お仕事見学 「スペースコロニーができるまで」その1
お仕事見学 「スペースコロニーができるまで その1」
僕らは今、宇宙港の搭乗デッキに居る。
なぜかって、今日は社会見学の一環でお仕事見学の日だからだ。
デッキの窓の外を眺めると、そこにはもう宇宙が広がっている。
となりのリズを見ると、うっとりと外に広がる宇宙を眺めている。
普段は天井を仰ぎ見るときに見ている宇宙が、今は目の前に広がっているんだ。
そりゃ感動するよな。
宇宙港があるエリアは居住エリアと違い完全な無重力環境だ。
そのため体がフワフワ浮いて安定しないので、専用の靴についたフックを床の金具にひっかけて体を安定させる。
ひっかけそこねてデッキの中をすっとんでいく生徒も少なくないけど、こいつらはきっと無重力遊泳の授業サボってたんだろう。
宇宙遊泳はスペースデブリがぶつかってきて危険なので普通ありえないけど、スペースコロニー内や航宙船の中など無重力の中を移動することは少なくないので無重力状態で移動する訓練や専用靴の使い方も体育の授業の中で組み込まれているから、普通はそこである程度慣れるものなんだから。
無重力だと慣性が働いて動き続けるので油断すると何かにぶつかって大怪我をしたりすることもあり得る。
宇宙港では小さな子供も利用するわけでそういう危険性を考えて角ばった部分は徹底的に排除すると同時に、分厚いパッドで覆われているし、壁や床、天井の素材もそれぞれ衝撃を緩和する構造になっていて多少ぶつかっても大怪我はしない様工夫されているからまぁ大きな怪我にはならないだろう。
やがて、集合時間になり生徒が一列に並ぶと客室乗務員とパイロットの紹介の後、おきまりの先生の注意などのお話が始まった。
大半は日頃から言われていることと変わらないのでそこはスルーしておく。
というか生徒の大半はみんな手元のパンフレットが気になってしょうがないらしく、先生の話なんてほとんど聞いちゃいない。
なぜなら今日のお仕事見学のはなんと、スペースコロニーの建造現場だから。
しかも、みんなでお泊まりあり!
楽しみにしないわけがない!
搭乗時刻になり、順番にデッキと航宙船を結ぶブリッジの中をフワフワ浮かびながら航宙船へと移動していく。
無重力遊泳が苦手な人でも、手すりのハンドルを握ってボタンを押せばあとは引っ張ってくれるので安心だ。
航宙船の中に入ると、それぞれ自分の席を探して移動していく。
席は班ごとに割り当てられてはいるけれど貸切なので後で席の移動も自由らしい。
僕の席は11-Aだ。
ラッキーなことにちょうど窓側だ。
ちなみにリズはすぐ隣の11-B。
席にたどり着くと靴のフックを床の金具にひっかけて腰をシートにおろす。
これだけだと気をぬくと腰が上がってしまうのでシートベルトを締めて体を固定する。
そしてうまく席に座れないリズの手を引いてシートに座らせる。
全員が揃うと客室乗務員から船内設備や緊急時の注意事項の説明が始まった。
船内ネットワークと座席ごとのデバイスの充電ソケットを使うことで自分のデバイスを利用することができる。
前面のタッチパネルでシートの各凹凸部分の膨らみ具合を変えて体に合わせたり、船内放送を楽しんだり、飲み物のオーダーを行ったりすることができる。
また、船内放送を自分のヘッドフォンで聴きたい人向けのヘッドフォン端子も付いているので音にこだわりのある人も安心だ。
緊急時には酸素マスクや、肩から胸までを覆う非常用のセーフティーバーがシートから出てきて体を安定させてくれる。
これはちょうどジェットコースターで体を押さえるときに使うバーみたいなものだ。
緊急脱出が必要になった場合は、所定の場所で救命ポッドに乗り込んで宇宙へと射出される。
救命ポッドは様々な大きさや種類があるけれど、この航宙船に搭載されているのは2機、大人が三日間生存できるだけの水や食料、酸素を備えている。
