贖罪48
彼の体が少しでも楽になるようにと医者は薬を調合してくれて、世話をしてくれる看護師をつけてくれた。
「何から何まで悪いな、世話になったよ。今までありがとう。」
ジョセフから未だかつて感謝された記憶がなかった医者は耳を疑った。
表情には以前のような厳しさはなくなっていて、穏やかだった。
『こんな表情ができるのもきっとお嬢様のお陰だろう。われわれ医者にできることなんて、そう多くない。』
医者は思った。
「ジョセフさん、私はこれで一旦帰ります。」
医者はジョセフの手を自分の両手に収めて言い、部屋から出て行った。
来た時と同じようにラルフが町の外まで見送りに行った。
医者が帰るとジョセフは疲れた様子を見せた。
「フォス、少し寝ていいかい?」
「もちろんよ、パパ。」
そして彼は目を閉じて眠りに入った。
彼は夢を見た。
お金と椅子以外に何もない部屋にいて、彼がこれまでに稼いできたお金の山を椅子に座って
嬉しそうに眺めていたら、いきなりその山が崩れてきて彼を覆いつくした。
大量のお金は彼を圧迫して身動きができなくなって死を覚悟していると、
彼の腕は何かに引っ張られてそこから出ることが出来た。
見るとそれはフォスであり、その背中には羽根が生えていた。
彼はお金から解放されたことに涙を流して喜んだ。
彼が目を覚ますともう夜になっていた。
手で拭うまでもなく、涙が頬をつたっているのが分かった。
娘に会えたのは夢ではなかったかと彼は恐ろしくなった。
首を動かすのも痛かったが何とか横にすると、そこには椅子に座って眠っている娘がいた。
『夢じゃなかった!本当に娘が帰ってきたんだ!フォス、光か。
全く素晴らしい名前をピオニーはつけたもんだ!全くその通りじゃないか。俺の、俺たちの光、フォス!』
彼は夢の続きのように涙を流して泣いた。
それに気づいたフォスは目を覚ました。
「パパ、どこか痛むの?」
「いや、そうじゃない。お前にまた会えたのが嬉しいんだ。」
「パパ…。」
「二年会ってないうちに、また一段と美しくなったなお前は。
若かった頃の母さんにそっくりだよ。その美しさを俺は知っている。お前、いい人に出会ったようだな。」
「よく分かるわね、パパ!」
「ああ、女ってのは不思議な生き物だ。ピオニーもそうだった。
元から美しかったあいつは、ある時説明のしようがない程、更に美しくなった。
何があったんだと俺が聞くと、あいつは『女は人を好きになると魔法にかかるのよ』と言った。
さしずめ、お前も魔法にかかっているんだろう。いい男か?」
「ええ、とても優しいの。彼はね…。」
そう言って彼女は彼との馴れ初めを話した。




