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いつも読んでくださってありがとうございます。

37話以降のお話は、マーリークサークル編とジェナ編にわかれます。妖精絡みの話はジェナ編の方で書こうと思っていますので、新しく投稿する『魔法使いの弟子と子供達』という小説でお楽しみください。

マーリークサークル編の方は、これまで通りクレイとメーラ中心のお話が続きます。







新学期が始まり、ようやく待ちわびた日が来た。

 魔方陣学のジョルジュ先生と、あの鉛筆について話をする日だ。

 この話し合いにはメーラはもちろん、校長先生とステアも来ることになっている。

 場所はジョルジュ先生の住居兼研究室。クレイとメーラは、ステアに守られながら先生たちの住居スペースにお邪魔した。

 ジョルジュ先生の研究室はインクと紙の匂いで一杯だった。

 「いらっしゃい、クレイくん、メーラくん、ステア先生。校長先生はまだいらっしゃっていないんですよ。なんだかドキドキするわね。なんのお話かしら?さあさあ、座って」

 ジョルジュ先生はクレイ達に椅子をすすめ、お茶を用意しながら落ち着かなげにそう言った。

 すぐに校長先生もやって来た。

 「やあ、遅れてすまない。ああ、ありがとうサブリナ。美味しそうなお茶だね」

 校長先生は椅子に腰を下ろし、美味しそうにお茶を飲んだ。

 クレイとメーラは、ジョルジュ先生以上に落ち着かず、話を始められる時を待っていた。

 (先生はどう思うかな?こんな鉛筆を見せて驚くかな?驚くよな。師匠だってそうだったんだから。教室でこっそり実験したって言ったら、怒られるかな・・・)

 お茶を飲んでも、あんまり味がしなかった。

 「さて、今日時間を作ってもらったのには理由があってね。クレイくん、メーラくん?」

 校長先生にそう促されて、クレイとメーラは鉛筆を取り出した。

 校長先生とステアは、椅子に深く腰掛け、二人の話を聞く姿勢をとっている。話は全て、クレイとメーラに任されたのだ。

 「あの、この鉛筆なんですが・・・」

 クレイは鉛筆について全てを話した。魔方陣学の授業で実験したことも話した。

 ジョルジュ先生は目を丸くして話を聞いてくれた。

 「・・・ええと、それで、冬休み中に師匠と校長先生とメーラの両親とで実験しました。いくつか魔方陣を下書きアリで試してみて、成功しました。それで、ええと・・・俺、いや、僕、ジョルジュ先生に相談があるんです」

 「相談?」

 「はい、この鉛筆を魔法道具として商品化することに、先生はどう思いますか?」

 「もちろん賛成だわ!もう、特許は取ったのよね?申請はした?」

 「いえ、まだ・・・」

 クレイの言葉に、ジョルジュ先生は驚く。

 「どうして?あ、実験でなにか危険なことが?でも、成功したんですよね?」

 ジョルジュ先生はステアと校長先生を見る。

 「実験は全て成功だった。迷っているのは別のことなんだよ。クレイくん」

 校長先生に促されて、クレイは口を開く。どう説明すべきがずっと迷っていたが、結局、メーラに説明したようにするしかなかった。

 ジョルジュ先生はクレイの話を聞くと、真剣な顔をして頷いた。

 「なるほどね、そういうことなのね・・・」

 ジョルジュ先生は何かを考えるように俯いた。

 「・・・先生はどう思いますか?この鉛筆を魔界に出したら、誰かが困るようなことになると思いますか?」

 「・・・ならないとは、言えないです。ええ、言えません。新しい技術には必ずその問題が伴うと思っています。でも・・・この鉛筆はとても素晴らしいものです。これで助かる人がいます。絶対に」

 ジョルジュ先生はとても真剣な目でクレイを見た。

 「私はできるだけ早くこの鉛筆の安全性を確かめて欲しいです。そして、魔界中の学校で使えるようになって欲しいです。私はずっとこういう物が欲しいと思っていました。これがあれば、魔方陣を勉強する生徒達がどれだけ助かるか・・・」

 ジョルジュ先生はキラキラした目で鉛筆を見て、そう言った。

 しかし、すぐに深呼吸すると、冷静な顔つきになり、クレイを見た。

 「でも、クレイくんはそう簡単には出せないと思っているんですよね。ええ、わかります。これは社会に影響を与えるものです。わかります・・・」

 ジョルジュ先生は、少し考える時間が欲しいと言った。クレイ達は話を聞いてくれたジョルジュ先生にお礼を言って、部屋から出た。

 クレイは量に帰りながら、ジョルジュ先生と話をしたことを思い返していた。

 先生はこの鉛筆をすごく良いものだと言っていた。すぐにでも魔界中に広めたいと。

 (・・・俺の悩みって、取り越し苦労なんだろうか?)

 この鉛筆が魔界に広まることで、困る人なんて本当は一人もいないのかもしれない。

 なんだかそんな気がしてきた。

 師匠だって、メイヤーさんだって、タロルさんだって、校長先生だって良いものだと言っていた。これがあることで助かる人が沢山いると、ジョルジュ先生は言っていた。

 ならば、いるのかわからない困る人のことを考えるより、助かる人の方を考えるべきなのかもしれない。

 (でも・・・)

 クレイはどうしても踏み出せなかった。

 いるかどうかわからない、ではなく、いないという確信が欲しかった。いや、いるとしたら、その人たちの困り事を少しでも減らしたかった。クレイのように食べるのにも困ったり、親しい人が寒さで死んでいくような事が起きて欲しくなかった。

 「クレイくん、焦らなくて良いんだよ」

 校長先生の落ち着いた声が聞こえた。

 「ゆっくりで良いんだ。気持ちが決まるまで何も決めなくて良い。たとえ、ジョルジュ先生が早く決めて欲しいといっても、君が焦ることはない」

 「そうだぞ、クレイ。心ゆくまで考えなさい。こんな機会は滅多に無いのだから」

 ステアもそう言った。

 クレイは少しだけ心が落ち着いた気がした。

 (そうだな、ひとまずジョルジュ先生の話を聞こう。それから考えよう)

 クレイはそう決めた。


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