第2話 ミスリルの誓い
グレイルの鍛冶場。
石炉の炎が揺れ、鋼を打つ音が静かに止んだ。
「……できたぜ」
ガルドが静かに息を吐き、カイに一振りの剣を差し出した。
ミスリルの刃は陽光を受け、淡く青銀に輝いていた。
装飾は控えめだが、芯の通った存在感がそこにあった。
「五年かけて作った。お前の戦いを見て、お前の構えを見て、お前の癖を見て……
そのすべてを叩き込んだ、世界に一つだけの剣だ」
カイは、両手でそれを受け取った。
「……軽い」
「ミスリルは魔力伝導率が高い。だがその分、意志を問う。
剣を振るうたびに、お前は“自分が何者か”を問われることになる」
カイは無言でうなずいた。
剣を腰に差し、深く礼をする。
「ありがとう、ガルド。……この剣に、名前をつけてもいいかな」
「もちろんだ。“レイの剣”に対抗できるのは、“誰かの剣”じゃねえ。
“お前が選んだ、自分だけの剣”だ」
カイはしばし目を閉じ、名をつぶやいた。
「――《誓剣》、って呼ぶよ。
仲間と作って、未来を切り拓くって意味で」
ガルドはにやりと笑った。
「……気障な名前つけやがって。けど、悪くねえ」
その日の夕刻。鍛錬場にて。
セランが剣を眺めながら、ふむとつぶやく。
「――なるほど。刃渡り、重心、握り……よく馴染んでいる」
「一緒に作ったからね。俺のわがまま全部詰め込んだ」
「ほう。それでいて、この“流れ”――完全に防御よりか。守る剣だな」
「うん。俺は、誰かの前に立つためにこの剣を作ったんだ」
セランは目を細めた。
「……らしくなったな、“勇者”」
その夜、カイは丘の上で空を仰ぐ。
《誓剣》をひざの上に置き、そっとその柄に手を添える。
(きっと、これが“俺の剣”だ。
でも――まだ“始まり”だ)
(レイの剣と並ぶには、これだけじゃ足りない。
だからこそ、俺はこの剣と、俺の道を歩いていく)
“凡夫の勇者”が手にした、自らの誓いの剣――
その刃は、未来を切り拓く意志に応えて静かに光っていた。




