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1103/1120

1103話 もう交渉する気力もありません


〜とある魔王side〜




 もう逆らう気力も起きない。


 身も心もクタクタになるまで、自己を否定し奴隷扱いを当然のものとして受け入れる言葉を、叫ばされ……


 いつの間にか、自我が消え生粋の労働者に作り変えられたような気がする。



「(それに、神経が集まっている敏感な部位を徹底的に狙われた! 露骨な拷問。だが本体を物理的に潰されたのか、この"霊体の器"に衝撃が走っただけか……)」


 自分の目で確かめることができないため判断がつかないのだ!



「(しかも、全身をおそう痒さと口内の不快感は健在。一体私の本体はどうなっているんだ?)」


 クソッ、こんな事ならルノーブルに渡された「労働契約書」と熟読しておくんだった。


 晴れて合格したのに浮かれ、クソ野郎に雇われるという「危険な状況」にも関わらず、そのリスク管理を怠っちまったぜ。



「(だけど不思議だ。バックレたいのに、バックレる気力すら起きねぇ。これが世間で言うところの社畜化現象か)」


 たしか極限まで疲れて余裕がなくなると、「自身の進退に関わる重要な決断」を下せるほどの、脳のキャパがなくなり……


 ただ毎日ゴミのように扱われ、逆らうことも出来ぬまま壊されていく。



 そうして本格的に使いものにならなくなったところで、雇用主にクビを切られ雨風凌げる場所と飯を失い、廃人となってジ・エンド。


 俺もモンスターを従えるとき、言うことを聞かない反抗的な個体は、こうやって壊したあと囮として侵入者に殺させていたっけ?


 なるほど、おそろしく合理的で悍ましい雇用主だ……!!






「(それはそれとして、どうする? このままだと、俺は本当に逆らえぬままルノーブルの餌食になってしまう!)」


 たしかに、他所の世界を治める神……できれば絶大な権力を持つエリート神に会って気に入られ、移界で魔王人生逆転したい!



 だがそれも、命あっての物種だ。


 絶望の中ゆっくり壊され滅びるくらいなら、たとえ逆転できなくても今のまま生きながらえたい。



<−−− ピーンポーンパーンポーン♪ −−−>


『お前等、体力なさすぎだ。そんなんじゃ、神の御前で息切れする失態をおかすハメになるぞ? 仕方がないから、待機時間に鍛えさせてやる。感謝しろ!』



 精魂尽き果て床に突っ伏していた俺の耳に届いたのは、ルノーブルの「ありがた迷惑な追加指導宣告」だった。


 同時に3畳程しかない床が動き出し、起き上がって走らなければ壁に激突する、地獄のランニングモードが始まる。



 そして頭上にあるスピーカーから、鼓膜が破れそうなほど大音量で流れ出した、聞くだけで不快な労働歌。


「何だよ、コレ。うぅっ、脇腹が痛ぇ……耳も腐りそうだ! あぁ〜、クソッ! 走りゃいいんだろう、走りゃ!!!!」



 他のことを考える余裕もなくなり、ただただ走り続けた。


 転けて壁に激突するたび、ぶつけた部位以外にもビリビリと強烈な痛みがはしり、惨めになって涙と鼻水タタ流しに。


 しかしそれでも床は止まらないため、「倒れて泥のように眠る」なんて選択肢はとれず、時間も何もかも忘れて……ひたすらに、走るしかなかったのだ。



 そして……爆音で流れ続ける労働歌を完全に暗記し、価値観が"社畜"に染まり、自分の存在価値が分からなくなった頃……


 あれほど待ち望んだ、しかし今となっては感慨すら湧かない「神々到着の知らせ」が入る。






『喜べ! 御主等がこれから暫くの間仕える、神々が<恵のダンジョン>に到着したぞ! ここまで鍛えてやった俺に、感謝の言葉を述べてもいいんだぞ!』


 もはや、突っ込む気力もない……クソ雇用主すぎる。



「(これ、神々の御前に出るや否や無礼討ちされるだろう。走り疲れてヨレヨレだし、汗臭いったらねぇ……あっ、そうか。霊体だから汗かかないんだわ)」


 いくら"見た目の清潔さ"を誤魔化したところで、もう体力ゲージは完全に0だし、命令されても脳が拒否して詰むけどな。



「(って、あれ……? 霊体が自動で動き出したぞ!?)」


『これより、現場への一斉移動を開始する! 霊体の制御レベルを上げ、オートモードに切り替えた。お前達は、暫しのあいだ心の準備をしておくがよい』



 やった、ようやくマラソン地獄から抜け出せる……じゃねぇよ!!


 オートモードで霊体を操れるなら、最初から俺達の体力を鍛える意味ないじゃねぇか!!!!


 勤務中にへばった奴をオート操作で部屋から出せるなら、俺達の基礎体力に頼らずテメェがやれよ!!!!



「って、痛あぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!?」


『おっとスマン。神々の前で粗相があっては困るからな。万一に備えて、御主等の本体にも尿道カテーテルを入れてガードしたのだ。まぁ当然の措置だな』



 ふざけんなっ!


 そっちはオートモードにしなくても、いいんだよ!!


 何歳だと思っているんだ、小便の管理くらい自分でできるわ!!!!

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
今回も面白かった。 ただ、モブ魔王相手に手間かけ過ぎでは? 中級神時点で上級神にも効果のある労働の加護札作れたんだから、格下(魔王)用加護札使った方が楽な気がする。 格下用ならリソース大して使わんだろ…
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