贖罪18
母亡きあとのフォスの人生は不自由だった。
娘に任せていたら間違った方向に進んでしまうと考え、酸いも甘いも見てきた人生経験が豊富な自分の言う通りにしてれば上手くいくと彼は思っていたので、何から何まで彼が決めたし、娘が何かしたいと思っても父に聞かなければいけなかった。
だがどれだけ不満があっても彼女は黙って父の言う通りに生きてきた。
父のやり方が間違っていることは分かっていたが、それが愛から出ている行為なのは彼女も分かっていたからだ。
彼女という太陽は無理やり箱に押し込まれたことで、快活さは鳴りを潜めてしまったが、いつまでも箱に閉じ込めたままにしておけると彼が思ったならそれは思い違いだ。
太陽を押さえつけることなどできはしない。
彼女の主体性を尊重することが彼にできれば、太陽の恵みを享受することができ、彼の拝金主義一辺倒の考え方に変化を起こすことも可能だったかもしれない。
だが彼は太陽を閉じ込めるという愚策に出た結果、太陽の光に浴する機会を自ら奪うことになり、やがて太陽が箱から自ら出てくるときは彼の身を焼き尽くすことになる。
小さい頃から花が大好きだったので、大人になったら花について学んでみたいと考えていて、父にその思いを打ち明けてみたら取り付く島もなく一蹴されてしまった。
それまでの人生をずっと大人しく従ってきた彼女はその時も泣く泣く言う通りにした。
言いなりの人生を歩んできても、結婚だけは彼女の好きにさせて欲しいと考えていたのだが、20歳になった時に父から相手を探してきたからその人と会うように言われて愕然とした。
自分に選ばせて欲しいと言うと案の定断られた。
結婚する気はなかったけれど、父の言う通りに会ってみると、彼のように支配的な人だった。
人を尊重する気がなくて、自分のやり方を相手にも求める人、そんな人だった。
これでは支配するのが父から、父のような別の人に代わるだけで、一生支配されたままの人生を送ることになってしまうと思った。
結婚という行為まではさすがの父も強要しなかったので、その後も彼が相手を見つけてきても、彼女にはどの男性も同じに見えたので、会うには会って体よく断ることを繰り返していた。
しかしジョセフも我慢の限界を迎えたようで、ある日彼女が部屋にいてお花の手入れをしていると彼が入ってきて、25歳までに相手を見つけなければ無理やりにでも結婚させると言い出した。
男というのは若い女が好きな生き物だから、いくら娘が美しいと言っても、今23歳の彼女がこのまま結婚せずに歳を重ねっていっては誰からも貰い手がなくなってしまうと危惧しての親心だった。
しかし我慢の限界を迎えていたのは彼だけではなく、彼女の長年の不満は遂に爆発の時を迎えた。
押さえつけられる力が強いほど、その反動も大きくなる。
このとき彼女は生まれて初めて彼に逆らった。




