1122話 そしてサーシャは扉を開いた
中級神<エース>が改心の兆しを見せたことで、喜ばしくはあるもののサーシャは"その結末"を見届けざるを得なくなり、実技試験はさらに長引いた。
パッパと済ませる事もできなくはなかったのだが、サーシャ的に「受ける順番で試験官の態度が変わる」のは論外であり……
最後の一神になるまで丁寧に手合わせしたかったのと、<エース>の心の成長を見守る時間が必要だったため、むしろ最初より丁寧になってしまったのだ!
受験者的には、この短時間で異様な戦闘経験を積み甘さが抜けたサーシャが、丁寧に相手するなんて地獄でしかないのだが……
試験官である彼女に対して「ヌルゲーの方が良かった。手を抜け!」とも言えないため、徐々に神側の勝率が下がる試験を戦々恐々と眺めている。
「不思議よねー。さっきまであれだけ眠かったのに、マサル君からメグミ君のポンコツエピソードを聞いたら眠気が吹き飛んじゃった」
そう……ダメージを癒したら痛みが消えて寝てしまうから、治療はしない。
そんな極限状態に置かれていた彼女は、何故か視界がクリアになり「ランナーズ・ハイ」に似た無双モードに入る。
カルマやだスティーブみたいに、物理的に三途の川に別荘を建て"キチガイの扉"を開いたわけではないが……
それでも一線を越えたことで「過労の扉」を開き、メグミがすごく喜ぶ社蓄マスターに至ったのである。
そして……既に<働神の加護札>に労働観を書き換えられ、過労フェチとなった<エース>にこれは効いた。
『なんて美しい働きっぷり! ぜひ共に働き成果を肴に言葉を交わしましょう!』
「いや、間に合っています」
「かしこまりました。では毎日必ず伺って、貴方の氷の心を溶かしてご覧にいれます!」
これは変態が仕掛けるナンパではない。
過労フェチという特殊な属性持ちの、エロなんて一切ないスポーツマンシップに則った、ビジネスのお誘いだ。
もっとも……いくら邪な心がなかろうとキモイもんはキモイし、中級神<エース>にはメグミ達をナメた前科がある。
そのため黙って採点欄に「不合格」という文字を書かれかけ、大慌てで土下座謝罪をかまして玉砕した。
だが……他者から指摘されたことで、サーシャ自身も自分の変化について客観的に考えるようになり……
気付けば理解が深まって、過労モードの重ねがけや圧縮までできるようになる。
「(そういう意味では感謝よねー。あの気持ち悪いナンパも、無駄ではなかった……ということかしら?)」
ビジネスのお誘いと分かっていても本能で<エース>を遠ざけてしまったサーシャだが、ある意味「感謝するべき相手」でもあるので、不合格は一旦棚上げ。
特記事項に「メグミ病に罹り変態化」とだけ書き、与えられた試験官の仕事を全うする。
最初は半々程度しかなかった勝率も、経験を積み工夫するうち、いつしか7対3で勝ち越せるようになった。
受験者的にはマジで勘弁してほしい事案だが、サーシャにも「より丁寧に力を入れてやってあげたら喜ぶはず♪」という、メグミ由来の迷惑成分が混ざっているため……
「試験官として成長できた証拠」としてポジティブにとらえ、PDCAサイクルを爆速で回しているのである。
<--- ドッガガアアァァァァ〜〜ンッ! --->
<---ドガドガドッガガアアァァァァ〜〜ンッ! --->
純粋に出力が上がりゴリラ化している感もあるが、見た目は可愛らしいままだしメグミの目には分厚い馬鹿ップル・フィルターが入っている為、問題ない。
ただ受験者達が、すでに合格が確定したホワイトリストに入っている事を知らず、繊維喪失したり……
心の内で「強い乙女」を慕う、マル秘ファンクラブが出来上がるだけだ。
そして……受験者達のメンタルブレイクと引き換えに成長し、タチの悪い責任感で試験官としての仕事を全うし続けたサーシャは、遂に「最後の戦闘」を終える。
まだ書類仕事は残っているが実質的な"面接"はこれで完了であり、「任された仕事をやり遂げた」と言っても差し障りはないだろう。
「だけど不思議ね……。ノルマを達成したら、スティーブ君やカルマ君みたく萎れると思っていたのに。全然、仕事ーズ・ハイが落ちつがない!」
そう、サーシャはエネルギー切れで眠くなるどころかキビキビと働ける状態を維持しており、あと一仕事いきたい気分なのだ。
もちろんそれは肉体に負担のかかる行為であり、あまり調子に乗って働くと、後々しっぺ返しがくるわけだが……
サーシャが一般人の殻を破り、逸般神の領域に足を突っ込んだのもまた事実である。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