救命ポッドは宇宙に射出されると周囲にクッションとシールドを展開して小さなスペースデブリに耐える様に作られている。
また射出と同時に救助信号を発信し続ける様になっているので、あとはひたすら救助を待つというわけだ。
パイロットおよび客室乗務員は全員が航宙船内において安全と秩序を維持する範囲に限定して警察権も行使できるため、目に余る迷惑行為を行うと逮捕されることもあるらしい。
ちなみに客室乗務員のうちロングヘアの美人のお姉さんは格闘技の元プロらしく、悪ふざけをしたヤンチャ組がのきなみ関節を決められて涙目になっていたのにはみんな大笑いだった。
宇宙港を離れてしばらくするとポォオンという音の後でパイロットの声で、小規模な微小スペースデブリ群の中を突っ切るので少し揺れるという説明が流れた。
それを合図に客室乗務員が生徒たちをシートに戻らせてシートベルトを装着させる。
全員のシートベルトがしっかり装着されているかを確認し客室乗務員がそれぞれのシートに戻ろうとした時、船がグラっとゆれて、客室乗務員の一人がシートに座り損ねてしまった。
しかし見事な受け身の後で船内の凸凹を掴んですぐさま姿勢を整え、自分のシートへ軽くジャンプ、シートのハンドルを掴んで体を引き寄せあっさりとシートに着席を決めて見せた。
その間、ほんの数秒。。
さすがはプロ!
ちなみに、客室乗務員が船内をとんでいる時に下着がチラリってラッキースケべな展開を期待した人には悪いが、女性の客室乗務員はスカートを履くことはないのでそういう邪な願望は宇宙に捨てておこうね。
航宙船はこういうスペースデブリの中を進むことも前提で設計されているので、その装甲はかなり頑丈に作られている。
また装甲で耐えきれない規模のデブリの直撃を免れられない場合は、破砕砲が搭載されている場合はそれでデブリを砕くこともある。
これは新たにより微細なスペースデブリを増やしてしまうため本当にどうしようもない時のみ使用を許可されているもので、使用すると会社的にもそれなりにいろいろ面倒が生じることからパイロットは使用状況に関する詳細な報告書を何枚も提出しないといけないという。
また破砕砲を使用すると、自動的にその位置や対象デブリの大きさなど様々な情報が信号として自動的に航宙船から発信され、周囲の基点ブイなどを経由して他の航宙船やスペースコロニーへ警告を促す様になっている。
そのため破砕砲を使用したことをごまかすことはまずできない。
そんなわけで、破砕砲を使用したのに使用してないなどと嘘をつくと良くて社内規定罰則に照らし合わせて処分、最悪警備官に逮捕されることもあり得るらしい。
やがて無事に微小スペースデブリ群の中を抜け、警告も解除された。
さっきまで怯えた生徒たちもようやく安堵した様だが、中にはまだ先ほどの余韻で泣きじゃくっている生徒もみられる。
船内に静かな、なんとなく心安らぐ落ち着いた音楽が流れ出す
そして客室乗務員が飲み物と甘いものを配り始めた。
揺れの余韻でまだ怖がって泣いている女生徒に優しく声をかけ、飲み物を渡して声をかけている。
女生徒は飲み物を受け取るとごくごくっと一飲みして甘いものを一口かじると、満面の笑みを浮かべた。
後で聞いた話だけど、本来はこのタイミングで飲み物などを出す予定はなかったらしい。
あのタイミングであのアクション、あの気遣い。
プロはやっぱりすごいな、と思った。
ぽぉおん、と音がなってまもなく目的地に到着するという案内が流れた。
さぁ、楽しい楽しいお仕事見学の開始だ!
ちょっと間が空きましたが、マイペースで更新していきます。
妄想ベースなので物理原則やその道の詳しい人たちから見ると、んなわけねーじゃん!ってツッコみたくなる部分がメチャクチャ多いと思います。
楽しけりゃいいってノリなのであまり考証せず書いてますけど、そーじゃなくてこーだ!って指摘は歓迎です。
ストーリーや世界観さえ破綻しなければ、さりげなく取り入れてしれっと書き直してるかもしれませんw




