宇宙(そら)の花火
地球には、花火というものがあるという。
かつて地球で暮らしていたカズヤによれば、お祭りや行事などのクライマックスになると夜空に打ち上げて楽しむものだという。
火薬の入った玉をこれまた火薬で打ち上げると様々な形で広がって、まるで火でできた花の様に見えることからそう呼ばれる様になったと聞いた。
スペースコロニーでは、その密閉空間の性格上、花火なんて打ち上げたりなんかしたらすぐに警備官に捕まってしまうだろう。
だから花火なんてものはどこにも売られていない。
せいぜい、ライブラリにある地球の動画を見てああ、こういうものなんだ、と理解する程度だ。
しかし所詮は画面上のただの情報。
カズヤのいう空いっぱいに広がる本物の花火の壮大さを考えると物足りないばかりだ。
カズヤの語り口もなかなか軽妙で、周りの人がみんなカズヤの話に夢中になっている。
その中で地球に行きたい気持ちが強くなったのか、リズも今まで以上に目を輝かせてカズヤの話を聞いている。
「花火、かぁ・・・」
そう呟いて天井を見上げるけれど、そこにはいつもの宇宙が広がっているだけだった。
「通達
本期の工期終了に伴い、各社が保有する、残存廃棄デブリについて
以下の期日にて指定中域において一斉焼却処分とする。
今回の焼却作業について、警備菅本局より特別に専用高出力レーザー砲を借用し、処理に当てるものである。
各社担当は指定期日までに所定の場所へぞれぞれの所有する、残存廃棄デブリを移送し固定するものとする。」
宇宙においてもっとも危険なものの一つがスペースデブリである。
小さなコイン程度のデブリが大事故を引きお起こしたという様な記録がかずおおく残っており、古くからその危険性が指摘されてきた。
当初は広大な宇宙なのだから問題ないだろうと楽観視していた人類だったが、その後地球の周りの衛星軌道上にとどまるデブリがの数が予想以上に増え、ほぼ地球を覆うほどになていた。
そのため地球と宇宙を行き来する単独大気圏対応型の航宙船の航行には常に大きな危険が伴い、人々が宇宙で暮らす現在においてもその事故はさほど減っていない。
そういう背景から、現在は可能な限り廃棄物によるデブリを極力出さない様に、またどうしても出る場合は各業者が責任を持って保管・管理を行い、処分することが定められている。
そして工期終了までに処分できなかった廃棄デブリは、会社の垣根を超えてひとまとめにして各社のレーザー焼却装置を集めて焼却処分することが通例となっている。
その量が多い会社がそのための費用などの負担の大半を負う必要があるのは言うまでもない。
処理が行われる時には事前に各所へ通達され、その周辺宙域は作業完了まで関係者以外の対入りが禁止される。
今回も例に漏れず、焼却処分に伴う注意としてその期間と立ち入り禁止宙域の範囲が公示され学校の掲示板にも情報が掲示された。
これだ!
僕はいそいでリズの叔父さん、エミリオに連絡を取りレンタルの小型民間航宙船でのドライブに連れて行って欲しいとお願いした。
休みでせっかく仕事忘れてたのにとかなんとかゴネてたエミリオだったが、リズの本物の林檎を使った手作りのアップルパイの残りを分けることで折れてくれた。
「よし、点検終了・
総員指定の位置まで退避!
時間がないぞ、随行の警備官に怒られない様にキビキビやれよ!」
今期の焼却処分処理を担当するらしい男性が緊張した声で怒鳴り立てる。
今回は普段よりも廃棄デブリの量が多く、一般企業の所有するレーザー焼却期の出力では完全に焼却ができない。
そこで桁違いの出力を誇る警備官の装備品である高出力レーザーを特例として借りてきた次第である。
その分影響範囲も広いため、いつもよりも大きく距離をとって保護外殻を増設した局地作業用航宙船の中から操作を行う。
「レーザー照射カウントダウン30、29、28・・・・・・4、3、2、1、
照射!」
まばゆい閃光とともに廃棄デブリを収容したストッカーがまばゆい光を放つ。
そして2射目は照射範囲を広めにして出力を上げ、散らばった細かな破片や粉塵を焼却し蒸発させる。
高出力高温のレーザを受けて燃え上がり、散りながら次々蒸発していく廃棄デブリ。
「うわぁ、きれい・・・・・まるで花みたい・・・・」
リズのその一言を聞いた僕は、小さくエミリオとガッツポーズをとった。
宇宙に輝く「花火」は僕らの忘れられない思い出の一つになった。
妄想ベースなので物理原則やその道の詳しい人たちから見ると、んなわけねーじゃん!ってツッコみたくなる部分がメチャクチャ多いと思います。
楽しけりゃいいってノリなのであまり考証せず書いてますけど、そーじゃなくてこーだ!って指摘は歓迎です。
ストーリーや世界観さえ破綻しなければ、さりげなく取り入れてしれっと書き直してるかもしれませんw




