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18.『凹凸』

読む自己。

「杏に謝ってよっ、私が悪いんだから私に言えばいいでしょ菫!」


 戻ろうとしたら穂が食いついてきた。

 しかし、


「違うよっ、菫ちゃんは間違ったことを言ってないよ。もういいからさ穂ちゃん、戻ろうよ」


 杏が庇って余計にむかついて。

 それでも、なにも言わずに階段を下りた。




 もう放課後になったというのに呆然と席に座っていた。

 俯いていると誰かが私の机に手をついた。

 見上げるとそこにいたのは萩原穂――ではなく、瀧澤火蓮さんだった。


「もうあんたひとりだよ、なにやってるの?」

「なにって……たまにはひとりでゆっくりしようかと思っただけよ」


 家に帰ればふたりいるしねと説明する。


「ふぅん、また喧嘩したんだ」

「……違うわよ」


 私が素直になれなくて勝手に離れただけだ。

 ……穂ではなくまた同じように杏を責めて無様にひとりでこうしているだけ。


「あたしには分かるんだよ、だってあの子が泣いているのを見たんだから」

「あ、あの子って?」

「大西杏に決まっているじゃん」


 少しドキッとして、それでもなんとか、


「は、萩原さんと一緒に帰ったんじゃなかったの?」


 そうやって“当たり前のこと”を聞いてみる。


「……ひとりだった、しかも馬鹿だから傘もささないで外に出てね」

「そう……まあ時々お馬鹿なところがあるからあの子は」

「はっ、あんたが原因なのにお馬鹿扱い、人気者だからなんでもしていいってこと? くだらないね」

「はぁ、そう言わないでほしいわね。私にだっていろいろあるのよ、それに人気者でいるなんて思ってもいないし、自惚れるつもりもないわ。細かいことまで知っているなら、私が嫉妬ですぐに他人を傷つけることだって分かっているでしょう? 人気者というのはね、誰にでも優しくて、完璧でっ、誰からも求められるような子のことを言うのよっ! ……こうして痛いところを突かれたからってすぐ怒鳴るような人間が、そんなわけないじゃない」


 みんなに人気になれなくても自分がこの人! と決めた人にだけ見てもらえればいい。

 何度も言うけど、私がそういう風に周りに対して自分を持ちあ上げてくれとは言っていないのだから。


「……どうしてあんたもしてもらわなかったの? 萩原穂にだけ、なんて言わなったでしょ」

「どこまで知っているのよ……」

「本当はしてもらえるかもしれないって喜んだのに、「誰とでもする子とはしたくない」とかねっ」

「だって……3回もしていたのよ今日だけで!」

「あんたが言った、大西杏が受け入れたなら怒る権利はないって。矛盾しているんだよあんたは」


 そういえばそうだ……どれだけ矛盾抱えているのって話よね。

 もしかしたらまた杏が実家に帰っているかもしれないけど自分も帰ろうと席を立った。


「ありがとう火蓮さん、あなたのおかげで私が嫉妬で他人を傷つける女だと分かったわ」

「……怒ってんの?」

「違うわよ、自覚ができたということよ」


 さようならと言って彼女と別れた。

 恐らく家に帰れば穂がいることだろう。

 どこかのお馬鹿さんとは違ってきちんと傘をさし道を歩いていく。

 家にはすぐに着いて扉を確認したとき――


「あ、あいてる……」


 鍵がかかっていなかった。

 一応警戒をしつつ扉を開けると、リビングまで続く水滴の跡が見える。

 びしょびしょに濡れた靴とその中に詰められた彼女の靴下。

 とにかくリビングに行ってみると、濡れたままで体操座りをしている杏だけがそこにいた。


「せめてお風呂に入りなさい、誰の家だと思っているの」


 つい声音が厳しくなる。

 これが穂であったならもっと気が楽だったっ。

 だというのにどうして今日は家に大人しく帰ってきているんだこの子は。


「杏!」


 動こうとしない彼女の腕を掴んで無理やり立ち上がらせる。


「……なに?」

「な、なにって、あなたこそなによ……お風呂入りなさいよ、床濡れてるじゃないっ」


 前だって傘を持っておきながらびしょ濡れで帰ってきたりしたし、……濡れるのが好きなのかしら。


「菫ちゃんを待ってたんだよっ、なのに遅く帰ってきてさ! 自分からあんなこと言っておいて気まずかったのかなっ? ……本当に自分勝手だよね、あれだけ自分だって求めてきていたくせに、いざ状況が変わったらしたくないわ~とか言っちゃってさ! 寂しがり屋で甘えたがりの頑固やろう!」

