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都市伝説事典  作者: ニカイドウ
一年前の肝試し編
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3話 カシマユウコ

「なんとか入れそうだな。」

タケルは窓を確かめつつ、つぶやく。

「でも、体育館に入ってどうするんだ?」

と、タケシ。タケシの疑問はもっともだ。肝試しは体育館でやるものではない。そんな疑問に…。

「体育館に入ることが出来れば、校舎まで行けるはずだよ。」

答えたのはヤマトだった。ヤマトは説明する。

「体育館の2階に上がると、旧校舎に続く渡り廊下があるんだ。渡り廊下の体育館側の扉は鍵がかけられているけど、内側から鍵は開けられると思う。そして、旧校舎側に扉はない。」

「へー、オレ知らなかったなぁ。」

じゅんぺいが言った。知らなかったのなら、なぜ体育館の窓を調べたんだ?と思いながらも、タケルは口を開く。

「その渡り廊下は、旧校舎の3階につながってるからな。旧校舎の3階は、俺たち児童は立ち入り禁止だって先生から言われてるし、知らないのも当然だぜ。」

「なるほどな。」

タケシが言った。タケシも知らなかったようだ。

「じゃあ、ここから入るとして、肝試しのゴールはどうする?」

ヤマトはみんなに聞く。

「…理科室。なんてどうだ?」

タケルが提案する。

「おっ!学園七不思議の動く人体模型じゃん!俺も行こうかな?」

じゅんぺいが言う。

「いやいや、お前の肝試しは、もう終わっただろ?俺たちは、ここで待ってれば良いんだって。」

タケシが言う。

「いいじゃん!いいじゃん!俺たちも、もう一回やろうぜ!」

じゅんぺいは軽い感じで言った。が、タケシは6枚目のニット帽の事もあり、引き気味だった。タケシは、話を変えようとツトムに声をかける。

「なぁ、ツトム、お前はどう…」

そこまで言って、ツトムの表情に気付く。

「ツトム、どうした?」

ツトムは、ある一点を見つめたまま、動かない。表情は引きつっている。みんなもツトムの向いている方向を見る。

「運動場?」

ヤマトが言った。ツトムが見ていたのは、運動場。その端にある登り棒だった。それに気づいたタケルはニヤリと笑うと口を開く。

「あの登り棒のある場所、昔はゴミを焼く焼却炉があったんだって知ってたか?」

「おっ!怖い話か?良いねー。」

「いやいや、肝試しに集中しねぇか?」

「…。」

口々に話しはじめるクラスメイトたちのことは気にも止めずに、タケルはツトムにこう言った。

「なぁ、ツトム。もし見えてるなら気をつけたほうが良いぜ…。」

先程から変わらないツトムの表情と、そのタケルの言葉が組み合わさることによって、場は凍りつく…。タケルは話しはじめる。

「昔、この学校に転校生がやってきた。名前はカシマユウコ。カシマユウコは、友達ができずに、休み時間は、いつもクラスの端にいた。ある昼休み、クラスの1人が、カシマユウコを隠れんぼに誘った…。カシマユウコは、初めて誘われたことに喜んで、隠れんぼに参加した。誰かが鬼になり、カシマユウコは隠れる側になった。誰かが、鬼に見つかるまでは絶対に隠れた場所から出てはいけないとカシマユウコに言った。そして、カシマユウコは、その焼却炉の中に隠れた…。でも、誰もカシマユウコを探さなかった。それは、カシマユウコへの、クラス全体のイタズラだったんだ。誰もが、カシマユウコも気づいてすぐに出てくるだろうと思っていた。でも、出てこなかった。そして、用務員さんが焼却炉に火を入れた…。ギャーッ!という悲鳴が焼却炉の中から聞こえ、用務員さんが慌てて扉を開けると、そこから全身大火傷のカシマユウコが出てきた。カシマユウコは、その火傷が原因で、病院で亡くなったらしい…。」

「こ、こえぇ…。」

じゅんぺいが震えた声で言った。

「まだ、終わりじゃないよ。ねぇ、タケル?」

ヤマトが言った。タケルは、「ああ。」と言って続ける。

「そのあと、すぐに焼却炉は取り壊され、しばらくして登り棒が立った…。そして、登り棒が立った頃から、妙な噂が囁かれるようになったんだ…。」

「噂って?」

タケシが言った。タケルは、答える。

「その噂はこうだ。夜中に夕暮小学校に行くと、運動場の登り棒の辺りに、全身大火傷を負ったカシマユウコの霊が現れる。カシマユウコを絶対に見てはいけない…。もし見てしまったら?それでも、カシマユウコが別の場所を見ていたら、何かが起こる事はないらしい…。でも、カシマユウコと視線を合わせてしまったら……その人は、確実に死ぬ。」

「うわぁーっ!」

タケシは叫ぶ。そして、ツトムの肩を両手でガシッと掴むと、前後に揺さぶる。

「おいツトム!見えてるのか?おいっ!」

ツトムの両目からブワッと涙が溢れる。

「だから、見えてんのか!!」

タケシは、涙には目もくれず、ツトムをさらに揺さぶる。ツトムは、泣きながらコクリとうなずいた。

「でででで、どうなんだよ?まさか、こ、こっち向いてないよな?」

タケシはさらに質問する。ツトムはか細い声でこう答えた。

「…こっちは向いてない……でも」

「でも?」

「…ゆっくり、こっちを振り向こうとしてる…!」

「うわーっ!タケル、ヤマト、じゅんぺい、ツトム、体育館に入るぞっ!急げっ!!」

タケシは、そう叫ぶと我れ先にと平べったい窓から体育館へ入って行った。ツトムとじゅんぺいが、それに続く。

ヤマトがタケルに話しかける。

「タケル、あの話って、確か…。」

「ああ。小1の頃、2人で作った作り話だ…。」

「やっぱり。懐かしいなぁ。サトリを怖がらすために作ったんだよね。」

…タケルは思い出す。サトリ…槇村サトリ。今朝見たあの夢。あれは、3人の思い出だったんだ…。記憶がブワッと呼び起こされる。

「ヒマワリの秘密基地。」

タケルは無意識に口に出していた。

「そう!あの頃は楽しかったよね。…と、その話はまた今度。早く入ろう。」

ヤマトはそう言って、平べったい窓へ向かう。窓へ手をかけたヤマトは、何か思い出したようにタケルを振り向き、

「…でも、ツトムくんには何か見えていたようだったけど…?」

と言った。

「気のせいだろ?柳の枝か、枯れ尾花さ…。」

タケルはそう返した。そして、2人は体育館へと入っていく…。


「…面白い。カシマユウコ…、採用するとしよう…。」

それは、誰の声だったのだろう…?

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