第2話 スキル選定日
スキル選定の儀は、王城最大の聖堂で執り行われた。
十三歳となる王族の少年たちが、神々の加護を受けて“その才能”を示される神聖な日。
天蓋の下、整然と並んだ席に、王と王妃、重臣たちが座っている。
その中で、三人の王子たちが順に祭壇へと進み――スキルの審判を受けていく。
最初に立ったのは、第一王子・レオン。
彼が手をかざすと、剣のような光が天から舞い降り、彼の頭上に宿った。
『戦神の剣』
会場にどよめきが走る。
「王の器」「まさに軍神」と、口々に称賛があがる。
次に進み出たのは、第二王子・ジーク。
彼の前に現れたのは、万華鏡のような光の球。輝きが分裂し、知恵の印となった。
『千智眼』
王都の評議員たちが頷く。「内政の要」「国を導く頭脳」――誰もが納得の一手だった。
そして、三男カイの番が来た。
カイは少し緊張しながらも、笑みを浮かべて祭壇に立つ。
両手を差し出し、天に祈る。
その瞬間──
小さく、そして淡い光が彼の手のひらに宿った。
剣ではなく、知識でもなく。
まるで“何にでもなれそうで、何にもなっていない”ような光。
そして告げられたスキル名は――
『勇者』
……沈黙。
誰もが、言葉を失っていた。
やがて、ジークが小さく鼻で笑う。
「……器用貧乏の極みだな」
レオンは興味すらなさそうに背を向ける。
「何でも“そこそこ”できるが、“何一つ”極められない。
それが“勇者”だと? ふざけているのか、神は」
カイは混乱していた。
剣も使えると聞いた。魔法も、回復も、知識も――全部対応している。
なのに、なぜ。
なぜ皆、こんなにも冷たいのか。
「……何でもできるのに、なんでダメなんだ?」
誰にも答えは返ってこなかった。
その夜、母・リシア王妃だけが、カイの部屋をそっと訪れた。
「カイ。あなたは、誰よりも自由な子よ。
人を守るのに、剣だけが必要なわけじゃない。
“勇者”は、そういうスキルなんだと……私は思うの」
その言葉だけが、カイの心に残った。
だが、その母も――間もなく病に倒れ、この世を去ることとなる。
スキル“勇者”――
誰からも理解されず、誰にも期待されない力。
それでも、カイは心に刻んだ。
「オレは、オレのやり方で、誰かを守る勇者になる」




