贖罪34
二人の顔はパッと離れて扉の方を見た。
10秒ほどしてまたノックがあり、その5秒後にもまたあった。
どうやらこの突然の訪問者はせっかちな性格をしているようだ。
やがて声がした。
「フォス。フォス。あたしよ。アゼリア。」
それは彼にフォスの不調を教えてくれた、彼女と一緒に働く糸紬の女性だった。
彼との大切な時間を邪魔されたことを不快に感じつつ、
アゼリアもフォスのことを心配して来てくれたのかもしれないと思ったし、
彼女ならドアを開けかねないという恐れもあったので、
彼女は彼に巻き付けていた腕を離し、彼もそれに合わせて腕を彼女から離したが、
彼女が本当に大丈夫か不安だったので不安定な瓶を置くようにゆっくりと行った。
『出ないと。』
そう彼女は目で告げて扉を指さして、彼は頷いた。
彼女は少し乱れたネグリジェをさっと手で直し、
髪もさっと手で直してから、彼が見えないように扉を少しだけ開けた。
「フォスちゃん、大丈夫?まあ、あなた顔が真っ赤よ。随分と熱があるみたいね。」
「え?本当に?」
彼女の顔が赤いのは単に熱があるからだけではなかったから、
それを指摘されたフォスは恥ずかしくなって手で顔を隠した。
「あなた寝込んでるって聞いたから心配して来たのよ。私は今日休みだったんだけど、
あなたが言づてを頼んだ人に道でばったり会ってね。ほら、リンゴ買ってきたよ。お食べ。」
そう言ってリンゴを差し出して、彼女に構わず家の中に入ってきた。
そしてアゼリアが入ってくるとは思っていなかったストローフィーがいることに気が付いて足を止めた。
「あら?」
先ほどまで働いていたはずのストローフィーが、どうしているのか彼女は不思議だった。
「ストローフィーじゃない。あなた、なんでここに?」
「え?あの…。」
急に聞かれて戸惑って何もいい答えが出てこなかったが、ここでもフォスが助けてくれた。
「ストローフィーは、私が修理をお願いしていた靴を持ってきてくれたの。
ずっと置きっぱなしだったから、しびれを切らしたみたいで。ね、ストローフィー。」
彼女はアゼリアの肩越しに彼にウインクした。
「え?ええ、そうなんです。いつまでも置いてあるものだから、
靴を大切にする僕からしたら許せなくって。僕の靴好きはご存じでしょう?アゼリア。」
「そうね。一度あなたが靴に話しかけてるところを見たことがあったけど、本当に変わった人だと思ったよ。」
「あれを見られたときは恥ずかしかったですよ。さて、それじゃあフォス、
今後は早く靴を引き取りに来てくださいね。」
彼は玄関に向かった。




