贖罪72
「ああ。こんなことになってしまって本当にすまない。君といたい一心から大変なことをしてしまった。」
ボロボロと涙を流し、膝から崩れ落ちた。
「分かっているわ。会いたいのは私も全く同じ気持ちだったもの。一緒になれるならどんな犠牲も厭わないと思ったけど、でも、まさかこんな姿になるなんて!」
骸骨となったフォスも手を顔で覆って座り込んだ。
「彼女を元の状態に戻せ!」
マリスを睨みつけて大声で言った。
「契約ですからそれはできません。天国に送り返すということであれば、再契約するか、
契約そのものの取り消しが必要です。再契約の場合は大切な人の命、
と言っても奥様の命を差し出して奥様を助けるというのはへんてこな話になりますから、
他の大切な人の命を差し出してもらいます。適当に誰かの命を差し出さないことをお勧めします。
嘘をつけば、やましい心に反応してあなたは死にます。そしてご自分の命もダメです。
さて、あなたの場合はそういう方はいないですね?」
ストローフィーは頷いた。
「よろしい。そうすると契約の取り消しということになります。」
「よろしいんですか?取り消す、ということは無かったことにする訳ですから、
奥様は天国に戻って、また離れ離れですよ?」
「彼女が悲しんでいるだろう。彼女の不幸は僕の不幸だ。
こんなのは僕の望んでいることじゃない。
彼女に会いたくて仕方なかったが、こんなことになるのなら彼女を天国に戻して、僕は地上で独りで生きていく。」
「契約を取り消さないで、あなただけでも地上に戻ることも可能ですよ?
奥様はこのままの姿でここに残ることになりますが。地上に戻ってまた新たな人を見つけたらどうです?
骸骨以外の。フフフ」
「彼女をこのままにして僕だけ戻る?見くびるな!」
人間は天邪鬼な生き物だから、マリスが望むものとは逆のものをあえて提示することで、契約のキャンセルをさせることが狙いだった。
馬鹿にしたような言い方や笑いも彼の怒りを誘うためであり、そうすることで益々マリスが提案したものに反発することを期待していた。
先ほどから彼を注意深く観察していたマリスは、彼が予想通りの反応を示していることに満足を覚えた。
「そうですか。承知いたしました。契約を取り消して彼女に再び肉を与え、天国に戻すことは可能です。でも、そのためには…」
ゆっくりと腕を上げて彼を指差した。
「なんだ?」
「あなたの協力が必要です。」
「僕の?愛するフォスのためなら何だってするさ。」
「何でも、ですか?」
「その通りだ。」
「それは心強い! その言葉を忘れないでください。それではその方法をお伝えしましょう!
あなたにはこの地獄で働いて頂きます!」




