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学校の怪異  作者: qp46
第二章 過去の事故

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七話 転落事故

 雨は止んでいた。


 けれど、空気は重いままだった。


 榎本清人はコンビニの駐車場へ停めた車の中で、スマホ画面を見つめていた。


 ニュースアプリ。


 地域欄。


 


『市内高校で女子生徒転落』


 


 短い見出し。


 けれど、その文字だけで十分だった。


 清人は小さく息を吐く。


 その時だった。


 助手席のドアが開く。


「……待たせた」


 高橋由奈だった。


 教育実習用のスーツ姿。


 けれど昨日より明らかに顔色が悪い。


「いや」


 清人は短く返す。


 由奈は助手席へ座ると、そのまま俯いた。


 車内へ沈黙が落ちる。


 エンジン音だけが小さく響いていた。


「……大丈夫か」


 清人がそう聞くと、由奈は苦笑する。


「大丈夫に見える?」


「見えない」


「だよね」


 由奈は窓の外を見る。


 灰色の空。


 昨夜の雨がまだ道路へ残っている。


「……実習先のクラスの子だった」


 掠れた声だった。


「朝、学校で聞いて……最初、信じられなかった」


 由奈は唇を噛む。


「昨日、自己紹介したばっかりなのに」


 清人は何も言わない。


 由奈は目元を押さえた。


「帰る時も、普通だったんだよ?」


「……」


「なんでこんなことになるの……」


 その声が少し震える。


 清人は静かに前を見る。


 掛ける言葉が見つからなかった。


 その時だった。


 ——ピコン。


 スマホが震える。


 画面を見る。


 


『さくら』


 


 清人は少しだけ表情を動かした。


 通話へ出る。


「もしもし」


『……清人くん』


 さくらの声だった。


 弱々しい。


 泣いた後みたいに掠れている。


「……大丈夫か」


『全然大丈夫じゃないかも』


 小さく笑う。


 その無理した感じが、昔から変わっていなかった。


「由奈から聞いた」


『そっか』


 少し沈黙が落ちる。


『……学校、すごいことになってる』


「らしいな」


『みんな怪異だって騒いでる』


 清人は黙ったまま窓の外を見る。


『ねぇ、清人くん』


 さくらの声が少しだけ低くなる。


『また思い出しちゃった?』


 その瞬間。


 清人の表情がわずかに止まる。


 


 ——十年前。


 


 雨の夜だった。


 地元の古い橋。


 落ちたのは、七歳の女の子だった。


 


 事故だったのか。


 そうじゃなかったのか。


 


 結局、真相は曖昧なまま終わった。


 けれど。


 最後に一緒にいた清人の名前だけが、噂として残った。


 


『……まだ言わないの?』


 さくらが静かに聞く。


 清人は目を閉じる。


「……言ったところで変わらない」


『でも、清人くん犯人じゃないのに』


 さくらは小さく笑った。


 けれど、その笑い方はどこか冷たかった。


『人って、怖い話好きだよね』


 ——ピッ。


 通話が切れる。


 車内へ沈黙が落ちた。


 由奈が静かに清人を見る。


「……どうしたの?」


「別に」


「さっきから、なんか変」


 清人は答えない。


 窓の外を見る。


 濡れたアスファルト。


 灰色の空。


 その景色の奥に。


 十年前の橋が、今でも焼き付いて離れなかった。

読んでいただきありがとうございます。


学校の怪異は、ここから少しずつ“怪異”と“人間”の両方へ踏み込んでいきます。


他にも、


・AIと異世界で戦う作品

・平成ギャル転生

・バトルロワイヤル

・短編3作品


なども投稿していますので、気になった方はぜひ作者ページから読んでみてください。

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