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小説の世界に転生しましたが、既に終了しているようなので安心です!?  作者: Debby
第五片/いつひら

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63/70

63 三華の解散と翠玉の初恋

フェリシティは物心ついた時にはルカの隣にいた。

そして、ルカのことが大好きだった。


ルカから向けられる気持ちが恋心ではないと分かってはいたが、信頼はされていると自負していた。


ある日、ルカがフェリシティに兄王子が好きではない人と婚約したと、この世の終わりでも見てきたかのような形相で告げてきた。


確かに、第一王子が将来の国王に決まったこと。

そして、隣国の第一王女と婚約したことを、フェリシティは父に聞かされていた。



将来は臣籍降下し、()()()()()()他の誰かと結婚したいというルカに、フェリシティはつい、意地悪がしたくなった。


『王族でなくても高位貴族なら、政略結婚なんて普通のことですわ』と。


フェリシティの言葉に、ルカは衝撃を受けたようだった。


「な、ならば僕は将来“シンセキ降下”したら、下位貴族になるよ!」


『──無理ですわ。王族が臣籍降下した場合、大公家を興すと決まっていますもの』


「じ、じゃあ、僕が下位貴族に婿入りすれば問題ないってことだよね? 僕は大きくなったら()()()()と恋をして、()()()()するんだ!」


好きな人と結婚するために下位貴族になるという望みが、下位貴族になるために男爵令嬢と結婚するという望みに、すり替わったのである。




父であるウォード公爵からルカとの婚約の可能性を示唆されていたフェリシティは、その言葉に深く、深く傷ついた。


一般的に、女の子の方が早く成熟するといわれている。

それに加え、おぼろげながらも前世の記憶があったフェリシティは、当時から四歳とは思えない程しっかりしていたし、だからこそ当時から『愛する』という気持ちを、理解していた。


仲の良い『友人』だと思われていることは何となくわかってはいたが、ルカのこの発言を聞いた瞬間、フェリシティの年相応な心の一部が折れてしまった……彼女は、彼を追うのを諦めてしまったのである……──




そして、ルカとの婚約の話が本格化したとき、フェリシティはルカの希望を叶えるために、彼との婚約を拒否した。






*――*――*






「殿下、大丈夫ですか?お疲れのように見えますが──」


フェリシティとメイベル、そしてマノンがルルを追ったあとも、会場に残されたルカの前には変わらず卒業と婚約の祝辞を告げる列が出来ており、その列に並ぶ生徒にそう、声を掛けられた。


「──大丈夫じゃないのは僕じゃない。フェリシティの方じゃないかな……」


(パックス男爵令嬢の幸せを優先して、大嫌いな私の妻となる選択をしたのだから──)


そう呟いて、ルカは十年以上前のある日に想いを馳せた。






兄王子の婚約から二年、ルカも六歳になった。


「え、フェリが!?」


「あぁ。お前との婚約を嫌がってなぁ……仲が良かったから上手くいくと思っておったんだが……」


残念そうにそう言う国王()に、ルカはショックを隠せなかった。


美しく成長しただけではない。

幼い頃からそばにおり、誰よりも信頼のおける唯一の女性──いつからか、自然にルカはフェリシティに惹かれるようになっていた。


年も同じ、身分も見合う──そんな女性と幼い頃から過ごしていたのだ。

ルカはフェリシティが自身の婚約者候補であることを、正しく理解していた。


将来はフェリシティ(好きな人)と婚約し、結婚するのだと、信じて疑っていなかったのだ。


なのに……



「フェリシティが嫌がっている以上、ウォード公爵がお前との婚約に首を縦に振ることは無い。

それに、彼女がお前との婚約を拒否したことを耳にしたルメール公爵が、子息のバルトとの婚約を進めているらしい。


まぁ、仕方がないな。


婚約者にならないことが決まった以上、今後はフェリシティ嬢のことはウォード公爵令嬢と呼ぶように。以上だ」




(──なんだ。フェリシティは僕が王族だから色々話を聞いてくれていただけで、実は僕のことが()()だったのか)




ルカが王籍に残ることになっても、結婚して大公家を興すことになっても、バルトと結婚し公爵夫人となったフェリシティと関りを持たなくてはならない。


社交の度にフェリシティを視界に入れていたら、いつまでたっても忘れられない気がする。


なにより自身の伴侶となるのだと思って過ごしてきたフェリシティが、他の男の横で微笑むのを見ているのが単純につらい。


それならば、関わりを持たなくて良いように──と、ルカは再び男爵家へ婿入りすることを考えるようになった。




それはフェリシティの婚約が解消されたあとも、変わらなかった。


だってルカは『嫌われている』のだ。




ルカは、フェリシティへの想いを『男爵家に婿入りする』ことで昇華させ(忘れ)ようとしていた。






*――*――*






「え、じゃぁ……」

「もしかして、フィズって第三王子のことが今でも……」

「あらあら……」



「──だから、安心して貴女方も自分の望む未来を歩みなさい。(わたくし)は貴女方の幸せを()()()おりますわ」


フェリシティはそう言って微笑むと、再び勢いよく扇を開いた。




「本日で三年に渡る物語──『三片(みひら)恋標(こいしるべ)』はエンディングを迎えました。


卒業パーティーも解散の頃合い……これにて華の主(はなのあるじ)フェリシティ・ウォードは、三華(みはな)サロンの解散を宣言いたしますわ──」




ザァ………………────……!




「「「「……っ!」」」」





フェリシティが三華サロンの解散を宣言したその瞬間、突風が吹き、満開の桜が一斉に散った──!


視界を淡桜一色に染める花吹雪はとても美しく、物語の終わりと四人の門出に相応しい光景だった。



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