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贖罪  作者: 北村 達也
12/320

贖罪12

 ピオニーの状態を家の使用人が知ってから、馬車で急いでジョセフのところに行って、それからジョセフが医者に連絡したので、思いのほか時間がかかってしまい、その日は医者が来られなかった。


 使用人からピオニーの様子を聞いたジョセフは動揺した。


『帰るべきか?』いや、そんなことはできなかった。


 彼が帰ったところで出来ることはないと思った。


 人はそれぞれにできることをすべきだと彼は考えていて、彼にできることは金を増やすことだった。


 金がなければピオニーが安心して過ごせる家も取られてしまうし、彼女の症状がこれから悪化するなら益々お金が必要になるかもしれない。


 その時のために更なる蓄えがなくてはいけない、そう考えて彼はまた仕事に取り掛かった。


 彼は上り坂を押しながら雪だるまを作っているようだった。


 喜ばせたくて雪だるまを作り始めたが、平らな道ではみんなが雪だるまを作って雪が少なくなってしまっていたので、ほとんどの人が手を付けていなくて、雪がいっぱいの上り坂で彼は雪だるまを転がし始めた。


 思った通り雪はどんどん付いて雪だるまは大きくなっていった。


 雪だるまが大きくなるにつれて重さは増し、彼の肉体も強化されていく。


 家族はとてつもない大きさの雪だるまなど欲していないのに、彼はお構いなしに巨大にしていく。


 今では随分と坂道を上ってしまった。


 下では何かトラブルが起きているようだが、彼が作り上げたこの雪だるまは手を離せば全ては水の泡になってしまうというのが、彼が常に抱いている恐怖感だった。


 これを他の人に一旦託そうにもこの大きさに耐えられる強い肉体を持つ者はそういるものではなかった。


 だから彼は下で何が起ころうともこの雪だるまを押し続けなければいけなかった。


 喜ばせるために始めた雪だるま作りは、いつしか雪だるまを作り続けることが目的となってしまっていた。


 彼は貧しいときから財を成した今でも変わらず金の奴隷であった。


 翌日の朝いちばんに医者に来てもらい診察をしてもらったところ、悪寒、発熱、そして頭痛の症状が見られるので、おそらくは風邪だと思うが、体が相当弱っているので注意した方がいいということだった。


 心配したフォスが夜にお見舞いに行こうと思って母の部屋を少し開けると寝ているようだったので、そのままにしておこうと思って扉を閉めようとすると母の声がした。

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