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予定通りに工場に着いた。
「ええと、こっちかしら?」
「あ、あれじゃない?扉がみえる」
工場の扉を見つけて、移動する。
「まず、俺が入る。子供たちは後ろで待ってなさい」
マーティンさんが襟元を直しながら、扉に向かった。ノックをしようとした時、扉が開いた。
「ああ、いらっしゃい。お待ちしておりました」
「どうぞ、中へ」
扉の向こうから顔を出したのは、この鉛筆工場の工場長であるサミュエル・ボータンさんと、そのパートナーのナーシャ・ボータンさんだ。
年は40歳ほどか。作業着を身に付けており、日に焼けた肌をしていた。どちらも人の良さそうな笑顔を浮かべている。
二人は、ジェナの両親とジェナを見たあと、その後ろにいるクレイたちを見て、驚いたように目を見開いた。
「お久しぶりです、ボータンさん。ここにいるのがうちの娘のジェナです。後ろにいるのは村の子供たちです。どうしても鉛筆工場が見たいといって付いてきちまって・・・あ、もちろん、お邪魔なら帰らせますから」
「いえいえ、邪魔なんてとんでもない。見に来てくれて嬉しいですよ。あ、ああそうだ!ちょっと準備したいことがあるから、ナーシャ、お客さんたちを頼んでいいかい?」
サミュエルさんはとても嬉しそうに笑いながら、なぜかうきうきした様子で奥へと走って行った。ナーシャさんはそれを苦笑しながら見送り、クレイたちに「さあ、お入りになって」と手招きしてくれた。
ナーシャさんのあとを付いて歩くと、広い作業室のような所に出た。
「ここで鉛筆の検品作業をします。ジェナちゃんが働いてくれるとしたら、ここね」
そこには大きな作業机があり、作業の途中なのか、かご一杯の鉛筆が置かれていた。
「うわあ!こんなに鉛筆がある!」
「へえ、ここで働くのか」
「木の匂いでいっぱいだ」
ミック達が珍しそうにキョロキョロしながら歩く。
その部屋を通りすぎ、更に奥の部屋に案内された。
奥の部屋は事務室兼応接間のようで、座り心地の良さそうな椅子が置かれていた。
ただ、不思議なことに、真っ白な鳩が一羽、椅子の背もたれに留まっていた。
「あれ?鳩?」
「入り込んできたのかしら?」
全員の目が鳩に釘付けになったとき、突然、ポンポンポンっと破裂音が響き、部屋中に紙吹雪が舞い散った。
「え!?」
「なに!?」
次いで、ジャララララと、太鼓の音が響く。
驚いて横を見ると、ナーシャさんがいつの間にか小さな太鼓を肩からかけ持ち、お腹の前で叩いていた。
クレイ達が呆気にとられて目を丸くしていると、ナーシャさんはいたずらっぽい笑顔を浮かべ、部屋の中央を見る。
すると、今の今まで気がつかなかったことに、部屋の中央に人がうずくまっていた。その人はラメのはいったきんきらしたマントを体に巻き付け、黒いシルクハットを被っていた。
ジャンジャン!と太鼓が鳴ると、シルクハットを被った人は立ち上がった。手にステッキを持っている。
「ようこそ、ボータンの鉛筆工場へ!」
立ち上がってそう挨拶したのは、サミュエルさんだった。




