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サミュエルさんはシルクハットから鳩をだし、花を出し、おまけにウサギのぬいぐるみを出してみせた。

 ナーシャさんはサミュエルさんの手品に会わせて太鼓を叩き、紙吹雪を舞わせた。

 ボータン夫妻は元マジシャンだったのだ。

 「すっげー!すげー!」

 当然、子供たちは大喜びだ。クレイも初めて見るマジックショーに興奮しきりだった。

 しかし、子供達よりも大興奮している大人がいた。ステアだ。

 ステアは目を丸くして、口を大きく開けて、サミュエルさんの手品を見ていた。

 「ど、どういうことだ?魔力の動きが見えない、感じない・・・なのに、魔法が起きてる!」

 ステアは子供たちを押し退けるように、最前列に陣取り、サミュエルさんの手品に見いっていた。

 それに気を良くしたサミュエルさんは、嬉しそうにさらに手品を披露してくれた。

 カードの束が口の中から現れ、切ったはずの紐が繋がり、コインがいつの間にかメーラのポケットの中に入っていた。

 最後、サミュエルさんは「アブラ カタブラ」と唱え、煙のなかに姿を消してしまった。

 どこへ行ったのかと子供たちとステアが探すなか、サミュエルさんは笑いながら、廊下へ続く扉を開けて、部屋の中に入ってきた。

 子供たちは一斉に拍手をして、サミュエルさんを迎える。

 「いやあ、ありがとう、ありがとう。こんなに拍手をもらえるなんて嬉しいよ」

 サミュエルさんがシルクハットを胸に当て、大仰な仕草で礼をする。ナーシャさんも同様だ。

 その仕草はとても決まっていた。

 きっと、二人は大きな舞台の上でも、こんなふうにどうどうとマジックショーを行えるのだろう。

 「素晴らしかった!素晴らしかったが・・・いったいどうやったのだ?あなたは魔法使いなのか?」

 ステアが感嘆したような声で、ボータン夫妻を見る。

 ボータン夫妻は驚いたかおでステアを見た。

 「おや、マジックショーは初めてですかな?それは良かった。その通り!私はかつて都で『神速の魔法使い』と呼ばれた男です!」

 「私はその弟子よ」

 ナーシャさんはそう言って、手から花をだした。

 「やっぱり、魔法使いなの!?」

 「魔法の鉛筆を作ってるの!?」

 クレイとメーラが興奮したように叫んだ。

 ステアも一緒になって「どうやって魔法を使っているのだ!?魔力を全く介さず魔法を使うなど、聞いたこともない!」とサミュエルさんとナーシャさんに聞き始めた。

 困ったのはサミュエルさんとナーシャさんだ。

 子供はともかく、大の大人が(ステアは人間に化けていて、ボータン夫妻は彼が吸血鬼であることを知らない)マジックを本当の魔法だと信じてしまっている。

 「おいおい、本家が騙されるなよ。ボータンさん達がやっているのはマジックだ。魔法じゃない。種も仕掛けもあるんだよ」

 ケビンが興奮するステアを引き戻しながら、そう言った。

 「え?魔法じゃないの?」

 「嘘だ。こんなこと、魔法を使わずにできるわけ無い」

 「メーラの言う通りだ!どうやって、人間が部屋の中から消えるのだ?」

 クレイとメーラとステアに詰め寄られ、ケビンはサミュエルさんの方を見る。

 「種明かしをしてくれって言っても、無理ですよね?」

 「そうだねえ。でも、これなら教えて上げるよ」

 そう言って、簡単なカードマジックの種を披露してくれた。

 それを見たクレイとメーラ、ステアは目を丸くして驚く。種も仕掛けもあるとわかっていた他の子供達と、ジェナの両親もその仕掛けに感心する。

 「そ、それではこれは、魔法ではないのか?」

 「そうだよ。全部仕掛けがあるんだ。あとは手先の器用さだな」

 ケビンの言葉にサミュエルさんは頷き、コインを一枚指で弾いたと思ったら、二つに増やしてみせた。掌の中に隠していたのだと、すぐにわかった。わかるようにやってみせてくれたのだ。

 「こ、これも魔法ではないと?」

 「魔法じゃない。サミュエルさんもナーシャさんも普通の人間だよ」

 「え・・・」

 「そうなの?・・・」 

 落胆の言葉はクレイとメーラの口から漏れでた。

 「そういえば、魔法の鉛筆とかなんとか言ってたな。ここに来たがった理由もそれか?」

 ケビンの質問に、クレイとメーラは顔を見合わせた。

 

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