表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/44

11

ケビンのお腹がようやく落ち着き、スミスさんとマギーさん達は帰っていった。ステアとクレイは何度もお礼を言って彼らを送り返した。

 しかし、すぐにお客はやってくる。

 「ケビーン、元気になったって?」

 「ご飯食べられるようになったって聞いたわ。これも食べて元気になって」

 「やっと起きたって?」

 スミスさん達から話を聞いた村の人々が、お見舞いにやってくる。尽きかけた家の食料が、また増えた。

 ケビンは本当に元気になったようで、笑顔で見舞い客をもてなしていた。

 「本当にすっかり元気になったわね」

 「茶太郎のいう通りだったな。本当にただの疲労だったのか」

 お客さんにお茶を振る舞いながら、メイヤーとタロルがケビンを見ながら言った。

 その隣では、ステアとアカーリアがとれたての野菜を見ている。

 「これが人参、これは白菜だ。こっちは大根」

 「野菜見るの久しぶりです。変な形」

 「吸血鬼も野菜育てるの?」

 「いいや、小さい頃に血液以外の食材も試してみるのだ。我々吸血鬼は、血液以外を食べようと思えば、食べられるからな。しかし、アレルギーがでると怖いから、幼いうちから、大人になるまでに何度か試すのだ」

 「そうなんだ。でも、どうして?」

 「かならず生き血を吸えるとは限らないからな。人間の世界で戦争でも起きれば、人間の健康状態が一気に悪くなる。そうなると、血を手にいれるのが難しくなるからだ」

 ステアの説明に、ミックたちが「へえ~」なっとくの声をあげる。

 「こっちは見たことはあるかな?魚の塩漬けだ。魚は殺すとすぐに腐り始める。腐ってしまうと食べられなくなるから、できるだけ長く保存するためにこうして塩漬けにするのだ」 

 「塩につけると腐らないんですか?」

 「ふふふ、そうなのだ。そもそも、肉が腐るには・・・」

 アカーリアの質問がステアの教師魂をくすぐっている。

 昼を過ぎる頃には見舞い客も落ち着き、ウォルバートン先生が来て、ケビンとアカーリアを診察してくれた。

 「うん、二人とも元気そうだね。ケビンは食べすぎないようにね。今言っても遅いかもしれないけど、胃腸に負担がかかるのはよくなよ。アカーリアちゃんは本当に血をすわなくていいのかい?遠慮しなくてもいいんだよ」

 「大丈夫です。ここに来る前に吸ってきたので、まだ、お腹はすいてません。花も持ってきましたし」

 「花?もしかして、吸血鬼が食べるってやつ?」

 花農家のマーテルが反応した。

 「そうよ。念のために持ってきたの」

 アカーリアはそう言って、肩から提げていたポシェットから種を取り出した。

 「え?種なの?種を食べるってこと?」

 「ううん、食べるのは花の蜜よ」

 「え?今から育てるってこと?」

 マーテル達が首をかしげるのを見て、メーラが口を開く。

 「この花は一晩で咲くんだよ。だから種のまま持ち歩けるんだ」

 「一晩で!?種を植えて一晩で咲くの!?」

 マーテルがびっくり仰天する。

 クレイも驚いた。メーラ達の吸っていた花が一晩で咲くなんて思ってもみなかった。

 しかし、驚いたのはクレイ達だけではない。  

 「え?一晩で咲くのって、そんなに不思議?」

 アカーリアもまた、クレイ達の反応に驚いていた。

 「そんな花、見たことも聞いたこともないわ!」

 「あ、花自体は特別じゃないのよ。特別な水を与えて、急いで咲かせるの」

 「ってことは、その辺に咲いている花も、その水をあげれば一日で咲くってこと?」

 マーテルが興奮気味にアカーリアに詰め寄る。

 「うーん・・・どうかしら?」

 アカーリアが困ったようにメーラとステアを見る。ステアはタロルを見る。

 「その辺りはタロルの専門だな」

 「そうだねえ、大体は咲くと思うよ。ただ、その特別な水を作るのが、難しいからねえ」

 タロルの言葉に、マーテルはがっかりして、アカーリアは驚いた。

 「月の水を作れないんですか?どうして?」

 「月の水!」

 アカーリアの言葉に、クレイは思わず声をあげた。ベーベクラスの絵本に月の水について描かれているものがあった。

 月の水は魔法の水。

 植物の成長を助けたり、体にできた傷を癒したり、飲むと薬になったりと、とてもすごい力を持った水だ。

 たしか、月が出ている夜にしか作れないもので、一番強い効果が出る月の水は、満月にならないと作れないと描かれていた。

 「月の水を作るには、清水と月の光、それにもうひとつ大事なものがあるんだ。知っているかい?」

 タロルがクレイとメーラ、アカーリアを見て聞いた。

 「ええと、フ、フ・・・」

 「フワンフワール、ですね」

 アカーリアが答えた。

 「そう、それがここには無いんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