起:聖剣の主張、級友の招請
《聖剣の解放を許諾しますか?》
目が覚めて視界に入ったのは、青く半透明のメッセージウインドウだった。
そうして俺が思ったことは一つ。
――ああ、新能力ね。
俺の名前は田中太郎。
只の非凡な高校生である。
俺がどういう存在なのかは、この作品の作者のマイページの自己紹介欄に何故か掲載されているSS、『田中 太郎の憂鬱』を読んでもらえれば理解できると思う。
え、わざわざなろうのマイページなんて見ない?
そもそもなろうの仕様がわからない?
仕方ねえなぁ、端的に言うぞ?
元々超能力を扱える変身ヒーローだったが、祖先に鬼がいることが発覚し、最近は魔法少女の素質があると言われて、政府やら妖精やらクソジジイに良いように使われている扱いやすい駒だ。
大体わかったな?
話を進めるぞ?
そんな訳で定期的に世界の命運をワンオペで任せられている俺だが、こうして新能力や新しい因縁が出来るのにも慣れ……いや、慣れねぇわ。
理解はしたが納得は出来ねぇわ。
何で高校生一人しか世界守れる人間が居ないんだよ。
空飛べるし大概のヤツはワンパンとはいえ、身体は一つしかないし学校もあるんだぞ。
試験範囲覚えてたら新アイテムの使い方覚えらんねぇんだよ。
世の中のヒーローしながら部活入ってるヤツらは何なの? 身体三つぐらいあるの? 何でそれで青春を謳歌出来てるの? 俺ももっと教室でテロリスト撃退する妄想とかしたいよ。
《聖剣の解放を許諾しますか?》
にしても主張強いなこの板。
視界の五割掌握してくるのはやめてほしいんだが。
《聖剣の解放を許諾しますか?》
視界がうるせえよ点滅すんな。
未知の力下手に扱って暴走しても困るし、取り敢えず止めときたいんだが。
保留ボタン・イズ・何処?
《》
あっ、消えた。
え……いや、これもっかい出てくるよね!?
一回断ったらもう駄目みたいな袖振り合うもシステムじゃないよね!?
お前三顧の礼って知ってる? あ、もう三回以上表示されてた? 黙れ。
新能力が目覚めないせいで詰みとか本気で勘弁してほしい。
《聖剣の解放を許諾しますか???》
あ、なんだぁ。
焦らせんなよ、やればできるじゃん。
何で疑問符増えてんのかはわからんが、もしかして意思とかあるタイプ?
落ち着けよ。
スマートにいこうぜ。
一先ずは力の概要判明するか、必要に駆られるまで放置だ。
とりま放課後、適当な海上で試し撃ちしてみるか。
欠伸を一つ放ち、顔も洗わずリビングへ。
そこにはいつもの通り朝食を用意してくれている、人の腰ほどの身長のテディベアがいた。
そう、テディベア。
「おはようございます、田中様」
俺の魔法少女要素でのマスコットキャラ要因である自称妖精、ビィド。
某テッ◯の様に生物感のある姿ではなく、只のぬいぐるみがそのまま動いている様な存在である。
口も開かずクール美人感のある低音ボイスを放ち、ギュムギュムと音を鳴らして動く様は中々に慣れない。
メルヘンだとは思うが、夜中に電気も付けずソーラン節踊ってる熊を見た時はマジで女の子みたいな悲鳴を上げてしまった。
……いや、本当に何してたんだあの時。
「おはようさん、ビィド」
「朝食が出来ております。ご着席を」
「急かすなよ、ただでさえ寝覚め悪くてテンポ崩れてんのに」
「おや、如何されましたか?」
「いや、目が覚めたら聖剣がどーたらってシステムメッセージが来ててだな……魔法少女サイド的には心当たりある?」
「いえ、特に御座いませんね。然し田中様、魔法少女サイドではなく妖精サイドとして括っていただいたほうがより正確な表現かと……」
「あー、わかったわかった」
始まり掛けた長話を片手で牽制し、長テーブルに肘をつく。
ビィドは俺の態度がさも不服かの様に立ち止まっていたが、数瞬の後キッチンからトレーを運んできた。
「ではこちらサラダです」
「おう、ありがとう」
「目玉焼きで御座います」
「おっ。ビィド、焼き加減の調整上手いんだよなぁ」
「厚焼きベーコンです」
「おうサンキュ……いやワンプレートに盛れよ! 特に目玉焼きなんてベーコンの油で焼くんだから分ける意味ないだろ!?」
