第6話 ミスリルを求めて
「――ダンジョン?」
ある朝、セランはいつものように薪を割らせたあと、唐突に言った。
「お前に足りないのは、“実戦の濃度”と“素材”だ。
特に後者――あの試作の剣、今のままでは“折れる”」
「……あの剣、折れるのか」
「お前の中に力が蓄積されればされるほど、あの剣は追いつけなくなる。
だから、“本物”を作る必要がある」
カイは思い出す。ガルドが言っていた言葉。
「あんたの剣、必ず“伝説”にしてやるよ!」
「じゃあ、その素材ってのは……?」
セランは地図を広げた。
「グレイル北方、“黒の樹海”の奥にある廃遺跡。
そこに《ゴブリンダンジョン》がある。
古い鉱山を改造して造られたもので、いまや魔物の巣窟になっている」
「ミスリルは……その中に?」
「ああ。三層目の地下に眠っている“ミスリル鉱脈”。
正確な位置は分からんが、そこまで辿り着ければ手がかりはある」
カイは地図を見つめる。
「……やってみます。そのミスリル、絶対持ち帰ります」
「それだけじゃない。
この“制縛の印”をつけた状態で、命を懸けて強敵と渡り合う。
その経験が、お前を一段、上に引き上げる」
「つまり、“本気の修行その2”ってことですね」
「その通りだ。
もっとも――下手をすれば、命を落とすがな」
その日の午後、ガルドに会いに行ったカイは、ミスリルの話を伝えた。
「……マジか。ほんとに、ミスリル掘ってくる気か?」
「うん。オレの剣、お前と一緒に作りたい。
ガルドの本気に応えるためにも、素材はオレが取ってくる」
「ったく……勇者ってやつは、無茶ばっかだな」
そう言いながら、ガルドはどこか嬉しそうに頷いた。
「じゃあ、持ってけ。ミスリルってのは普通の鉱石じゃねぇ。
“共鳴”させなきゃ採れない。これ、おれっちの調律槌だ」
「お前の……?」
「一本目の試作だ。まだ粗削りだけど、ミスリルの音は拾えるはず」
カイは両手でそれを受け取る。
「ガルド……ありがとう。これも、持って帰ってくるよ」
そして、出発の朝。
リア、ロア、セラン、ガルド――皆に見送られて、カイは荷を背負った。
「待ってろよ。ミスリルも、強さも、絶対手に入れて帰ってくる」
「死ぬなよ、勇者」
「お前のことだ。最後には笑って帰ってくると信じてる」
「……剣を見せろ。そのとき、お前が何を掴んできたのか、見極めてやる」
それぞれの思いを背に――カイは、ゴブリンダンジョンへと足を踏み入れる。




