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学校の怪異  作者: qp46
第二章 過去の事故

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五話 見てしまったもの

 隣のクラスが、やけに騒がしかった。


「うわ、絶対かわいいって」


「いやマジで美人らしい」


「教育実習生だろ?」


「しかも若いって聞いた」


 放課後。


 教室でノートを片付けながら、綾人はうるさそうに隣を見た。


 三年二組。


 佐野さくらのクラスだ。


「……元気だな」


 苦笑混じりに呟く。


 どうやら今日から来た教育実習生の話題らしい。


 廊下には様子を見に行く男子までいる。


「綾人、見に行かねぇの?」


 同じ部活の男子が笑いながら声を掛けてきた。


「興味ない」


「嘘つけって」


「いやマジで」


 適当に返しながら鞄を持つ。


 今日は部活の日だった。


 綾人は軽音部の機材庫へ向かった。


 


     ◇


 


 気づけば、外はかなり暗くなっていた。


「やっば……」


 綾人はスマホの時間を見て顔をしかめる。


 居残り練習に集中しすぎた。


 他の部員は先に帰っている。


 音楽室の窓へ目を向けると、雨粒がガラスを叩いていた。


 六月特有の重たい雨。


 夕方なのに、外はもう夜みたいに暗い。


「最悪……」


 綾人はケースを肩へ掛け、音楽室を出た。


 校舎は静まり返っている。


 遠くで雨音だけが響いていた。


 誰もいない廊下を歩く。


 その時だった。


 ——ガタン。


 どこかで音がした。


 綾人は足を止める。


 上の階。


 四階の方だった。


「……は?」


 思わず階段を見上げる。


 四階。


 その言葉が頭に浮かんだ瞬間、昼間クラスで聞いた怪談が脳裏をよぎった。


 白い女。


 夜の校舎。


 四階の空き教室。


「……いやいや」


 綾人は苦笑する。


 ただの噂だ。


 そう思いながらも、なんとなく落ち着かなかった。


 ——ガタン!


 また音が響く。


「うわっ……」


 静かな校舎だからこそ、音がやけに大きく聞こえる。


 しかも場所が悪い。


 四階。


 噂の空き教室がある場所だった。


「いや……普通に怖ぇんだけど」


 綾人は苦笑しながら足早に昇降口へ向かった。


 もう関わりたくなかった。


 気味が悪すぎる。


 


     ◇


 


 外へ出る。


 雨はさらに強くなっていた。


 綾人は傘を開きながら、小走りで校門へ向かう。


 その時だった。


 ふと。


 視線が校舎へ向く。


 四階。


 東側の端。


 噂の空き教室。


「……っ」


 窓際に、白いものが見えた。


 綾人は思わず立ち止まる。


 白い人影。


 長い髪にも見える。


 けれど、妙に輪郭がぼやけていた。


 窓に白い膜みたいなものが貼り付いているようにも見える。


 雨のせいで、視界が滲んでいた。


「……なんだ、あれ」


 しかも。


 その白い影の横に、もう一つ別の影がある。


 暗くて形は分からない。


 ただ、雨の中で揺れていた。


 傘みたいにも見える。


 けれど、白い光に照らされるたび、人の形が歪んで見えた。


 まるで別の何かみたいに。


 その時だった。


 窓際の白い影が、ゆっくり前へ動いた。


「……え?」


 誰か近づいてる?


 そう見えた直後。


 ふっと、白い女が消える。


 まるで光だけが切れたみたいに。


「っ……」


 綾人の背筋が冷えた。


 次の瞬間。


 窓が白く光った。


「うわっ!?」


 雷——。


 そう思った。


 けれど、一瞬だけ違和感があった。


 窓の内側から光ったように見えたのだ。


「……なんだよ、今の」


 喉が引きつる。


 四階。


 白い女。


 呼吸音。


 昼間聞いた怪談が頭から離れなかった。


 もう嫌だった。


 これ以上見たくない。


 綾人は視線を逸らす。


 そして、そのまま逃げるように学校を後にした。

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