「ぷっ……あ、ご、ごめんなさい……あなたには似合わないわそんなのっ」

「ごめんなさい……」

「……あなたが悪いわけじゃないわよ。はぁ、お風呂ためるからたまったら入りなさい」


 ご飯食べていないしお腹空いたから早くご飯を作りたい。

 私を待っていたのはなにも一緒にお風呂に入ろうとしたわけではないだろう。


「だめ……菫も一緒に入って」

「ちょっ……抱きつくんじゃないわよ……濡れるじゃない」

「いつもこれをされてるんだから我慢してよ!」

「濡れてはいないわよ……もういいわ、ためながら入りましょう」


 リビングで全部脱いでお風呂場へ。

 遅れて杏もやって来た。

 ため始めたばかりのためシャワーで彼女を温めてあげることに。


「どう?」

「温かい……」

「6月だって濡れたら寒いわよ」


 地味に彼女とお風呂に入るのは初めてな気がする。

 凹凸があるわけじゃないけど気になっている女の子の裸体が目の前に、触れる距離に。


「す、菫~もうお湯いいよ~」

「あ、ごめんなさい……」


 いつも洗い物をしているときに彼女は穂と入っていた。

 穂はこうして近くで目にして、なにも感じなかったのだろうか。

 ……まずシャンプーで彼女の髪の毛を洗ってお湯で流して。

 そして体……。


「杏、体は自分で洗えるわよね?」

「うん、洗えるけど」

「それじゃあ私は自分の髪洗うから」


 無理だ、触れたら終わるっ。

 だから私は自分の髪の毛と体をさっさと洗って湯船に浸かった。


「あーもう……」

「ん? どうしたの?」

「いえ……」


 いつもは制服に隠れているところが丸見えだ。

 でもそんなことより、……彼女の唇を目で追ってしまう。

 穂には応えた、なら私は? ……自分から拒んでしまったのは馬鹿としか言いようがない。

 だけどここで求めたら、彼女は受け入れてくれるだろうか?


「菫っ」

「……なによ」

「そんなに中央にいられたら入れない」

「はぁ、はいはい」


 横にずれる。

 この子に私の気持ちを分かれと言う方が酷か。

 並び合ってるし肩も触れるくらい近いのに、どこか遠くに感じていた。

 この子が自分を悪いと言ったことを、私は否定し「そんなことないよ」なんて意見を変えたりしない。

 だってなんだかんだ言っても穂の要求には応えるということじゃないか。


「今日は甘えてこないんだね」

「そういう気分じゃないのよ、どちらかと言えばお腹が空いていて仕方ないのよ」


 もう今日は冷凍庫に入ってるお肉を全部焼いて丼にして食ってやる! ……食べると決めた。

 それでこの少女と穂のお馬鹿さんにはやらない、あげない。


「……じゃあ私から甘えようかな」


 横からガバリと彼女が抱きついてきた。

 なんで私が不機嫌のときにばかりしてきて、普段は全然してくれないんだこの子は。

 やっぱりお馬鹿なのかもしれないと評価を改める。


「菫、素直になってよ」

「あなたこそ素直になりなさい、穂に決めたならそうだと言えばいいじゃない」

「はい嫉妬~寂しがり屋~」

「むかっ……絶対お肉あげないわよ」

「……いいよ、そんなのよりあなたの……」


 あなたの、なにかしら。謝罪、とかだったりしてね。

 私は自惚れない、勘違いしない、騙されない流されない。


「離れなさい、そんなつるぺたボディで抱きつかれると痛いのよ」

「はぁ!? ……ばかっ……」


 あーもうすぐ泣くし、自分勝手は彼女の方だ。


「……本当はあなたがしてほしいんじゃないの?」

「ちがっ……うよ」

「嘘つきね、キスを拒んでいた理由は自分が求めだしたら嫌だから、でしょう?」

「あ……」 


 そうやってすぐに言葉を漏らしてしまうから私達に好き勝手されるのに、本当お馬鹿だわ。


「寂しがり屋はどっちかしら?」

「……じゃあいいよ」

「はいすぐに拗ねるー」

「むかつく……」

「……仕方ないわね、家主は私で住んでいる子の相手をする義務があるわ。寂しがっているなら構ってあげないといけないわよねー、杏、こっちを向きなさい」


 私も向き合う。

 こちらを見る彼女の瞳は不安から揺れていて涙を流していて。

 顔が少し赤い、風邪を引かれても嫌なので早く決めてあげるとしよう。


「ほら、自分から差しだすのようにするのよ」


 これはあくまで彼女が求めたこと、そして実際に彼女も大人しく従った。

 ……目を閉じてくれたのは幸いだったけれどねっ。

 私も近づけて彼女の唇に自分のを重ねる。

 確かにそうだ、彼女が言うように普通の行為ではない。

 こうしてお風呂場で全裸でするような行為ではない。

 静かに離して彼女の頭を撫でる。

 気がおかしくなりそうでもあくまで体裁を保つ。

 自分の顔が熱くて涙がにじんできてもっとしたくなっても、今回は彼女が求めてきたから応えただけ!


「……まだしてほしそうな顔をしているわね。今日だけでもう4回もして――」

「5回目……」

「こほん! 5回もしているのにあなた変態なの?」


 あれからやったのかよ! ……つい言葉遣いが悪くなってしまう。


「菫……私、だめかも……変態かもしれない。ふたりにされてほしくなる……」

「……だったらやめておきなさい、依存症にならないよう3日に1回にしなさい」

「我慢……できるかな?」

「一緒に頑張りましょう、少しだけ正しい方へ戻すのよ。先に出るわ、早く出るのよ?」

「だめっ、まだ出てほしくない……」

「駄目よ」


 出てすぐに拭いて服を着る。

 主に穂のせいだけど、よくないモンスターを誕生させてしまったのかと少し震えた。

実際に仲の良い、バイかレズの女の子同士でだったら気軽にしたりするのかね。

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