贖罪20
「いいか、世間というものは人を金のあるなしで判断するんだ。
お前がそんな甘ったれた考えを持つのはお前が金に困ったことがないし、困っていないからだ。
お前は今、金で築き上げられた壁で守られているんだ。
だが、そこから一歩でも足を踏み出そうものなら、世間の荒波に揉まれる。
その時に初めて分かるんだ、金の大切さをな。だが大切なお前にそんな目に遭ってほしくない。
だから金持ち、ああそうだ、金持ちの男を見つけて結婚するんだ。
俺が生きている間とお前に残す分だけじゃ足りないかもしれないからな。
金に頼らなくちゃいけないなんて、癪に障るかもしれない。
だがなフォス、この世はそういう世の中なんだ。
だから俺の言うことを大人しく聞いてくれないか?」
「パパが紹介した人たちはみんな自分のことしか話さないわ。
私がどういう人かなんて彼らには興味がないみたい。
私がどんな料理が好きか、趣味は何か、どんな本が好きか、誰一人として私に聞かなかった。
でも私のことはジロジロ見てたわ。彼らは私と一緒になりたいんじゃない、私を手に入れたいのよ。
みんなは私のことを綺麗だと言ってくれるからそうだとして、彼らは私を家具か何かと勘違いしてるのよ。
彼らが住む大きくて素敵な家に、彼らの言う綺麗な私をその家に置いて良い気分に浸りたいだけよ。
でも私は物じゃない。私は生きてる。私は大切にされたい。それに彼らには私じゃなくても大丈夫。
彼らみたいな人を好きな女性がいるから、その人たち同士で一緒になった方がよっぽどいいわ。
私は私を必要としている人を見つけたい。私でなければダメという人がきっといる。
そして私もその人でなければダメなの。」
先ほどまで立って聞いていたジョセフは、これまでのように娘の2つ返事で話が終わるかと思っていたが、どうもこの話は長くなりそうだと思ってソファに腰を下ろした。
足と腕を組んで目を閉じてしばらく考え込んだ。
フォスも椅子に座り、手を重ねて膝の上に置き、父が話すのを辛抱強く待った。
やがて彼は目を開けてフォスを見て言った。
「その運命の人みたいのにお金がなくてもかい?」
話し方は穏やかであったが、今にも爆発しそうな不穏な空気が感じられた。
「ええ、そうよ。」
「行きたい所に行けないし、着たいものも着られないし、食べたいものも食べられない。つまり、したいことができない、それでもかい?」
「ええ、そうよ。」
ジョセフは座ったばかりだと言うのに興奮して思わず席から立ち上がった。




