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贖罪  作者: 北村 達也
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贖罪84

「僕は変わっていてね。老婆心みたいなものさ。君に関する書類に目を通した。契約数以外は優秀なようだね。学校は成績優秀で卒業をして、頭が随分いいようだ。そして人間嫌いが顕著で素晴らしい。子供の頃に人を殺しているという経歴が素晴らしい。能力に関して僕との差はないだろう。それでも君に契約が取れないのも無理はないと思ったよ。」


「なぜです?能力に差がないって仰ったじゃないですか。」

契約が取れないことは厳然たる事実であっても、それを面と向かって言われるのは腹が立った。


「見た目と話し方がなってない。」


「それ…だけですか?」


「そう。それだけ。」


「そんなところ、いちいち気にするでしょうか?」


「味が全く同じでもね、きちんと皿に乗っけて静かに相手の前に置いて『どうぞお召し上がりください。』と言うのと、ぐちゃぐちゃに乗っけて放り投げるように置いて『食べな。』と言うのとでは、雲泥の差がある。君が相談をしに来た時、後日、君の了解をもらって僕は姿を消して君の仕事に同行しただろう?見ていてすぐに思ったんだけど、人間に対して偉そうなんだ。あれは駄目だよ。」


「だってあいつらはバカな人間じゃないですか。犬みたいなもんです。犬に餌をあげるのに、『さあ、どうぞ。』とは言わないでしょう。」


「分かっていないね。彼らはお客さんじゃないか。我々と契約を結んでもらうお客さんだ。」


「…。」

確かにその通りだとは思ったが、『分かっていないね』という言葉が気に入らなかったので黙っていた。


 エビールはマリスが不服であることが見て取れたので、少し話題を変えてみようと思った。


「マリス君。少し仕事や悪魔のこと、そしてこれまでのこの世界のこと等をおさらいしてみよう。悪魔には大きく二つの道があるね。地上に出て人間を相手にするか、地獄において役所で働くかだ。細かく見れば他にも色々とあるけど、大体はこの二つだ。成績が優秀なら役所で働くことが多いけど、大体は地上に出て行く。

地上に出ると人間を相手にする訳だけど、これも二つある。

一つは悪の奨励、もう一つは不幸の推進だ。悪の奨励とは、人間が神に頼めないようなこと、

つまり誰かを殺したいとか、そういった歪んだ願いを叶えてやることだ。

不幸の推進は、悪の奨励とは反対に、神が叶えるような願い、

大切な誰かを助けたいといった愛から発出する願いを叶える、フリをする。

実際には叶えたりしない。そりゃあそうだよね。我々が人間の幸せのために何かする訳ないから。

得られると思っていたものが得られないとき、人は落胆する。不幸になる。

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