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ウェアウェポン  作者: シャルロッテ


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3/6

狐ヶ崎の依頼

あたし達は狐ヶ崎と一緒にポールタウンへと帰って来た。なんでも、助けてくれたお礼にお茶でも奢ると言ってくれた。


「ほー、中々活気のある街じゃねえか。清潔さも明るさもあってさ。....真ん中の、場違いな程に物々しい建物は何だ?」


『あれがフェイス、ここを仕切る企業の本社。あと綺麗な街なんて表通りくらいよ? ポールタウンの反対側....裏通りはあたしの様な、行き場のない子供やクズに堕ちた大人の巣窟になってるわ』

「....」ごくごく


このお茶すごく美味しいわ! 何か花の様な香りもして、何よりとっても暖かい! ....専属の護衛にでもなれば、ずっとこのお茶を飲んでいられるかしら?


「....嬢ちゃんも、見た目相応に苦労してんだな」


『店の人に凄い目で見られてたしね』

「....」ごくごく


まあ、そんなのいつもの事だけど。追い返されないだけ良い対応を受けてるわ。


「気になってはいましたが…ベルグラノさんは呪いを受けていますよねぇ?」


狐ヶ崎が割と真剣そうな声で、あたしの方をじっと見つめている。…いや、目を開いてないんだけど....見えてるの? それ? 名前はシェルツが教えた。


「分かるのか?」


「これでも情報屋ですよ? それに、お互いが通信魔法をしているなら警戒心が強いで納得できますが、シェルツさんが普通に喋って、ベルグラノさんが一言もしゃべらないは不自然ですからねぇ。そして、そのような状況は精神障害か呪いのどちらか....ので、呪いと決め打ちをしたのですよ」


....遠回しに、精神は病んでないって言われてる? 


『呪いの事、分かるの?』

「....」じー


「ベルグラノさんは何と?」


「呪いについて聞きたいとさ」


でも情報屋から何から聞くって、高くつきそうな気がするわ....。もう救助のお礼は貰ったわけだしね。


「そうですねぇ....これも立派な情報で商売道具ですから、いくら恩人と言えどタダで教える訳にもいかないんですよ」


「ま、そうなるな。礼はもう受け取っちまった訳だし」


「…」うんうん


「おや、随分と物分かりが良いのですねぇ」


割り切らなきゃこの街でやって行けないわよ。


「いや、昔から情報屋ってのは金にがめつい奴らだからな」


「もう性分ですからねぇ」


因みにシェルツについて、狐ヶ崎はおおよそ理解していた。シェルツがフレッチャーであることも、あたし達がウェアリンクをしている事も。さすが、情報屋ね。あたしは何も知らなかったのに。


「しかし....どうにもお二人が金銭を持っているようには見えませんしねぇ....」


『こちとら現金なんて数えるほどしか触ってないわよ!』

「…」ふんす


「生後数時間だしな」


....あれ? もしかて、詰んでる? 折角の檻を解けるかもしれないって思ってたのに!!


「で、す、の、で?」


狐ヶ崎は両手を軽く叩くように合わせ、満面の笑みであたし達の方を見た。....これ、何かお使いを頼まれるやつだわ。


「ウチからお二人へ、ある依頼を出しましょう。それをこなしていただけるなら、呪いの情報を買える金額の報酬を払いましょう」


ほれ来た。....けれど、別に悪い話じゃないわ。いつだって仕事は欲しいし、裏へ戻ってもやる事なんて無いし。


『あたしは受けるわ! 呪いの事知りたいし、他にお金を稼ぐ方法無いし』

「....」うんうん


「そう言うのはまず、どんな仕事内容か聞いてから受けるもんだぜ? どうすんだ、これで水商売とかだったら」


『相手ぶっ飛ばして金を貰いましょう。ついでにk虚偽報告をして、狐ヶ崎からもお金を貰いましょう。こいつとは1度切りの関係で、後は知らないってことで』

「…」ふんす


「ははは! 逞しいねえ。んじゃ、俺もその提案に乗ろうか。フレッチャーってのは、召喚者について行くもんだしな」


「では、ウチの依頼を受けてくれますね?」


そう聞き直されると少し身構えるわね....。でも、今はこれしか選択肢が無いわ。


「…」うんうん


「だそうだ」


「では依頼の説明をしましょう。この街から北へ向かった森に、盗賊の野営地があるんですよぉ。そこの頭をぶっ飛ばして欲しんです」


「ああ、昨日の奴らの」


『それって....狐ヶ崎のミスの尻拭いをさせられてない?』

「....」じとー


「そんな顔をしないでくださいよぉ! 経緯がどうと、何をするかには関係のない事ですからねぇ」


「情報屋も大変だな」


ま、悪いやつぶっ飛ばせるならどうって事は無いわね! 狐ヶ崎は小さな地図を袖口から取り出して、盗賊の野営地の場所を指で囲った。ふーむ、結構離れてるわね。まあ、ここから1日で行ける場所ではあるけど。


