贖罪49
ストローフィーの職業が靴屋だと聞いてもジョセフは反論せず、娘がストローフィーについて嬉しそうに話すのを黙って聞いていた。
人の話を聞くことは以前のジョセフはしなかった。
人は誰しも自分の話をしたがる生き物であるから、自分の耳を傾けて相手の話を聞くという行為は愛がなければできないことだった。
嬉しそうな娘を見るのは彼の喜びだった。
『どうして俺はこの子の話をもっと聞いてやらなかったんだろう。俺は大馬鹿だ!』
彼は悔やんでも悔やみきれなかった。
「幸せか、フォス?」
彼女が話し終わると彼は聞いた。
「ええ、とっても。」
「そうか。なら俺も幸せだ。ストローフィーと幸せになるんだぞ。」
「うん。ありがとう。ところで気になってたんだけど、パパがお花を飾るなんてどうしたの?嫌いだったでしょう?」
彼女は窓際にあった花を見て言った。
「ピオニーやお前がそれを好きだったからな。
ピオニーはもういなくなって、お前もいなくなってしまったが、お前は生きていた。
花を飾っているとお前が近くにいてくれる気がしてな。
「いなくなってごめんなさい、パパ。私はここにいるわ。」
「ああ、そうだ。神様が俺たちを会わせてくださったに違いない。」
「そうね。」
「家、見たかい?」
「ええ。」
「俺は家にあった噴水が好きでな。あれには随分と金をかけたもんだ。」
「すごく豪華な噴水だったわね。」
「ああ、だが金が止まれば水も止まった。」
ジョセフはまた血を吐いた。
目の動きがおかしくなり、呼吸も荒くなった。
意識を保つのに彼は苦労していた。
「パパ?苦しいなら話さなくていいわ!」
「大丈夫だ。金が止まったら噴水の水も止まった。
だが、愛は?愛は尽きなかった。お前への愛の泉は枯れることなく湧き続けた。
最後に残ったのはお前への愛、それだけだった。お前が…正しかった…フォス。」
そう言うと彼は意識を失った。
急いで医者が呼ばれ診察してもらうと、非常に危険な状態で2、3日どころか今日も持たないかもしれないということだった。
深夜近くになり彼は目を覚ました。部屋にいるのはフォス、医者、それに看護師だった。
「そろそろお別れの時が来たようだな。」
「パパ、そんなこと言わないで。」
「フォス、お前はもう大丈夫だ。ストローフィーと幸せになれ。俺は向こうに行ってピオニーに謝ってくる。お前は…。」
ジョセフはフォスに向けていた目を急に彼女の後ろに向けて、大きく目を見開いて体や歯がガタガタと震え始めた。




