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贖罪  作者: 北村 達也
85/320

贖罪85

「地上では不幸などのマイナスエネルギーと幸せなどのプラスエネルギーが常にぶつかり合ってる。

地獄で生み出されるマイナスエネルギーは地上に上がっていき、

天国で生み出されるプラスエネルギーは地上に下りていき、酸素のように地上に広がる。

プラスエネルギーを取り込んだ人間は良いことがしたくなり、マイナスエネルギーではその逆となる。

プラスはプラスを引き寄せて、マイナスはマイナスを引き寄せるから、善人の集いに悪人はおらず、

悪人の集いに善人はいない。良いことをされると人間は良い気分になり、他の人に良いことをしたくなる。

逆もまた然り。良い行いも悪い行いも連鎖していくから、

プラスの連鎖を減らしてマイナスの連鎖を増やすことが大切だ。

マイナスとプラスの戦い、地獄と天国の戦い。それが地上では行われていて、

地上は天国と地獄の戦場で、我々の目的は地上をマイナスエネルギーですっぽりと覆ってしまうことだ。

だが如何せん神の力は強く、人間は神を信仰し、愛を大切にしている。

その結果、地上ではプラスエネルギーが大勢を占めているが、人間というものは文明が豊かになればなるほど、

心は貧しくなるようで、昔は助け合いの精神を持っていたのに、

喜ばしいことに今では自分だけ良ければ良いという人間が増えてきて、マイナスエネルギーは増えつつある。

良い傾向で、世界は確実に良くなってる。悪を奨励して、不幸を推進することで、

太陽が月によって覆われて黒くなる日食のような世界を実現することが我々悪魔の悲願だ。

悪を奨励して黒を濃くして、不幸を推進して幸せを奪い取り、白を黒へとするということだね。

地獄労働について振り返ってみよう。今でこそ契約の取り消しの時にしか出来ないけど、

昔はそうじゃなかった。今から大体1000年くらい前に地上に恐ろしい奴が登場した。」


「奴のことですね。」


「そう。当然知ってると思うから軽く触れるだけにする。神が送り込んだあの男の登場で世界はおかしくなった。

人を愛するように仕向けた、とんでもない奴だ。先祖は奴を三度に渡って誘惑したが、奴には効かなかった。

悪魔の誘惑を断る恐るべき奴だ。しかし、もっと恐るべきは神だ。

自分の子を十字架にかけて人間たちの罪を贖わせようとした。けど、知っての通り上手くいかず、

奴は十字架の上で死んだ。そう、死んだはずだったのに奴は復活を遂げた。

その後弟子たちが奴の教えを広げ始めた。

人間がよく愛するようになるということはプラスエネルギーが強くなるということだ。

長い間、地獄にとって苦しい時代が続いた。

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