「ああ、それとこちらも渡しておきましょう。報酬の前払い兼準備費用です」


そう言って、狐ヶ崎はお金の入った小さな袋を机の上に置いた。ジャリンとお金特有の小耳良い音が鳴って、半分溶けるように机へ少しだけ広がった。


「随分と気前がいいな。…安全な依頼じゃないってのは分かるが、さっきであったばかりの俺達にそれほど入れ込むものか?」


前払いのある仕事は受けるな。裏の街ではそんな噂が立つくらいには怪しむべき行為だ。....あたしはあんまりそうは思わないけど。


「いくらエクリメイトが使えたとしても、回復役や携帯食料等の消耗品の確保は大事ですからねぇ。ウチとしましても、恩人を殺すような真似はしたく無いですから」


『他にする事ないんだし、受けてもいいと思うわよ?』

「....」じー


騙されたと思ったなら、次は狐ヶ崎が星になる番よ。


「…おーけー。それじゃあ、こいつはありがたく使わせてもらうぜ」


「ええ。依頼の受諾、ありがとうございます。では....ウチはここで失礼しますよ。店の支払いは済んでいますので、後はご自由になさってください。それでは」


そう言いながら、狐ヶ崎は一例をしてどこかへ行ってしまった。....なんともまあ、実体の分からない胡散臭い奴ね。でも、そんな奴の依頼でも、仕事は仕事だから。


『さっさと終わらせましょう。盗賊の身柄や盗品については何も言われなかったから、いい感じに売り捌いてしまいましょう』

「....」ふんす


「どっちが盗賊かもう分かんねえな」


あたしとシェルツは残ったお茶を飲んで、準備の為に店を出た。そして....お風呂屋にやって来た。


『何で? 返り血も浴びて無いのに?』

「....」かしげ


「身だしなみを整えるんだよ。いくら今から森へ行くつってもな、人としての最低限の恰好はするべきだぜ? 特に、嬢ちゃんも年頃の女の子なんだからさ」


『ふーん....あたしの事、女の子って見てくれるんだ?』

「…」じー


....。そもそも、人として扱われたのはいつが最後だろう。


「嬢ちゃんがいくらはしたない奴でもな」


蹴ってやろうかな?


