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17.『約束』

読む自己。

 期末テストまで1ヶ月をきったので図書室で勉強をしていた。

 この学校の図書室は不人気で今日も私と詩羽のふたりだけしか利用していない。

 もっとも、詩羽は図書委員なので私が邪魔をしてしまっているだけなんだけどね。


「やっほ~杏」

「あ、穂ちゃんっ、部活動は?」

「今日はお休み~テスト勉強?」

「うん、これくらいからやっておかないと教科多いから」


 で、できれば菫ちゃんに来てほしか、い、いや! 穂ちゃんが来てくれても嬉しいけどね。


「テスト勉強ってわけじゃないけど課題のプリントやろっ」

「うん、一緒に頑張ろっ」


 そこから30分くらい集中して疲れたので休憩しようとしたときだった。


「ん? どうしたの穂ちゃん、じっと見てたみたいだけど」


 んっと伸びをしたあと正面を見てみると、彼女がこちらを見ていたので聞いてみる。


「いや……杏が一生懸命やっているところを見るの好きだなって」

「えっ……あ、ありがと」


 どうして勉強をしただけで口説かれているんだろう。

 もう! と怒ってから本を探しに行くことにした。

 本を読んでいれば疲れなんてあっという間に吹き飛ぶ。

 今回私が選んできたのはお菓子の作り方が分かる本だ。

 読んでいると詩羽がやってくる。


「お菓子作りたいんですか?」

「うん、作れるようになってふたりにあげたいなって」

「藤原さんと萩原さんにですか?」

「うん、いつもお世話になってるから、えへへ」


 それで虜にさせて「お姉さまっ」と呼んでもらうっ。

 冗談はともかくとして、本当の意味で私がなにも返せてないからちょうどいいのだ。

 そしてなにがいいって、こうして詩羽が来てくれたことだろう。

 彼女なら作れるし、なにより晴君にまた会うことができるから。


「詩羽、私に教えてくれないかな?」


 だからこうして頼ませてもらう。

 彼女ならきっと受け入れてくれる、


「嫌です」

「えっ!?」


 ことはしなかった。


「教えられるほど上手というわけではありませんし、私にくれないのに教える義務はないですよね」

「え~……じゃあいいや、菫ちゃんに教えてもらう」


 そもそも申し訳ないし、どうせなら目の前で頑張って彼女たちに渡したかったのだ。


「……あなた本当に馬鹿ですねっ」

「ひ、ひどいよ……」

「ちょっと飯島さん、杏を馬鹿にしたらあなたでも許さないよっ」

「そ、そういうことでは……ふたりにしかあげるつもりがないんだなって不満に思っただけです」

「だったら素直に言えばいいでしょ、杏だって拒んだりしないよ」

「杏さんごめんなさい……」

「大丈夫、こっちこそごめんね」


 少し気まずいので今日はもう解散することにした。

 下駄箱で詩羽とは別行動をし、穂ちゃんとだけふたりで歩いていく。


「杏、手繋ご?」

「甘えん坊さんだね、いいけど」


 雨が降っていても彼女の手は温かい。

 というか、彼女が側にいるだけで暖かった。


「さっきはありがとね、でも詩羽にも優しくしてあげてよ?」

「……飯島さんも大切なの?」

「え、そりゃお友達だし」


 もちろん、言い方はあれだけどふたりの方が大切だ。

 でもそれはあくまでまだ詩羽と時間を重ねていないからで、こらからは分からない。


「まあいいけど……ふたりきりのときは私だけを見て」

「どうすればお姫様に満足していただけますか?」

「モモ、あなた私にキスしなさい」


 乗っかってくれて安心する。

 ……求めてきた内容がなければ本当に良かったのに。


「だーめ!」

「ちぇっ」

「もう何回も言ってきたら本当にしたくなるからやめてっ」

「していいよ」


 ちょっと待ってほしいっ。

 何回も言ってきたらしたくなるって、私もしたい……ってこと?

