贖罪319
「ノウさん……。」
「大きくなったわね、マリス。」
「本当に生きてたんですね。」
「知ってたの?」
「ええ。さっきエビールから聞いて知りました。シーセルの息子です。」
「ジェルアンに活動を止めるように言ってた悪魔ね。」
「ええ。あいつが王と手を組んでジェルアニストを陥れたんです。」
「そうだったのね……。魔法で動きを封じていたのはシーセルだったって訳ね……。マリス。私たちと一緒に活動しない?」
「さっきも誘われましたけど、俺は一緒に行動しません。いや、出来ないと言った方が正確か。」
「どういうこと?」
「俺はこれから死ぬからです。」
「何ですって?」
ジェルアニストたちはざわついた。
「俺はサタンの火を浴びて死にかけましたけど、
真実を伝えるためにエビールは30分の命を俺に分け与えました。
全てを知った時、俺は再び愛に目覚めました。
そして生きたいと強く願い、神に新たな命をもらいました。
俺は自分の命を使って、俺が地獄に送った人間たちの魂を全て天国に送ります。
これが俺の贖罪です。」
「そんな! 一体これまで何人の人間を地獄に送って来たのか知らないけど、相当な数になるはずよ。全員を送るなんて無茶よ! 」
「いや、出来ます。どうしてだか分かりませんが、分かるんです。
魔力とは正反対の力、愛があった頃にあった別の力が全身にまた湧き出てきてるのを感じます。母さんは捕まってる時に魔力は封じられてたらしいけど、その力を使えば、
命まで犠牲にしなくても良かったかもしれません。
愛を持って育った俺にはその力をどうやって使ったらいいのか何となく分かってました。
その力を使って人間と恋をした時に複製を作りました。
あの力がなんだったのかその時は分かりませんでしたが、
今はあれが聖なる力だと分かります。あなたたちはこれからも、
人間を助けてあげてください。母さんがそうしてたように。」
マリスは微笑んだあと、覚悟を決めたように表情を引き締めた。
そして愛に目覚めたことで少なくなった魔力、聖なる力、そして自分の命と、自分の持ちうる全てを使って、魂を天国に送り始めた。
地面からプクプクと泡のように魂が出てくると、
天国に向かって勢いよく飛んでいくのだが、
自分たちを地獄に送った悪魔が今度は天国に送ってくれることに魂たちは驚いて、
殆どの魂はマリスの目の前で一旦止まってから、上昇していった。
すぐに魔力が尽きたが、その時点で解放できた魂はたった1割ほどたった。