「ワタクシは気づいたのです……皿洗いの時間に癒しを感じていることに」
「自ら率先して家事手伝いやってるのに、無駄な業務を増やすんじゃねぇ! その時間で、人々の悪意を具現化させるジャマー・トークンをばら撒いてる元凶の正体でも探ってくれ! あと、ぬいぐるみの外見で手元ビシャビシャになってんのちょっと心配になる!」
「流石は田中様。見事な長文ツッコミで御座いますね」
「え、びっくりするぐらい内容に言及しないじゃん。言葉のラリーって知ってる? 俺の大好きな趣味なんだけど」
*
ジャマー・トークン。
それは人々が背徳と感じている個々人の悪意を増幅・具現化させ、実体なき魂喰らいを生み出す災禍の種――
あ、今回そういう小難しい設定とか短編に必要ない知識とか要らない? じゃあスマン、さっきの回想は忘れてくれ。
朝食からシーンカット。
我らが東川丘高校に登校した俺は、教室に着くなり登校途中に購入した週刊少年雑誌を広げる。
HRが開始されるまでの僅かな安息の時間。
そこで僅かな少年魂を燃やすのが俺の日々の楽しみなのである。
「何をしているのかしら、貴方は」
冷たげな声が俺の時間に打ち切りを告げる。
残酷な沙汰に溜め息で応え、俺は抗議の目全開で顔を上げた。
「見てわかんねぇのかよ。漫画読んでんだよ」
「あら、私は『教室で堂々と少年誌を読むなんて正気なのか』と、貴方の思考回路に疑問を呈したつもりだったのだけど、読解力は皆無なのかしら。小中の通信簿、国語の欄は零だった?」
普通無ぇのよ、通信簿に零は。
黒髪ショートに小生意気なレイヤーカット。
その薄く貧相な身体を針金でも入っているのかという程にピンと張るの行為は、本人の強い精神が反映されているようで俺は嫌いじゃない。
姓を浄善寺、名は情華。
今時珍しいぐらいのコテコテの風紀委員長様が俺を見下ろししていた。
「お前絶対選択で倫理取るなよ。答案用紙に零書かれるぞ」
「零なら普段から貰っているわ。二つ並んでね」
「うわ回りくどい自慢。高校のテストで満点連発とか尊敬通り越して逆に引くわー……」
「そういうのは、他人と同じぐらい努力をしてから言いなさい」
そう言うと浄善寺は俺の手から少年誌を取り上げる。
「返せよ俺のジャン◯」
「貴方のその言葉の何処に正当性があるというのかしら」
「ヒトのモノを取ったら犯罪なんだぜ。知ってた?」
「法を犯す者に対して適切な処罰を下しているだけだと思うのだけど」
「うっせぇ! こちとらこのご時世にアプリで定期購読するわけじゃなく、毎週態々コンビニで買ってんだわ!」
「そのせいで風紀委員の物品置き場に本棚を設置する必要が出てきたのだけれど、いい加減にしてもらえないかしら?」
「だって取りに行くのメンドいし……後、浄善寺も毎号気になってるだろ?」
「おまけページを見るのが好きだから単行本派よ。修正もあるし」
なんてヤツだ。
この修正前のライブ感が堪らないというのに。
俺が黙ったのを確認した浄善寺は、フッと息を吐くと手に持った週間少年誌を揺らし見せつけてくる。
「じゃ、いつも通りこれは没収させてもらうわよ」
「待て浄善寺」
「ひゃっ!?」
俺が急に手首を掴んだものだから、浄善寺は身体をビクリと震わせ女性らしい悲鳴を上げた。
「アンケートハガキは置いていってくれ」
「…………没収品を取りに来るのは面倒臭がる癖に、毎度律儀に葉書は送ってるのは何なのかしらね」
「いやぁ、やっぱり募金やゴミ拾いみたいな、皆通り過ぎるような細やかな行為が好きというかだな?」
「その善性を活かして、貴方がもっと常識的な人間になれるように祈っておくわ」
「え、常識が無いと思われてる?」
浄善寺は溜め息を一つ零した後、何処から取り出したのかペン型のハサミでハガキを切り取り俺に差し出す。
「おう、サンキュ……」
受け取ろうとしたが、浄善寺は頑なに右手を離そうとしない。
「あの、浄善寺さん?」
「所で田中君、明日は暇かしら」
「あ……?」
やけに真面目な面持ちで問うてくるものだから、思わず口から疑問符が漏れてしまった。
「明日、付き合ってもらえないかしら」
何で? 何に? 何処まで?
