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新しい年が明け、村の大人達は仕事を再開した。

 子供達はもうしばらく学校がお休みになるので、親の手伝いをしたり、遊んだりしている。

 メーラ一家は、年が明けると同時に魔界へ里帰りした。三人がいなくなった古城の中は、びっくりするほど寂しくなってしまった。顔には出さなかったが、クレイもそう感じていたようだ。三日後、メーラ達が帰ってきた時は、一番大喜びしていた。

 もうすぐマーリークサークルへ帰る日が近づいてきたある日、クレイ達は隣村へと行くことになった。目的はジェナの就職先への挨拶のためだ。

 ジェナとマーテルは、今年の夏で村の学校を卒業となる。マーテルは家業の手伝いをすることになっていて、ジェナも通常ならば家業の商店を手伝うことになるのだが、ジェナの兄のフランクが結婚し、店にはフランクのパートナーのシェリルが入ることになった。そうなると、人手が余る。

 そこで、隣村にある鉛筆工場で働くことになったのだ。この村からも数人が働きに行っている工場で、話はすぐにまとまったらしい。

 今日はその工場へ、両親と共に挨拶に行くことになった。

 それに、何故クレイ達が同行しているかというと・・・

 「別に一緒に来るのは良いんだけど、なんで?」

 ジェナはクレイに聞く。

 ジェナが年明けに鉛筆工場の工場長に挨拶に行くという話を聞いて、クレイは一緒に行きたいと言い出したのだ。

 「俺も使ってる鉛筆だから、興味があるんだ」

 クレイはそう説明したが、ジェナも、一緒に行くステアもケビンも、だれも納得していない。

 特に面白いものがあるわけでもないし、工場の中を見学できるわけでもないのだが、クレイはお願い、連れて行ってと何度もお願いしてきた。おまけにメーラまで行きたいと言い出した。

 これは何かあると勘づいた大人達だったが、あえて深追いはせず、一緒に行くことにした。

 ジェナとジェナの両親、クレイとメーラとローワンとジャック、ミック(この三人も何かあると勘づいて付いてきた)、そして、ケビンとステア。

 鉛筆工場見学御一行様は、工場までの道のりをてくてくと歩いていた。

 「片道30分以上か・・・時間がかかるな」

 「これでも近い方だ。田舎じゃあ、片道一時間かけて通勤するって人間もざらだ。もうちょっと道を整備できたら、自転車でも行けるんだけどな」

 「ジェナ、今からでも遅くない。私と一緒に箒に乗る練習をしよう。そのほうが楽だ」

 「いやよ。落ちたらどうするの?私は安全に歩いて行くの」

 ステアの説得に、ジェナは首を横にふる。

 ジェナの両親も、その方がいいと頷いている。

 魔法の便利さと安全さを知っているステアとメーラは、理解できないと首をふる。

 「工場で金貯めて、学校に行くって?」

 ケビンが苦笑しながら話題を変える。

 魔法を安全なものとみるか、危なっかしいものとみるかは、育ってきた環境でガラリと変わる。今その話をしても、平行線が続くか喧嘩になるかだ。

 「そうなの。お金さえ貯まったら、行って良いって。ね?」

 ジェナがキラキラした目で、後ろを振り返る。

 「まあ、学費さえあればな」

 ジェナの父親が渋々といった様子で頷いた。

 ジェナはクレイが魔界の学校へ行っている間も、ずっと両親を説得し続けていたらしい。ようやく、学費さえ貯まれば、両親も、都行きを承諾してくれるほどにまで話が進んだ。

 「良かったな。オレのバイトも頑張ってくれれば給料弾むよ」

 「ありがとう」

 「え?バイトってなに?」

 「ケビンが金くれるの?オレもやる!」

 「おれも!おれも!」

 ミック達がケビンの周りに群がるが「裁縫のバイトだぞ」と言うと、一気に波が引いた。

 「ちょっとケビン!あんまりジェナを甘やかさないでくれよ!」

 ジェナの父親のマーティンが、ケビンに囁くようにそう言った。 

 ケビンはそんなマーティンをみて「やっぱり、反対なの?」と聞く。マーティンはちょっと気まずそうだったが「女一人で都になんか行かせられねえ・・・」と呟いた。

 それを聞き咎めたメーラが何か言いかけるが、ケビンがその口をふさぐ。先頭を行くジェナは気づいていない。

 「工場の賃金はそれほど高くはない。一年や二年働いたところで、学費を稼ぐには程遠い。マーティンさんはジェナが諦めるのを待つつもりなんでしょう?」

 ケビンの言葉に、マーティンは頷く。

 今度はクレイがかっとして口を開きそうになるが、ステアが止めた。

 「メーラとクレイの言いたいことはわかる。でもな、ジェナは世間知らずだ。ここでなら俺たちがあの子を守ってやれるが、都に行ってしまったんじゃ、そうはいかない。年頃の娘ってだけでも危ないのに、あの子は世間の怖さをまるでわかっちゃいない。ここで暮らす方があの子の幸せにもなるんだ」

 マーティンはきっぱりとそう言った。

 「気持ちはわかるよ、マーティンさん。でも、ジェナは本気だ。諦めないと思う。絶対に裁縫学校に行けるだけの金を稼ぎ出すよ」

 ケビンは自信ありげにそう言った。

 「それに、ジェナは世間知らずかもしれないが馬鹿ではない。世間をしっかり勉強すれば、その心配も要らなくなると思うがね」

 「いや、しかし・・・」

 それから、しばらくマーティンとケビン、ステアの三人で議論が始まった。

 メーラとクレイはそれを聞きながら歩く。

 「大人って子供を舐めてると思わないか?」

 「思う。ジェナは確かにおっちょこちょいなところはあるけど、マーティンさんが言うほど子供じゃないよ」

 大人達の勝手な意見を聞きながら、クレイとメーラは唇を尖らせていた。


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