 紛れもなく私の口から漏れた言葉、誰かに強制されたわけでもなくだ。


「……冗談だから、本気にしちゃだめだよ」

「いや、杏こそだめだよ。菫に超されたくない、だからお願いっ。ほら、そこなら誰にも見られないから」


 彼女が指差したのは公園の入口横だった。

 雨だし誰もいないのは当然として、傘もさしているから大丈夫だと言いたいのだろう。

 腕を掴まれてそこまで運ばれてしまう。

 お互い向き合って横はあれだけど前後からは見られない状況で。

 遮るものはなにもない、私か穂ちゃんが踏み込んで顔を近づければそれができてしまうわけだ。


「……菫ちゃんに怒られちゃうよ?」

「祝福するっていったけどそれは全てが終わったあとだよ、そうなる前は私の意思でしたいように動く。そして私がいま望むのはあなたからの口付け、それか私からするかだけ。できないなら許可だけしてくれればいい、そうすれば私からする。どう、受け入れてくれる?」


 雨の中、お互い傘をさしてするキスというのも新鮮かもしれない。

 でもできない、少なくとも私からはできない。

 一応安易にキスとかはしないって決めたわけだし、そこは我慢してほしい。

 だけど穂ちゃんがしたいって言うなら、べつに嫌というわけじゃないし……断る必要もない気がする。


「もぅ仕方ないから……好きにして」

「いいのっ?」

「だってしつこいんだもん、毎回断るの面倒くさいし……いいよ、そっちからするぶんには」


 棒が邪魔にならないようどけたらした際に濡れちゃうけどしょうがない。

 恥ずかしいから目を閉じていると唇に優しい感触が伝わってきた。


「……もう1回」

「……だめ、1日に1回だけ」

「菫にも許すの?」

「求めてきたら、ね」

「ん……でも私だけ独占もできないし、杏次第だもんね」


 また手を繋いで歩きだす。


「1日に1回していいの?」

「……教室とかで言われても困るし、誰もいない場所なら……」

「そっか、ありがとっ」


 しかし、こう言ったことを私はすぐに後悔する。

 頻繁に来てくれるようになったのは嬉しいんだけど――


「杏っ」

「前の休み時間もした……じゃん」

「杏のせいで授業集中できないかも」


 キスしないと○○と脅してくるようになったのだ。

 なんか本当に授業中はぼけっとしていたし私のせいで成績を下げられても困る。

 だから仕方なく、そう仕方なく、人がいないのを確認してから壁に優しく押さえつけてからしてあげた。


「……今日これ以上言ってきたらもう2度としないからねっ」

「やだ……もう癖になっちゃってるんだもん」

「やめてよっ……」


 いけないことなんだよ……1番良くないのは私が流されかけていることなんだよ。

 いつかこれが繰り返されたらどこでも奪おうとする変態少女になってしまうかもしれない。

 さすがに変態少女扱いされるのは堪える。


「お願い穂、1回ならしてあげるから我慢してっ」

「……分かった、だから悲しそうな顔しないでよ杏っ」

「穂のせいだよ……もう戻ろ?」

「待って、菫が……」

「あ……」


 毎時間教室を出ていたら気づくよね。


「コソコソしていておかしいと思っていたけれど、まさかこんなことしているなんてね」

「1日1回って約束しちゃったの」

「……穂だけ?」

「そういうわけでは……」


 汚いあなたとなんてしたくないと言われたら傷つくので、こういう面倒くさい言い方になってしまう。


「どうして言ってくれなかったのふたりとも、一緒の家に住んでいるわよね? やましいことがなければ言えるわよね、言ってきていないということはやましいこと?」

「そ、そりゃ……キスなんか本当はするべきじゃないし」

「でもしているのでしょう? それも穂、とだけ」

「はい……」


 1回だけって言ったけどもう3回もしてしまっている。

 だってしなかったら~だとか言われたら断れない。


「1回に減らしてくれるって言ったし、大丈夫だよ」

「1回じゃないのね、さっき聞いた約束と違うようだけど?」


 なにを言っても駄目だ。

 彼女が正しい、言い訳はできない。


「ごめんなさい……」

「どうして謝るの? やましいことがあったから?」

「……怒ってるんだよね、だからごめんなさいって」

「だからどうして私に謝るのよ。あなたが受け入れたからこそ穂がしたのでしょう? 回数制限の無視はともかくとして、それを怒る権利なんてないじゃない」

「で、でも……菫ちゃんもしたいんじゃ……」

「自惚れないでちょうだい、……私はあくまでせめて少しでもと同じ立場に近づきたかっただけよ」

「し、しないよね、うん」

「……しないわ、そうやって何度も他の子とする女の子となんて」

「あ……ごめん」


 あれだけ求めてきていたのにとは言わない。

 いや、言えなかった……。

キスさせるの好きね。


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