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閑話 ふたり、いつもの坂道で
グレイルの城下町、南の坂道。
春を迎えた丘の上には、花が咲き、風がやさしく吹いていた。
「――で? 今日は何のご褒美?」
リアが頬をふくらませ、カイの背中をつつく。
「いや、Cランク昇格祝いってことで、ちょっとくらいデートしてもいいかなって」
「ふうん? 昇格しても、強くなったって実感まるでないけどねー?」
「う……それは……」
カイは言葉に詰まった。
(……そりゃそうだ。セランのじいさんが、最近“枷”の魔法の負荷を十倍にしてるんだから)
(いくら鍛えても、普段の身体能力が抑えられすぎてて、パッと見じゃ全然変わらない……)
(いや、ほんとに鍛えられてるかどうかすら怪しくなるくらい重いんだけど)
リアはそんなカイの心中を知る由もなく、パンをかじりながら言った。
「でもまあ、いいけどね? 強さって別に“見えるもの”じゃないし。
あんたが相変わらず“人を助けたい”って気持ちで動いてるの、あたしは知ってるし」
「……リア」
「だから、早くその“枷”とかいうの外して、ちゃんと本気で相手してよね?」
「え? なに? 俺と戦いたいの?」
「ちっがーう! そういう意味じゃなくて!」
ふたりの笑い声が、丘の風に乗って町へと流れていく。
“凡夫の勇者”の物語には、こんな日常も、ちゃんとあった。