謎は尽きないが、唯一つ言えることがある。
俺という人間は約束事をしてはいけない。
明日は土曜日。
『大いなる力には、大いなる責任が伴う』ではないが、ヒーローは年中無休なので休める時に休みたいのだ。
「悪いが断――
「断ったら没収したジャ◯プを一冊残らず着払いで送りつけてやるわ」
――るわけがないじゃないですかハハハ。喜んでお供させていただきますよ」
「それで来るあたり、貴方の部屋はそれ相応の散らかり具合のようね」
ほっとけ。
足の踏み場はあるし床はちゃんと見えるわ。
「それじゃあ明日九時から、ショッピングモールの三階カフェ集合で。詳細はメッセージアプリにて連絡するわ」
「俺、お前の連絡先知らないんだが」
「……そうね、ではクラスのグループメッセから辿……れる筈がなかったわね。ごめんなさい」
「ねえ何でそんな酷い事言えんの? ぼっちイジりはルールで禁止スよね」
「未成年はルール無用でしょ。皆が友達登録大会してる中で貴方が一人だけサッサと帰っているのを見て、『嗚呼、あんな人間が後々になって友達がいないとか騒ぎ出してつまらない自虐に走り出すんだろうな』なんて事を思ったのをよく覚えているわ」
「うん、多方面を八つ裂きにするのはクソだから止めような?」
「では主語を狭めるわ。田中太郎君は自分から残念当然とも言えるボッチの道に堂々と足を踏み入れたにも拘らず、グループメッセに入っていない事を恥じるようなゴミの様なプライドをお持ちなのね。私はそれがとても滑稽に見えるわ」
「うん、ちょっと難しかったかな浄善寺。人を傷つける発言をした時点でクソなんだ」
知能指数離れすぎてると会話成立しないって言うもんな。頭の良いバカに説明しなかった俺が悪いな。
後、友達登録大会のタイミングで怪人が現れて泣く泣く退散しただけだから、ボッチの道に突き落とされた側なんだ俺は。
正義の味方って、福利厚生で信用できる友人派遣してくれねぇの?
……いや、友達いるけどな! 二、三人! いるし!!
「仕方ないわね。私のトークアプリの友達欄に、汚点を付け加えてあげましょう」
「人の名前汚点言うの止めてくれる? 正直に友達になってくれって吠えてみろよ委員長」
「よし、アンケ葉書は破り捨てるわ」
「ヤメロォ! 推し作品の感想書くのが楽しみなんだぞテメェ!」
「ありがたく受け取りなさい、委員長様のマイQRよ」
「あ、慎んでスキャンさせていただきやーす。委員長様」
……ん、あれコレ行く流れ? マジで?
浮かんだ疑問を尋ねようにも、既に机の周りには誰もおらず。休み時間の喧しさに、俺の悩みは流されていった。
お疲れ様ですバラレットラッ!
全自動駄文生産ラインこと、残機1LIFE0です。
大変申し訳ありません……後書き、短いです。
え、短い方が嬉しい?そんな馬鹿な。
クール系美少女って良いよなって事で、まーた性懲りもなく同じような物語を書いてしまいました。
うるせぇ!味付けが違うから別の料理なんだよおらぁっ!後私基準だと毒舌系じゃないのでキャラ被りはしてない筈、セーフセーフ。
毎日更新のつもりなので、最後まで楽しんでいただけると幸いです。ではでは、貴方さえ宜しければまた次のお話で。




