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贖罪  作者: 北村 達也
62/320

贖罪62

 この世界では毎日たくさんの命が生まれては、消えていく。


 そして狭間には無数の魂が集まってくるが、人間だけでなく、

生きとし生けるもの全てであるから、ひっきりなしに来る魂で混雑していて、

そこで働く「スタッフ」たちも日々忙しくしている。


 肉体から魂が抜けると本来の人格(本人格と称する)は休止して、狭間で円滑に行動するために、元から魂に付与されていた仮人格が働きだす。


 一か所に集まった魂は「別れの道」で人間と動植物で進む道が分かれる。


 基本的には仮人格はどちらに進むべきか判断できるが、ときどき間違える魂がいるので、狭間の入り口に配置されたスタッフが魂に対して道の振り分けを行っている。



 スタッフはやってきた魂に対して生涯を終えたことに対する労いの言葉をかける。


「みなさん、おつかれさまでした。人間だった方はこちらへ。」

 

 そう言ってスタッフから見て右にあるアーチを描いた門「ヒトの門」を指し示す。


 この際にはヒトの言葉で話す。


 英語もフランス語もドイツ語も日本語もない。


 ヒトの言葉で喋れば人間には理解される。


「動植物だった方はこちらへ。」


 次に左にある同じ形の門「ドウショクブツの門」を指し示して言う。


 人間にヒトの言葉を使ったように、動植物にはドウショクブツの言葉で話す。


 これも全ての動植物に共通して通用する。


 あとは状況に応じて適宜指示を出す。


「はいはい、押さないでください。」


「列からはみ出さないでください。」


「そこ、ケンカしないでください。」

こういった具合だ。


 スタッフは笛を首から下げているので、それを使って指示を出す。

 

 仮人格になっても本人格のクセや性格が魂に染みついていて、おっちょこちょいな魂や神経質な魂など色々いる。


 魂は人も動植物も見た目は同じなので、一見すると分からないが、猫だった魂はニャーというし、犬ならワンという。


 顔を洗う習性のあった猫は手を使って今はない顔を洗おうと試みるも、毛で覆われた顔がなくて戸惑う。


 魂に足はなく浮遊している状態のため、犬であれば後ろ脚で耳をかいていたことが染みついていて、掻こうと試みるものの肝心の足がなくて戸惑う。


 仮に本人格のまま狭間に来るとすると、各々が生前の習性や性格を思う存分に出して現場は大混乱となること必至であるから、安寧をもたらすために仮人格が必要となるわけである。

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