贖罪47
「それとピーターか。あいつが連れてきてくれたってことは、もうここで怯えることはないな。あいつは昔から知ってる。あいつも、ここにいるのか?」
「ああ。」
扉の外にいたピーターは中に入って言った。
ピーターとジョセフはしばらく睨め合うように見合っていたが、やがて二人とも笑みを浮かべた。
彼らには同じ町の出身という以上の関係があるようにフォスには感じられた。
「ありがとうよ、ピーター。」
「ああ、気にするな。」
父は急に咳き込んで血を吐いた。フォスはそれを見て凍り付いた。
「気にするなフォス。もう俺はあっちへ行くことは決まってる。」
「でも、私、お医者さんを呼んでくるわ!」
そう言って彼女は部屋から出て行った。
彼女のそんな姿を彼は暖かく見守った。
彼女はラルフに頼んで医者に来てもらうように言い、彼はすぐにその場からいなくなった。
ジョセフの体のことは自分が一番よく知っていた。いまさら彼に施す治療はなかった。
唯一、彼をわずかに延命する治療があるとすればそれは娘の存在だった。
『神様、お願いです。私にもう少し時間をください。やっと会えた娘との時間をもう少しだけ…!』
やがてラルフが医者を連れて戻ってきた。
その医者はフォスの母ピオニーを診ていた医者で、彼らの家とは長年の付き合いがあり、
死に瀕した患者がジョセフということもあって、無料で見てくれることになった。
ジョセフの窮状を聞いてはいたが、部屋に入って彼を見た医者はあまりの転落ぶりに彼にかける言葉が見つからなかった。
「やあ、あんたか。今日は色んな顔が見れて嬉しいよ。」
ジョセフは言った。
何か言うべきかとも医者は思ったが、彼は患者を診に来た医者だった。
彼がすべきことは会話ではなく、患者を診ることだ。
ジョセフのいるベッドまで歩いていき、鞄から聴診器を取り出して、胸に当ててジョセフに息を吐いたり吸ったりの指示を出した。
診察中の医者の表情は極めて厳しいものであることにフォスは気づいた。
診察を終えて医者がフォスを連れて外に行こうとするとジョセフが呼び止めた。
「おいおい、気にするなよ。もう自分には余命幾ばくも無いことくらい分かってる。
ここで話してくれ。ややこしい話は抜きで、結論を伝えてくれ。」
医者がフォスを見ると、彼女は頷いた。
「わかりました。ジョセフさん、単刀直入に申しまして、残念ながらあなたは持ってあと2,3日の命でしょう。」
「2,3日…。」
フォスは大きなショックを受けた。
やっと再会できて、これからと思っていたのにこんな形になってしまうのが辛かった。
ジョセフはそんな彼女の姿を見て慰めるように言った。
「気にするなと言ったろ、フォス。俺には分かっていた。そろそろこのゲームを終わらせる時間が来たってことだ。」




