1121話 心の中のファンクラブ爆誕
実際のところ、合格候補として振り分けられた神々の中にも、<農民><小鬼>同盟の実力に不安を持つ者はいた。
当たり前の話だが……彼等視点だと、<農民><小鬼>同盟の10名は全員"生まれたばかりの赤子"なのだ。
すでに上級神で実績もあるメグミのことは、「天才」という枠組みで認めたとしても、よく知らない他のメンバーが懸念材料になるのは当然のことである。
とはいえ彼等は派閥入りを志願する立場であり、もしそんな事を聞きメグミを怒らせたら本末転倒なので、懸念を胸の内にとどめ黙っていたわけだが……
サーシャの頑張りを近くで見た現在、「本音を口に出さなくて良かった〜」と胸を撫でおろす者が続出。
<−−− キンキンカンカンガキンガキンッ! シュドッ! シュドドォォォォ〜〜〜〜〜〜ッ!!!! −−−>
『(これは美しい。疲れていてもなお、剣先を怠けて下げたりはせず基本に忠実に構え、相手の攻撃に呼応するかたちで立ち回っている)』
『(技術的にはまだまだだが、少なくとも伸び代は……俺とは比べものにならないな。俺がこの年の頃、この1/10でも出来たかと問われると……)』
札分身とはいえ、最上級の札を核とした分身に一対一で試験してもらい、フェア精神を重んじる闘いを繰り広げた彼等は、自然とサーシャを認め……
自分でも気付かぬうちに、彼女のファンになっていたのだ!
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〜札分身〜
情報を書きこんだ式札を核として、「自我を持った分身」を創り出すことができる。
分身のスペックは核にした式札次第であり、強いものは術者と同等。弱いものは水一滴落ちてきただけで消えるほどの、差がある。
危険な場所の調査をするとき送りこんだり、術者に負荷をかけることなく膨大な情報を処理するなど、式札の書きこみ次第で使い道も広がるが……
もし分身が壊れてしまい回収に失敗すると、核になっていた式札はその場に残るため、敵に解析され情報を奪われてしまうリスクもついてまわる。
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そして……メグミ程ではないにしろ、札分身のダメージを転写してしまいケガを負ったサーシャを見て、内心「治療した方が……」などとオタついている。
傷自体は大したことないのだが、サーシャの白くてきめ細やかな肌に切り傷や青アザができると、悪目立ちして痛々しいのだ!
だからといって、受験者が試験官を会場から引きずりだし「休んでおけ」と言うわけにもいかないため、現実はただピリつくだけ。
しかしそんな状況だからこそ、ペアで怖い思いをしたわけでもないのに、彼等の中で"吊り橋効果"が発動し……
いつの間にか、近所の幼子を見るような感覚でサーシャを見守るように。
この現象は、大量の就活本を読みマニュアルを極めてきた中級神<エース>にも及んでおり、彼も心の底からサーシャを認めた。
前派閥で上級神達にコキ使われ、<メグミの加護札>で脳がショートするくらい、働神の価値観に染まったとはいえ……彼も何方かと言えばマトモなのだ。
戦闘の衝撃でスカートが捲れあがっても即"紳士"発動で目を逸らすし、さり気なくハンカチと神薬を手渡すくらいの優しさは持ち合わせている。
『(思えば、自分にもこんな純粋な時期があったな。はるか昔の事ゆえ記憶も曖昧だが、見るもの聞くもの全てが不思議で興奮のあまり飛び跳ねていた)』
純朴だったかつての自分とサーシャを重ね合わせ、一人静かに懐かしむほど、荒んだ<エース>の心は浄化し……
就活マニュアルを叩き込んだものじゃない、彼個人の意思が頭をもたげ始めた。
『(どうして私は、外側を取り繕うことだけ考えて試験に挑んだのだろう? いくら就活本を読んだところで、彼女のようなピュアさは身につかないというのに!)』
『(それに冷静に考えると、この試験にエントリーする前……土下座祭りで派閥入りを認めさせようとした件も、ヤバイぞ!)』
就活本でカッチンコチンに固めた"settei"も、一度冷静になり"本物"を見ると落ち着いてくる。
マニュアルを頭に叩き込んだところで、彼の本質までは変わらないし、そんなものは所詮"付け焼き刃のガワ"でしかないのだ!
洗脳が解けたら、再度つけ込んで猫を被るまで……「過去の黒歴史」と向き合いただただ反省する、懺悔神になってしまう。
ただ……試験会場での「飾らない真摯な態度」は、戦闘をこなしながらもさり気なく中級神<エース>の様子をうかがっていた、サーシャに届いた。
「(以前と違って素直? 対試験用の猫被りでもないみたいだし……ここにきて何かを悟ったのかしら? とりあえず様子見。一応、プラス評価かな?)」
彼女の元でおこなわれているのは「落とす試験」ではなく「通す試験」なので、マイナスがあっても即アウトとはならず、長い目で見て判定してもらえる。
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