22.『今度』
読む自己。
木曜日と金曜日も風邪で休んだ。
あれからお風呂にも入っていない、私の移動範囲は菫のベットからトイレまでで。
それよりも問題なのは菫が帰ってこないことだろう。
穂ちゃんは家事ができないので洗濯物や食器が溜まっていく。
体調がまだ悪いもののなんとか体を起こしてやることにした。
できないと言ってもご飯は炊けるのでどうやらふりかけをかけて食べていたと気づく。
「せめて……水つけておいてくれれば……」
時間が経てば経つほどこびりついて落ちない。
力が入りにくくても擦っていたらツルッと滑って床に落ちお茶碗が割れてしまった。
それを片付けようとしたら指が切れて血がでる、……踏んだり蹴ったりだ。
「ただいま……」
そのとき菫ちゃんが帰ってきて私はさっと指を隠す。
彼女は私を見て「もう大丈夫なの?」と聞いてきたから、「大丈夫だよ」と答えておいた。
やってくれるということなのでお風呂を溜めている間、壁に背を預けて眺めることに。
その後姿を見ていると懐かしい気がして、膝に顔を埋めて少し泣いた。
ばれないようにとすぐに服を脱いでお風呂場に入る。
「寒い……」
体調の悪さからだけではないだろう、きっとまたどこかへ行ってしまうと思って自分が寂しがってる。
「杏、開けるわよ」
今日初めてこのタイミングで彼女の顔をまともに見た。
少し怒っているような悲しんでいるような、そんな曖昧な表情を浮かべている。
「あなた……嘘ついたわよね、大丈夫じゃないのでしょう?
よく分からないことを言うなとは思いつつ、「大丈夫だよ」とまた答えておく。
「ねえ、どうして私にも隠すのっ? そんなに信用できなかった!?」
自分の足が濡れることは厭わず、彼女はお風呂場に入ってきた。
「信用しているからだよ、あなたには本当にいたい人といてほしい」
「……だからまた帰るって言うの?」
「よく分かったね? うん、お風呂出たら帰るよ。先輩を呼んでさ、手料理振る舞ったりとか、女子トークをしたりして仲良くしてほしい」
湯船から出てタオルで拭く。
彼女の横を通って制服や私服、鞄や大好きな本を大きなバックに入れて玄関へ。
「菫ちゃん、ありがとう」
引き止めはしなかった。
大丈夫、なにも問題はない。
家に帰ってベットに寝転んだ。
なんだかんだ言っても体調が悪いので楽がしたかった。
するとお兄ちゃんがやって来て言う。
「杏、明日ご飯食べに行かないか?」
「あーうん……穂ちゃん呼ぶからさ、ふたりで行ってきてよ」
木曜日からなにも食べていないし急に食べたら多分吐く。
せっかくお給料でご飯に連れて行ってくれようとしているのに、それでは失礼だろう。
お兄ちゃんが本当にいたいのは私ではなく穂ちゃんだ。
「……杏がいないなら明日じゃなくてもいい」
「行ってきなよ……穂ちゃんなら来てくれるよ」
「いいんだ、それより体調悪いのか?」
あ、でも好きな子と凄い久々にいきなりふたりきりは気まずいか。
「あ、うん……木曜日くらいからずっと……」
「ご飯は食べたのか?」
「うん……朝にね」
「熱は…………全然ないみたいだけど」
「あれだよ、寝転びすぎてて体調悪いと錯覚しているだけだよ。一応それでもお部屋に戻って?」
「そうだな……寝ておけよ?」
こくりと頷いて兄を見送る。
それから多分10時間くらい寝て気づいたら部屋が暗くなっていた。
「あ、寝すぎた……」
「本当だよ」
「わっ、み、穂ちゃんか……」
床に座ってこちらを眺めていることに気づく。
「どうして帰ったの?」
「どうしてって、これが正しいでしょ?」
「菫がいないから泣いてたんじゃないの?」
「そう……だけどさ、菫ちゃんはいま先輩に一生懸命だから」
「だから「菫がいなくても大丈夫」なんて言ったの? ねえ、そんなこと言われたら悲しいって分からないの杏はっ、杏のせいで家に帰ってこなかったって思わないの?」
違うよ、私なりに考えて動いているじゃないか。
その証拠に、菫は帰ってこなかったじゃないか。
なにか文句が言いたいなら2日も家を空けず、帰れって言えば良かったじゃないか。
「ねえ、もしかして菫がいなくても私がいるからいいとか思ってる?」
「べつにそんなんじゃ……」
「消去法で選ばれるのはむかつくから、やめてくれないかな」
「だから違うってっ」
