第二章最終話 第11話(終) 剣と、歩みと
ミスリルの結晶を携えて、カイはグレイルの町へ戻った。
「ただいま……!」
そう叫んだとき、最初に飛び出してきたのはリアだった。
「カイっ! 無事だったのね!」
「うん、ちょっとヤバかったけど……ほら、これ」
懐から取り出したのは、淡く青白く光る“純結晶ミスリル”。
その場にいた誰もが、息を呑んだ。
「……これが、ミスリル……!」
数日後、鍛冶屋の作業台の前。
「……あんた、よくぞ戻ったな」
そう言いながらガルドは、ミスリルを手にとって眺めていた。
「これは……すげぇな。濁りがねぇ。まさしく“素材の王”だ」
「これで、剣が作れる?」
「――まだだ」
カイがきょとんとする。
「ミスリルは“意志”を問う。つまり、何のために振るう剣か――が問われる素材だ。
たとえば、力でねじ伏せるためか、誰かを守るためか。
それを決めずに剣を作っても、ただの“高級な刃”にしかならねぇ」
「じゃあ……どうすれば」
「一緒に考えようぜ、カイ。
剣の形、重み、芯の通し方、鍛え方……
全部、お前と一緒に作る。“お前だけの剣”だ」
「……うん。頼むよ、ガルド!」
その夜。鍛錬場にて。
セランの剣が、カイの肩に軽く当たる。
「反応が遅れたな。まだ気を抜くな」
「ちょっとくらい……いいじゃん。ミスリル持ち帰ったんだし」
「勘違いするな。ミスリルを持ち帰ったのは、ただの“始まり”だ」
剣を下ろし、セランは静かに言った。
「カイ、お前の剣術はまだ未熟だ。
地道に、丁寧に鍛え続けねばならん。
あと――最低でも、五年はな」
「五年……!?」
「お前は“凡夫の勇者”だ。
光速で成長することはない。だが、積み重ねることで、誰よりも遠くに届く」
カイは、自嘲気味に笑った。
「……じゃあその五年で、誰もが振り返る剣士になってみせるよ」
セランは黙って頷いた。
その顔は、どこか“誇らしげ”で――どこか“悲しげ”でもあった。
夜、星空の下。
ミスリルの結晶を握りしめたカイは、空を見上げる。
「――レイ。初代勇者。
あなたの伝説の剣を、俺は継げなかった。
でも、オレは……“自分の剣”を、作ってみせる
そしてあなたを超えてみせます!」
風が吹く。
その声が、どこか懐かしく響いたような気がした。




