥‥‥うん。ありがとね」


「え、何その反応」


 姉の全く嬉しくなさそうな返事に、アイトは反射的に聞き返してしまう。


「ーーーだってあんなの納得いかないんだもの!!」


 すると突然、マリアが周囲の注目を集めるほどの大声を上げる。アイトは困惑して落ち着かせようと試みるが、マリアは止まらない。


「スカーレットめぇぇっ!!! この前の学園見学会で怪我した私の右手がまだ完治してないことに気付いて、『今の君と戦っても面白くない』とか言ってきたのよ!? あのふてぶてしい目が腹立つッ!!」


「そ、それで結局どうなったの?」


 アイトは聞いてあげることで落ち着かせようとする方向へ舵を切った。マリアは握り拳を作りながら続きを話す。


「『ジャンケンで決めよう。君がそれを呑まないなら私は辞退する』とか言いやがってぇ!!」


(そういえばこの世界にもジャンケンってあったな‥‥‥)


 アイトが的外れの感想を抱いている間も、マリアの話は続く。


「しかも私が普通に勝っちゃったしっ、何が『運も実力のうち』よっ!! ほんっとに納得いかない!!」


「そ、そうだね‥‥‥」


「ーーーこんな場で何を叫んでいる」


 アイトが適当に相槌をうっていると、マリアの後ろに張本人が現れる。ホワイトブロンドの長い髪を普段のようにハーフツインテールにまとめた長身の美女。


「す、スカーレット先輩」


 スカーレット・ソードディアスの登場に、アイトは戸惑いながら声を漏らした。すると当然、マリアが振り向いて過剰に反応する。


「っ!! ほんっとにあんたは‥‥‥!! クリスマスなんて興味ないくせになんでいるのよ!!」


「美味しいものを食べられるからクリスマスは好きだぞ? それに、今日来たのも会って話したい人がいるからだ」


「えっ」


「あ、あんたが!?」


 マリアが大声で反応した事で、アイトの声は掻き消された。まるで狙い付けているかのようなスカーレットの視線に戸惑い、無意識に漏れた声が。


「せっかくだし私たち3人で楽しく談笑と行こうじゃないか」


「なっ、ダメよ!! あんたと関わってアイトの性根が曲がっちゃったらどうするの!?」


「なかなか失礼なことを平然と呟くな」


「当然でしょ!? あんたには言いたい事が山ほどあるんだからっ、ほら行くわよ!!」


 マリアは少し強引にスカーレットの肩に手を回して引っ張って連行していく。スカーレットは少し驚きつつ、残念そうに後ろを向いた。


「これは残念だ。じゃあ後輩くん、また後で話そう。もしくはまた今度」


「させるわけないでしょ!? じゃ、思いきり楽しんでねアイト!」


 こうしてマリアとスカーレットが周囲の目線を集めながら去っていく。


(仲良いなあの2人‥‥‥)


 アイトは終始苦笑いを浮かべ、2人が去っていくのを内心喜んでいた。


「ぁ、マリアさん‥‥‥」


 すると今度はアイトの後ろから聞こえた、可愛らしく小さな声。聞き覚えがあるアイトは無意識に振り向くと、そこには予想していた人物がいた。


「シロア先輩!」


「‥‥‥ぅん、アイくん」


 アイトの2学年上の先輩であるシロア・クロート。クリスマスだからか桃色髪の毛先を少し巻いており、ハーフアップにまとめている。そのため普段の彼女よりも数段大人びて見える。


「‥‥‥マリアさんと、お話しようと思ったのに‥‥‥」


 だが中身は当然だが全く変わっていない。人見知りで声を出すのが苦手なシロアは、少し寂しそうに佇んでいる。


「また後で戻ってくると思いますよ! あとその髪型すごく似合ってます!」


「ほ、ほんと‥‥‥ぇへ、がんばってよかった‥‥‥」


 普段と変わらない小動物の若き可愛さの権化に、アイトは心が満たされ焼かれそうになるが、必死に冷静を装って会話を続けた。


「あの、聞きたいことがあるんですけど」


「‥‥‥」


 なぜ、シロアではなくステラが3年の代表選手として選ばれたのか。その理由は、『一騎討ちの試合でシロアがステラに負けた』から。

 一見すれば、王国最強部隊『ルーライト』に所属する最年少のシロアが負けるなんて考えられない。だからこそ、アイトは試合の詳細が聞きたかった。

 だがアイトは咄嗟に、続きを発するのを止める。


「‥‥‥なに、かな」


 シロアの無理に微笑んでる表情が、全てを物語っていた。負けて悔しい、でもそれを代表に選ばれたアイトの前で見せるわけにはいかない‥‥‥そんな心情が混じった、複雑な笑顔。


「ーーーシロア先輩の好きな食べ物って何かなと思いまして」


 それを察したアイトは、反射的に質問内容をすり替えた。


「‥‥‥ふぇ?」


 代表選考の事を聞かれると思っていたシロアは、予想外の質問に思わず声が出る。


「だって、美味しいもの食べ放題ですよ!? 急いで取りに行かないと好きな物取られちゃいますから!」


 アイトは反応に困っているシロアの腕を掴み、歩き出す。


「それと先輩の話、色々聞かせてください! 気軽に話できる上級生は、姉の他にはシロア先輩しかいませんから!」


「アイくん‥‥‥」


 シロアは目を見開いて先を歩くアイトを見つめると、嬉しさと安心感が込み上げて来た。


「‥‥‥うん! 私も、アイくんとおしゃべりしたい!」


 そう言ったシロアは先を歩き、逆にアイトを引っ張っていった。


「ちょっ、痛っ! シロア先輩引っ張りすぎ!?」


「〜〜〜♪」


 前を向いて歩くシロアは、まるで花が咲いたような満開の笑顔だったという。

 その後もアイトは多くの友人たちと談笑し、学園のクリスマス会を楽しんだ。そんな時間はすぐに過ぎていく。


 数時間後。


 アイトは学生寮に戻ると、管理人に呼び止められる。そして自分宛に届いていたと言う手紙を渡された。


(誰からだろう‥‥‥)


 アイトは自室に入ってから封を開けて確認すると、中には1枚の紙が入っていた。


『明日の夜7時、マーズメルティへお越しください』


 刺繍された手紙の差出人は、学生として潜入しているメリナからだった。

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