「ほれ、金は渡しておくから行ってこい。俺はその内に色々旅支度を整えておくからさ」


『ん? シェルツも入らないの?』

「…」じー


「俺はまだ産まれたばかりで汚れてねえよ。それに、戦闘も嬢ちゃん1人で済ましたしな。汗も掻いてねえんだよ」


ああ、お風呂ってそういう時に入るのね。てっきり、感染症防止施設か何かだと思ってたわ。....でも、それはそれとして問題が出て来る。


『あたし、お風呂の入り方とかよく分かんないんだけど....』

「....」じー


「…ん? すまん、俺の聞き間違いかもしれん。もっかい言ってくれ?」


『あたし、お風呂の入り方とかよく分からないの。裏の方にそんなの無いし、おばあちゃんが生きてた頃は全部おばあちゃんがやってくれてたし....』

「....」なつかしみ


「おーけー、聞き間違いじゃないみたいだ。....そんな事........いや、何でもねえ」


「....?」かしげ


シェルツは何かを言いかけて、その言葉を飲み込んだ。顔も少し逸らしたし。


「だが一緒に入れねえぞ? フレッチャーっつっても性別はしっかりあんだ。俺は男で、嬢ちゃんは女の子だ」


『あたしに良い案があるわ!』

「....」ふんす


「…大丈夫な案か? それ?」


グダグダうるさいわねえ。こんな話合いするなら、真正面から行った方が何とかなるわ。いかなかったら、別の風呂屋で別の方法を探しましょう。


~~~


『ほら、何とかなったじゃない!』

「…」どやっ


「納得いかねえ....」


ベルグラノの案は、訳アリ過ぎの引っ込み思案で可哀そうな子を演じて、ツッコんだら面倒になりそうだから見て見ぬふりをさせるかと言う、作戦でもなんでもなさそうな物だった。....それが通るんだから、現地民の言う事は聞いとくもんか?


『何とかなったんだから、現実を受け入れなさい』

「…」ふんす


「一番納得いってねえのは、嬢ちゃんが可哀そうな子って思われてる点だ」


内面はこんなんなのにな。....いや....ちげえ。それを通せると思えるほど、嬢ちゃんの心象が悪い事に納得がいってねえ。


『立場の有効活用よ。変なプライド持ってたら、最後は自分からそのプライドを折る時が来るわ』

「....」ぬぎすて


ベルグラノの言葉には、どこか説得力があった。体験談....と言うには遠いが、実際に見たかのような思いが伝わって来る。


「....。ほら、タオル巻け。堂々と服を脱ぎ散らかすな、はしたねえぞ?」


『他に誰も居ないんだからいいじゃない』

「…」まきまき


「俺が居るんだよ」


真昼間から風呂に入る奴なんて居ねえのか、実質俺達の貸し切り状態だった。床のタイルも、全然滑らない程には乾いている。


『おおー! とっても広いわ!! それに、部屋全体が凄く暖かい!!』

「....!」わー


「待て待て、速攻湯船に浸かろうとするな。先に体を洗ってからだ」


楽しそうに走り回るベルグラノを捕まえて、シャワーの前に座らせてお湯を掛ける。


『全部任せてもいい?』

「....」めをとじ


「いや、流石に前は自分でやってくれ? 俺もそこまで面倒は見れねえぞ」


『ふーん....やっぱり、小児「ちげえからな」

「…」おゆながされ


何か変な事を言われる前に、先手をとってベルグラノの言葉を遮断する。誰が幼子に発情する変態だ。相手がどんな見た目だろうと、女の子なら相応の扱い方があるんだよ。


「…」


「…」ごしごし


ベルグラノの髪をお湯で流し、シャンプーを泡立てて髪を洗う。傷んで黒ずんでいた髪をゆっくりと梳かし、ブラシを使って丁寧に丁寧に洗って行く。その度に泡は直ぐに汚れ、何度も洗い流してはまたシャンプーを追加させた。


「痒いところはねえか?」


『....ええ。凄く気持ちいいわ』

「…」ごしごし


「そりゃよかった」


....。俺達の前には鏡がある。そして、鏡にベルグラノの体が写った。タオルを巻いても細いと感じる体に、華奢と言うよりかは栄養の足りていない手足。爪は不揃いに欠けていて、手入れらしい手入れが行われていない。


「....聞いても良いか?」


『なに?』

「…」ながされ


「嬢ちゃんは、どうして裏の世界に来ちまってるんだ?」


「…」ごしごし


流石に早すぎたか? 随分踏み込んだ内容だし、もう少し後で聞いても良かったかもしれない。


『ふふ。そんな事聞かれたの、シェルツが初めてね』

「…」にこにこ


そんな俺の想いとは真逆に、ベルグラノは心でも顔でも笑って見せた。…初めて、ねえ。


『簡単に言えば、親に売られたの。....いえ、売る為に子供を作っていたのかしら? それで、売られた先から脱走して、ここのポールタウンに逃げて来たの』

「…」ごしごし


「生まれはポールタウンじゃないのか?」


『生まれは別の場所。でも、こっちの方が長く生活しているわ。....おばあちゃんって言うのも、実のおばあちゃんじゃなくて、そういう愛称の人だったの。浮浪のあたしに、ちょくちょく手を貸してくれてたの。でも、そんなおばあちゃんでも、あたしの出自については聞かなかったわね』

「…」ながされ


「…」


ベルグラノは、普通の子では無いとは思っていた。見てくれは悪いし、言葉も出ない。その割には結構な性格をしていて、錆びた剣を使う妙な奴だとは思っていた。…だが....それは、あんまりじゃねえか?


『同情してくれるの?』

「…」ぴかぴか


「まあ、な」


ベルグラノの体全体にお湯をかけ、そこにはぴかぴかになった少女の姿があった。所々に傷のある、痩せた少女の姿が。


「ただ、思うだけなら誰だってできる。嬢ちゃんは俺の召喚者だ。こうなりゃ、最後まで面倒見てやるよ。....それに、ここまで聞いて何もしない奴はダセえだろ?」


『あら、シェルツはお涙頂戴展開に弱いのね? じゃあこれからはどんどん使って行かなきゃね!』

「…」くすくす


「おーけー、一旦見捨てて見るか」


『あ! こら逃げるな!! 湯船にまだ浸かって無いんだから!!』

「…」ぷんすこ


あの性格だから生き残ったのか、あの性格じゃ無いと生き残れなかったのか。見た目の割には達観した考えを持っていて、なのに盗賊精神はしっかりある。手段をそれほど選ばないが、超えちゃいけないラインはしっかりと引いている。


『確か10数えるのよね?』

「…」ぶくぶく


「それは最後出る時に数えるもんだ。今は好きなだけ浸かっていけ」


『ここに住む事になるわね』

「…」ぶくぶく


「のぼせるぞ?」


可哀そうな奴、とは少しだけ思っちまった。だからこそ、変えてやりたいとも思った。大きなお世話かもしれねえが、目の前の子を見捨てれるほど俺は悪人じゃないんでな。....俺が消える最後まで、付き合ってやるよ。


『湯船のお湯って美味しいのかしら?』


「やめなさい」


それはそれとして、この常識の無さとはしたなさは直して行こう。マジで変な勘違い野郎に絡まれるかもしれねえ。

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