「どうだか、至さんの部屋に行ってくる」
あ、彼女の方からお兄ちゃんの部屋に行ってくれるのならふたりは上手くいける気がする。
私は喉が渇いたので1階へ。
「なんで……」
どうしてここにあなたがいるの……。
私は彼女の腕を掴んで玄関まで連れてくる。
「帰って」
なにをいまさら言いに来たのかは分からない。
けれど、お互いに相手には用がないはずだ。
1度家に入ってしまったから帰れなくて困っていたんだろう、友達として助け舟をだす。
「帰ってっ」
「……あなたって本当に馬鹿よね」
「馬鹿でもアホでもどうでもいいんだよっ」
「風邪引いて隠して寝込んで帰って、どこまで自分勝手なのあなたは。勝手に邪推して傷ついて泣いて、なにがしたいのあなたは」
傷ついてないよ、私は先輩のためを思って動いているんだ。
協力するって言った、なのに積極的に邪魔をしている現状がおかしかったんだ。
だから寂しさを抑えてでも、先輩のためになるのならと動いているんだよ菫。
「そういえばさ、古川先輩とはどうなってるの?」
「今日泊まりたいって……」
「お、じゃあ丁度良かったね、ほら、さすがにあの家に4人とかは狭いしさ。ということはいま家に先輩がいるってことだよね? 慣れない人の家にひとりじゃ寂しいよ、帰ってあげないと」
1ヶ月以上住んでいてもあの家にひとりは寂しかったわけだし。
……どうやら20時を超えているようなのでひとりで帰らすのは心配だ。
「あ、お兄ちゃん来た! お兄ちゃん、菫ちゃん送ってってくれる?」
お兄ちゃんが穂ちゃんと一緒に階段を下りてくるところだった。
だから頼んでみたら、
「おう、穂を送るつもりだからいいぞ」
お兄ちゃんは笑顔を浮かべて了承してくれる。
「あ、でも、その子がふたりじゃ気まずくないか?」
「だったら私も菫の家まで送ればいいでしょ? それで至さんは最後に私を送ってくれれば」
「そうだなっ、そうするか!」
うんうん、仲良くてなによりだ。
でも、お兄ちゃんと穂ちゃんが出たのに、彼女は出ようとしない。
「お兄ちゃん待ってるよ?」
「……あなたも来なさい、あなたが来ないなら私は帰らない」
協力すると言ったんだ、これが先輩のために繋がるならそれでいい。
私も菫と家の外に出て歩いていく。
お兄ちゃんと穂ちゃんは仲良く歩いていて、その後ろを菫、私という順番。
家が離れているというわけではないので彼女の家にはすぐに着いた。
「ありがとうございました」
「これくらいなんてことはないよ。よしっ、穂送って帰るか!」
「至さん、今度ご飯食べに行こー?」
「……ああ、前から考えていたからな、行こうか」
「やったー!」
歩きながら話すふたりを見て「仲良いわね」と菫が笑った。
「穂ちゃんのこと好きだからね」
「え、そ、そうなの?」
「うん、ずっと昔から好きだったんだって! 穂ちゃんもずっと一緒にいたから案外悪くないかもね。だから菫ちゃんもさ、先輩に一生懸命になってよ! 応援するからっ」
あ……というか実の妹の気配くらい感じておいてほしいものだけど。
ひとりじゃ怖いので走って向かおうとした私の腕を彼女が掴む。
「お兄ちゃんが行っちゃうから……」
「……先輩が泊まってるというのは嘘よ、ひとりじゃ寂しいのよ」
「それは違うよ、2日も会ってなかったから麻痺しているだけだよ。あなたが本当にいたいのは古川先輩、そうだよね?」
「あなたといたいのっ、どうして分からないのっ?」
「だめだよ、私は先輩に協力するって言ったの。だからできない、いれない!」
拘束から逃れて走りだす。
しかし私は自分の足の速さってやつを過信してしまっていたようだ。
私より速く走った彼女が正面に回り込み急停止もできずぶつかった。
夏の夜、暗く染まった地面に彼女を押し倒してしまう。
「……いたた……危ないでしょっ!」
「だってあなたが逃げようとするから……」
「ぶつかったことはごめん! でも、できないから、帰るから!」
ひとり立ち上がって今度はゆっくりと歩いたのだった。
彼女が急に前に現れてもすぐに止まれるように。
1回目に書いてやつが吹っ飛んで
なんとか思い出しつつ書いてみたけど、駄目だったなあ。
3800文字ぶっ飛んだのは堪えるな……
しかも内容全然思い出せなくて書いたから……




