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贖罪  作者: 北村 達也
19/320

贖罪19

「もうたくさんよ、パパ!」


 これまで出したことのない大きな声で言った。


 娘に口答えされたことがなかった彼は驚いてしばらく言葉が出てこなかったが、しばらくして話し始めた。


「これはお前のためなんだぞ。」


 娘が興奮しているから自分も興奮してしまっては会話にならなくなってしまうと、自分に言い聞かせ冷静な口調で言った。


「私のためを思うんだったら、私の好きにさせてよ!」


「お前の好きにさせてたら、どんな男を見つけてくるか分からないだろう。」


「どんな男がパパは満足なの?分かってるわ、お金持ちよね?」


「それだけじゃない!」


「じゃあ他になにが必要なの?」


「…。」


「ほら、やっぱりお金なんじゃない。」


「お前にはお金がないことの辛さが分からないんだ、そしてあることの有難みが!俺は何もないところから今を作り上げた!お金がなかった頃は毎日ひもじい思いをしてた。あんな辛さをお前には味合わせたくないんだ!」


「パパがわたしのことを愛してくれているのは分かっているわ。だから何でも買ってくれるわ。」


 そう言って彼女はその場で一回りして部屋にある様々なものを見た。そしてクローゼットに行ってドレスを何着も引っ張り出して床に投げた。


「でもこれは私が頼んだものじゃないし、私はこんなの欲しくなんかない!どれだけこんなものにお金をかけても私は幸せじゃないわ!お金で幸せにはなれないのよ!」


「じゃあお金がなくて幸せになれるなんて幻想を抱いてるのか?」


 皮肉交じりの笑みを浮かべて言った。


「そうは言わないわ。私が温室育ちだと言っても、そこまで世間知らずじゃないわ。

でも会うようにとパパが言った男の人たちはみんな幸せそうじゃなかったわ。

お金を増やすことと守ることに必死で生きているのが辛そうだったわ。

私たちみたいに馬車に乗っていないし、裕福な服装もしていないけど、幸せそうに歩く家族をたくさん窓から見るわ。

お金は幸せを測る尺度にはならないわ。

あっても不幸な人は大勢いるし、なくても幸せな人は大勢いる。」


「今は幸せそうにしてる金のない奴らも、いつか現実を突きつけられることになる。

金がなければないほど岸壁に迫っていく。

あいつらは呑気に上ばっかり見てるから、自分が今いるところがどれほど危ないか分かってない。

どこに行ったって愛と交換できるものなんてない。食べ物、家、洋服、馬車、医者。

この世は金が無ければ何もできないんだ。」


「確かにお金なくして生きていけないわ。でも愛なくしても生きていけないわ。

お金なんて人が作ったものにすぎない。人はみんな自分たちで作ったものに踊らされているわ。

道具があれば誰だってお金は作れるけど、愛は道具では作れない。

愛は心で作り上げるもの。私は愛を大切にした人生を生きていきたい!」

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