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「さて、ケビンの心配ごとはひとまず落ち着いたことだし、アカーリア、早速魔法をみてみようか」
次の日の朝、朝食が終わったあとに、ステアがそう言った。
ケビンはまたもや昨日に引き続き、たっぷりとご飯を食べた。昨日ほどではなかったが、いつもの二倍は食べていた。それを見ていたせいか、クレイもお腹が苦しくなるまで食べてしまった。
メーラと一緒に牛乳を飲んでいたアカーリアは、ステアの言葉を聞いて、顔を明るくする。
「はい!よろしくお願いします!」
「うむ。クレイとメーラもどれだけ腕を磨いたかを見せてくれ。これを用意したぞ」
ステアが出したのは、ファヴァーヴァル先生の授業でもやったジェンガだ。ただ、こっちのジェンガは少し大きめで、材質が違った。魔法が通りやすいことが一目でわかる。
「師匠、これ、子供用だろ?」
メーラが不満そうに言った。
「この土地でなら、それくらいのレベルの方が良いのだ。それだって難しいと思うぞ」
ステアの言葉に、メーラの瞳が輝き、早速箱を開け出した。
ケビンと一緒に朝食の片付けを終えてから、クレイも参加した。
ステアはアカーリアと向き合い、アカーリアの呪文の唱え方や杖の振り方を見ていた。
メーラは既にジェンガ積みに挑戦中だ。
「ぬぐぐぐ・・・本当だ、これも難しい・・・」
メーラはゆっくりとジェンガの駒を積み上げていく。学校でやったときよりも苦戦しているように見える。
クレイも杖を持ち、魔法で駒を持ち上げようとするが、つかみ損ねた。
「む!?」
学校とは違い、やはりこの土地の魔法は難しい。この四ヶ月、楽に使えていたせいで、昔の感覚を忘れている。
「ぐぬぬぬぬぬ」
「うむむむむ」
必死に魔法に集中していると、どんどん体が暑くなってきて汗をかきだした。クレイは上着を脱ぎ、靴下も脱ぐ。袖をまくり上げるも、汗は止まらない。
メーラもアカーリアも同様だ。
それを見ていたケビンは、ちょっと迷ったようだが、暖炉の火を消してくれた。
「もう一月だぞ。そんなに大変なのか?前はそんなこと無かったよな?」
「久しぶりで、余計な力が入っているのだ。このジェンガを積み上げる頃には慣れている」
ステアが楽しそうに言った。
「お前もやってみるか?しばらく魔法を使っていなかっただろう」
そう言って、ケビンにジェンガを差し出す。
ケビンは腕組をして、その箱を見ていた。
「・・・また、ぶっ倒れたりしないかな?」
「大丈夫。ゆっくりやれば平気だ。あの時は落ちたら怪我する危険があったから、あんなに疲れたのだ」
ステアがそう言うと、ケビンはひとつ頷き、傍らに置いていた剣に手を伸ばした。
茶太郎が嬉しそうに尻尾をふりながら近寄ってきた。まるで、今からケビンに遊んでもらうかのようだ。
ケビンの近くで魔力が揺らめいた。
ジェンガの駒が浮き上がり、一つずつ積み重なっていく。駒の端が綺麗に合い、はみ出ている駒は見つからない。
「うぬう・・・」
「上手だ・・・」
「わあ・・・」
メーラとクレイとアカーリアは自分達の手を止めて、ケビンのジェンガに見いってしまった。
もうすぐ完成というところに、茶太郎が前足を出して、塔を崩す。
「おい、何すんだよ」
散らばった駒の上にお腹を乗せて、床に伏せ、ケビンの顔を見る。
まるで、オレから取ってみろと言いたげだ。
ケビンは手を伸ばして、駒を拾い集めようとしたが、それは駒が許さない。逃げていく。
ケビンが魔法を使うも、茶太郎は動かず、駒も取れない。
「む?よし、これならどうだ?」
風の魔法で駒が2つ、茶太郎の腹の下から出てきたが、茶太郎がそれを口でキャッチする。ケビンはそれを放すまいと魔法で引っ張っているようだが、茶太郎も負けない。
引っ張りあいが起きている。
クレイはケビンがどんなふうに魔法を使うかを見極めようと、目を凝らす。
しかし、呪文を唱えない、杖もふらないケビンのやり方は、さっぱりわからない。
「師匠、ケビンの魔法は俺たちの魔法とどう違うんですか?」
クレイはステアに質問した。




