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次の日のお昼頃、ケビンはすごくスッキリとした顔で起きてきた。足腰はしっかりとしていて、ふらつくことなくキッチンにやってきた。

 「やっと眠気がとれたぜ。腹へったー」

 ちょうど、ミック達が遊びに来ていて、皆でお昼ごはんを作ろうとしていた。

 「座っててよ。私たちが作るから!」

 ジェナが張り切って腕捲りをする。

 しかし、ケビンは余程お腹がすいているのか、人参をナイフで切り、生のまま齧りだした。

 「ちょっと待て。お前、この数日まともに食べてないんだぞ。そんなもの食べたら腹を壊す!」

 ステアが慌ててケビンを止める。

 「無理、待てねえよ。本当に腹が減ってるんだ」

 ステアの制止を振り切って、人参にかじりつこうとするケビンを見て、クレイ達はこのままではまずいと感じ取った。

 「オレ、母ちゃん呼んでこようか。母ちゃん料理作るの早いんだよ」

 「スミスさんちの煙突から煙が出てる。たぶんお昼ごはんを作っているんだ。俺、わけてもらえないか聞いてくる」

 ミックとメーラがそう言って、城を飛び出していった。

 ジェナとクレイで急いで夕食用にとっておいた魚を焼き、マーテルがパンをこねる。ジャックとローワンもジャガイモの皮をむいてくれるが、ケビンはだんだん狂暴になってきた。

 「大丈夫だって、生の野菜なんていつも食べているんだから」

 「今は駄目だと言っているだろう」

 腕をつかんで止めるステアの腕を逆につかみ、人参を取り返そうとしている。

 そこへ、スミスさんが大きな鍋を手に、やってきた。

 「ケビンがお腹を空かせて暴れてるって?まあまあ、本当だわ、元気になったわねえ。ほら、私の特製、カボチャのシチューよ」

 「パンもあるよ」

 スミスさん夫妻が、自分達のために用意していたお昼ごはんを持ってきてくれたのだ。

 ほどなく、ミックのお母さんのマギーとその他のきょうだい達もやってきた。彼らも出来上がったお昼ごはんを持ってきてくれた。

 ケビンは彼らに感謝しながら、がっつくように食べ始めた。

 「パンを口に押し込むな!一口ずつ食べろ!」

 「うるせーな、もー・・・」

 喉に押し込む勢いでパンを食べようとするケビンをステアが魔法で止める。魔法で止められると抗いきれないケビンは、渋々一口ずつ食べ始めた。

 それを見て、スミスさんの奥さんとマギーさんは腕捲りしてキッチンにやってきた。

 「こりゃあ、足りないね。クレイ、どいておくれ、私たちが替わるわ」

 「あんた達もケビンと一緒に食べなさい。いっぱい作るわ。ステアさん、パン生地は晩御飯にして、パンケーキを作りましょう。あれなら時間がかからないから」

 「おお!なるほど!よし、テーブルと椅子を増やすから、子供達はご飯を食べなさい」

 お母さん二人にあれこれと指示を出してもらいながら、ステアもキッチンに立つ。

 ステアが増やしてくれたテーブルにつき、クレイ達もお昼ごはんにありつく。ミックのきょうだい5人とジェナ達、そしてクレイ。テーブルの上の料理は一瞬にして減った。

 「あはは、こういうのは久しぶりだねえ」

 「うちは毎日ですよ」

 スミスさんの奥さんのメアリさんが懐かしそうに笑い、マギーさんも笑う。その隣でステアが「毎日これとは・・・母親業とはやはりとても大変だ」と唸りながら、パンケーキを焼いている。

 「あ、あの子、アカーリアちゃんだっけ?あの子は食べなくても良いのよね?」

 「はい、吸血鬼なので大丈夫です」

 「そういえばメーラは?」

 「畑に行くって言ってたぞ」

 「一人で大丈夫かな?」

 クレイは腰を浮かせかけたが「あんたは食べなきゃいけないんだから、食べる」と、メアリさんに熱々のオムレツを出され、クレイは座り直す。

 大勢で食べる食事はわりと大変だ。大皿に載せられた料理を早めに確保しないと、いつの間にか無くなっている。特に今日はケビンが一番の敵だ。

 (こういうのは久しぶりだ)

 クレイはスラムにいた頃のことを少し思い出した。食べ物の取り合いは毎度のことで、力の弱いクレイはしょっちゅう負けていた。食べれないこともあった。

 しかし、ここでは違う。

 「ほらほら、クレイちゃん、これも食べな」

 「これ、母ちゃんの得意料理なんだぜ、食べろ!」

 「クレイ、人参食べない?」

 「ソーニャ、好き嫌いしないの!」

 マギーさんとメアリさんが料理の配分に目を光らせ、年上の子供たちもそれを見習って小さい子にわけてくれる。

 だから、安心してご飯が食べられる。

 クレイのお腹が満腹なる頃、メーラが畑から戻ってきた。なんとアカーリアも一緒だった。

 ここにいてもなにもすることがないからと、メーラはアカーリアを手伝いに連れ出したらしい。アカーリアは初めての農作業を終え、目をキラキラさせていた。 

 「この人参、私が掘り出したの!見て!スッゴク大きい!」

 アカーリアはまだ泥のついている人参を、誇らしげに見せてきた。少し前のクレイのようだ。ケビンが育てた野菜の収穫を手伝ったとき、クレイもこんなふうに興奮していた。



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